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発酵食品コラム

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発酵食品に関して調べたこと、発酵から学んだことを書いています。
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記事一覧

「癒・食・知」。三重県に生まれた美しい村「VISON」

名古屋市内から高速道路で約1時間半。伊勢神宮からもほど近い三重県多気町に、2021年にオープンした商業施設「VION」。「癒・食・知」を備え、訪れる誰もが愉しみ、いのちが喜ぶ場所を目指している。軽トラマルシェ、バーベキュー施設、温浴施設、ホテル、レストランなど、広大な土地に様々な施設が立ち並ぶ。 ※サイト移管のため、若干修正しながら過去の記事を再掲しています。 MIKURA酢を見て、味わえる2021年7月20日。グラントオープン当日、「暮らしの発酵通信~三重県版~」で取材

100年後の日本にも木桶醤油を!木桶職人復活プロジェクト|小豆島|生産者訪問#11

木桶が並ぶ蔵の風景、島中に漂う醤油の香り。香川県小豆島は醤油とオリーブオイルの島として知られている。香川県の醤油生産量は全国第5位(2018年出荷量)で、そのうちの半数が小豆島産。全国の木桶仕込みの醤油の1/4以上が小豆島産と言われるほど、伝統的な醤油づくりが盛んな島。 しかし、醤油の全生産量からみると木桶仕込みの醤油はわずか1%。木桶仕込みの醤油が存続の危機に立たされている中、木桶醤油の味を後世に残そうという取り組みが小豆島から始まっている。 ※サイト移管のため、2022

「香りカツオに味ソウダ」うま味多き土佐清水。たけまさ商店の宗田節|高知県|生産者訪問#10

高知市内から2時間半ほど西南に車を走らせ、「日本最後の清流」で名高い四万十川を超えた先にある高知県土佐清水市。四国最南端のこの地では、うどんやそばのダシに欠かせない宗田節が昔から作られている。 鰹節?宗田節?鰹節とは鰹の身をボイルして水分を減らし、燻製にしたもの。使用する「鰹」はスズキ目サバ科カツオ属に分類され、実は5種類ある。大きさの順にカツオ、スマ、ハガツオ、ヒラソウダ、マルソウダ。 ヒラソウダとマルソウダのことを総称で「ソウダガツオ」と呼び、この2種類の魚を使って作

奄美諸島伝統発酵食品「ミキ」

※サイト移管のため、過去の記事を掲載しています。 奄美諸島伝統発酵食品「ミキ」の製造・販売を行っている陽だまり堂の斉藤達也さんを講師でお迎えし、ワークショップを開催しました。 そもそも「ミキ」って?「ミキ」はお米とサツマイモを原料とした発酵食品で、奄美地方で古くから作られていました。「ミキ」の名前の由来は「神酒(みき)」と言われていて、神様に捧げるお酒だったそうです。収穫祭や豊年祭などの神事で神棚にお供えされていました。 元は「口噛み酒」(巫女さんが口の中でご飯を噛み、

三重県下のたまり文化を支える「岡本醤油部」|生産者訪問#9|三重県

三重県四日市市。「伊勢蔵」から車で20分ほどのところにある「岡本醤油部」。「岡本さんのところもいい醤油をつくるし、なかなか見学受け入れをしていないから、ぜひ紹介するわ!」と、東海醸造の本地さんを通じて訪問させていただいた。 同じ三重県下でたまり醤油をつくる伊勢蔵さん、東海醸造さんの記事はこちら ▼ 「部」という部活動のような会社名を不思議に思い、岡本和也さんにお伺いしたら、元々は米屋とお茶の製造をしていた会社で、味噌醤油の製造を始めた時に「醤油部」という名がついたのだそう

「特徴を出さないのが特長」の伊勢蔵|生産者訪問#8|三重県

三重県四日市市。かつて大阪と江戸を結んだ東海道沿いに蔵を構える「伊勢蔵」。 「蔵としては100年以上経っていて、他業種さんからすると老舗なんですが、醸造業界の中では300年、800年の蔵元さんが結構いるから、うちはまだまだ若造なんですよね(笑)」と4代目の式井一博さん。実家の味噌蔵を2019年に引き継いだ、若き発酵MEN。伊勢蔵の味噌と醤油の特長は「特徴を出しすぎないこと」だそう。 「味噌を摺った時の滑らかさによっても味わいが変わるんですよ」と式井さん。手に持っているのは

ひとつの木桶から味噌とたまりを生み出す「東海醸造」|生産者訪問#7|三重県

鈴鹿サーキットで有名な三重県鈴鹿市で300年以上続く老舗の醸造所「東海醸造」。 蔵人の本地猛さんは、味噌の発酵のメカニズムや菌の話、歴史など、マニアックな知識を広く深くお持ちの方。 「三重県は伊勢湾に沿った縦に長い地形をしていて、南伊勢、中伊勢、北伊勢と文化がわかれています。」と、三重県の食文化と伊勢神宮との関わりなど、その地域ならではのお話が盛りだくさん! もともと、味噌と醤油は同じ桶から作られていて、「もろみ」と呼ばれる状態から分離された固体が味噌、液体が醤油だった。

