アルミ鋳造・銅合金鋳造の材料について
はじめに
鋳造は、金属を溶かして鋳型に入れることで、作りたい形状を容易に形にすることができ、自動車部品・産業機械部品・宇宙部品・船舶部品・鉄道部品・医療部品・景観品等、私たちの生活になくてはならない存在となっています。使用できる金属も用途により様々で、鋳鉄、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金等があります。今回はその中でも弊社で主に取り扱っている、アルミニウム合金と銅合金について記していきます。
【 アルミ合金の種類と特性 】
アルミニウムの特性
アルミニウムは金属の中でも密度が2.7g/㎝³と低く軽量な方で、融点は660.3℃です。電気・熱伝導性に優れ、展延性に富んでいます。
アルミニウム合金の種類と特性
私たちがつくっている鋳物用アルミ二ウム合金は、<表1>に示すように 熱処理を必要とする熱処理型と、必要としない非熱処理型に分類できます。熱処理型はなぜ熱処理が必要かというと、鋳物を熱処理すると結晶構造やその金属の性質が変化し、その結果金属を強くしたり、さびにくくさせる事を可能にします。つくる鋳物の用途により、必要な機械的性質に変化させる事ができるという訳です。軽量化が進む今、熱処理により機械性質をコントロールできるアルミ合金が更に活躍しそうですね。
以下に、鋳物用合金の種類、特徴、用途を示します。
鋳物用アルミニウム合金は、Al-Cu(アルミ二ウム-銅)系合金とAl-Mg(アルミ二ウム-マグネシウム)系合金とAl-Si-Mg(アルミ二ウム-ケイ素)系合金に大別されますが、今回は弊社が得意とするAl-Si-Mg系合金とAl-Mg系合金についてです。
(1)Al-Si系合金
Al-Si系合金には、Al-Si系合金( JIS記号 AC3A )と Al-Si-Mg系合金 ( JIS記号 AC4C AC4CH )があります。流動性が良く、耐食性、溶接性に優れるが、機械的特質、被削性に劣る。主な用途は ケース類・カバー類、ハウジング、マニホールド、ブレーキドラム、ミッションケース、クラッチボックスなど薄肉や複雑形状の部品等向き。
(2)Al-Mg系合金
Al-Mg系合金には、Al-Mg系合金( JIS記号 AC7A )があります。耐食性、機械的性質、切削性に優れるが鋳造性は劣る。主な用途は、架線金具、船舶用部品、事務機器、航空機用部品等向き。
【 銅合金の種類と特性 】
銅の特性
銅は密度が8.94g/㎝³と高く、金と銀の次に重い金属です。鉄の方が重いイメージのある方もいらっしゃるかもしれませんが、実は銅の方が重いです。金属の中では銀に続いて2番目に電気・熱伝導性に優れています。また銅は金と並んで色のある金属(有色金属)で見た目が美しいです。軟らかく展延性に優れ、加工しやすい材料です。そして表面に保護被膜を作るために耐食性に優れます。
銅合金鋳物の種類と特性
銅合金鋳物の鋳造法としては、銅合金の種類にもよりますが砂型鋳造、重力金型鋳造、ダイカストなどがありますが、砂型鋳造がもっとも多く用いられています。表2に銅合金鋳物の種類、特徴、用途を示します。
①黄銅系鋳物 (Cu-Zn系)黄銅鋳物は、銅 Cuと亜鉛 Znの合金で真鍮(しんちゅう)とも呼ばれています。鋳造性に優れており、耐食性や耐摩耗性なのど性能にも優れています。亜鉛の含有量によってCAC201、CAC202、CAC203などがあり、電機部品や計器部品、建築金具、日用・雑貨などに使用されます。
②青銅系鋳物 (Cu-Sn-Zn系・Cu-Sn-Zn-Pb系)青銅鋳物は、銅 Cuとスズ Sn、亜鉛 Zn、鉛 Pbの合金です。鋳造性、耐圧性、耐摩耗性、耐食性に優れ、鋳肌もきれいです。ただし、熱伝導・電気伝導性、機械的性質は、黄銅よりも劣ります。軸受、バルブ、ポンプ胴体などの機械部品のほか、景観鋳物、美術鋳物などにも使用されます。
③アルミニウム青銅鋳物 (Cu-Al-Fe-Ni-Mg系)アルミ二ウム青銅とは、青銅にアルミニウム Alを添加した合金です。光沢のある黄金の色をしていて、引張り強さ、硬さが普通の青銅より大きく、軽量で腐食に強い。真鍮に外見は似ているものの、はんだ付けができない。化学工業用部品、船舶部品、機械部品などの用途で使用される。
おわりに
いかがでしたでしょうか。金属の特徴を活かした鋳物づくりは、私たちが産まれる前から工夫が繰り返されています。用途や環境によって金属を選択するため、それぞれの特性を知っておくことは重要です。自動車部品をはじめ軽量化が進む現代、鉄からアルミへの置き換えが進んでいます。軽いだけでなく錆びにくく加工性が高いことも利点と言えます。また、銅の熱を伝える力は、逆に冷やすことにも利用され、電子部品や自動車部品等の放熱対策にも役に立っています。