お茶の発酵と乙女心 #お茶の発酵考察②

お茶の酸化発酵について考えていた時に、それにかかわる酵素についても同時に考えていた。(相変わらず、私個人的な解釈なので正しいかどうかの判断はお任せしますw) 酸化発酵についての考察は ↓↓ 酸素とくっつくから「酸化発酵」まず、お茶の発酵は「茶葉と酸素がくっつくことで茶葉が変化すること」から「酸化発酵」と言われる。(お茶の世界では「酸化発酵」と言うようになってきたらしい。私は単に「紅茶も発酵食品」と習った。) ちなみに、発酵の世界の似たような言葉で「好気発酵」「好気性菌」が

酸化なのに発酵?#お茶の発酵考察①

中国茶を習う友人によると、お茶の世界では今まで「発酵」と言っていたのが「酸化発酵」という言葉に変わってきたとこのと。 発酵食品から入ると、お茶の発酵ってわからなくなる部分が多い。 友人も発酵食品を学び、中国茶の世界に入ったので、「酸化発酵」という言葉に、頭がハテナ???になったと。 そもそもお茶ってどういうもの?から始めると長くなるので、その辺は省略。私なりの考察なので、正しいとは限りません(笑)。 酸化と発酵。相反する言葉。私たちの身の回りで起こる「酸化」は ・鉄

再仕込み醤油の故郷を訪ねて

 醤油にはJAS法で定められた5分類がある。濃口、淡口、白、たまり、そして再仕込み。愛知県発祥の白醤油の出荷量の少なさ(全国で1%)もさることながら、再仕込み醤油もそれに匹敵する。出荷数が少ないということは、認知度も低いということ。  私が初めて口にした再仕込み醤油は小豆島のヤマロク醤油さんの〈鶴醤(つるびしお)〉。濃口よりも濃厚でたまりよりもさっぱりとした味に衝撃を覚えた。  そんな再仕込み醤油は山口県柳井市で誕生したと言われているので、いつか行きたいと思っていた場所。聖地

紅麹菌と麹菌はヒトとテナガザルくらい違う #紅麹サプリ事件

小林製薬の紅麹サプリが巷をにぎわせている。でも、なんだか違和感。 紅麹が悪者にされつつあることを危惧して…。この報道を見て、発酵食品に関わる者として3点押さえておきたいことがある。 ① 紅麹菌と麹菌はヒトとテナガザルくらい違うそもそも、生物の分類は、 界>門>綱>目>科>属>種 と細かく分類されていきます。 生物学的分類で言うと、 サプリメントの【紅麹菌】 モナスカス科 > モナスカス属 甘酒や味噌の【麹菌】   マユハキタケ科 > アスペルギルス属 人間(人類)で例

八丁味噌GI問題#5 敗訴確定

2024年3月8日(金)の中日新聞にて、八丁味噌のGI問題について、最高裁の結果が出ていた。 これまでも何度かGI問題について考えてきたけれど、やはり国相手は難しかった。 この後、元祖八丁味噌の2社がどのように動くのかはわからない。けれど、 「八丁味噌の由来は、岡崎城から八丁(約870m)の距離にある町の名前から付けられた。 その町で作られた味噌を八丁味噌という。」 という史実は変わらない。 食に携わる以上、小さいながらも私ができることは、 「歴史あってこその食」

すんき#4|「すんきはやっぱり赤カブ」のワケ

2022年にすんきの取材に行き、そこで買ってきたすんきを種に、何度か増やしていた私。 この優しい酸味は冬に食べたくなり、温かい時期の約半年間は冷蔵庫で放置していました。 先日、白カブがたくさん手に入ったので、茎をすんきにしたのだけれど、完成したすんきは水っぽくて全然おいしくなかったんだよね。 その時は、 仮説① 時間が経って、菌が疲れちゃった? 仮説② 「一度霜が降りて甘くなった株(の茎)を使うのよ」と取材時に聞いたので、カブの茎の甘味=乳酸菌のエサが足りない→菌が増え

すんき#3|赤かぶの色落ち考察

すんき記事パート3。今回は、知識のまとめではなく、取材時に上がった疑問に対する仮説のまとめ。 すんき名人野口廣子さんがおっしゃっていた言葉。 「一晩発酵させた後、次の日に表面の赤かぶのピンク色が濃くなっていたら上手に発酵できた証。このピンク色は表面だけが鮮やかで、中の方は色が薄いし、時間と共に色は薄くなっていくんですよ。 大学の先生が色々調べていたけれど、結局原因がわからなかったんです。」と。 そんなことを聞くとうずうず調べたくなる私。ということで、推測の域を超えない仮