トキというりんごのポテンシャル
お疲れ様です。連日の夏日からようやく解放され、農作業もしやすい気候となりつつあります。最高気温は25度。なんて清々しい気持ちで作業ができるんだ。トンボも飛び始め、稲刈りも始まり、秋が始まったと実感しております。
トキという品種
トキは青森県五所川原市の土岐伝四郎氏が育成した品種で、2004年(平成16年)11月に品種名「トキ」(王林×紅月)として品種登録されたが、S遺伝子型等の矛盾から、組み合わせを「王林」×「ふじ」に訂正した。
掛け合わされた親がりんご界のサラブレット同士なので味は言わずもがな。
収穫時期が9月下旬から10月上旬というのも生産者にとっては嬉しい。
当農園でも人気No.2の品種でありリピーターも多い品種。
海外需要の高さ
最近の青森りんごは海外輸出も好調のようです。昨年産は過去最高の4万トンを超えたそうです。主な輸出先は台湾や香港。数年前、台湾へ行った際にはデパートに並んだ高価な「青森りんご」が販売されていた。どうやら海外では差別化され高級フルーツという位置付けらしい。
収穫時期はいつなのか?
トキというりんご、通常であれば9月下旬から10月上旬の収穫時期となるのですが、海外需要の高さから近年9月中旬には産地市場に出荷されている。産地市場の市況というのは生産者の間であっという間に広がるので、高値で競売されているという情報が流れればあっという間に産地市場にはトキが入庫される。高値で取引されるということは生産者にとって喜ばしいことなのだが、この時期入庫されるトキは完熟りんごではない。海外へは約二週間の輸送期間を有し現地に運ばれるため、完熟したりんごだと現地に到着した頃には痛んでしまう。なので完熟していないトキが高値で取引されているという矛盾が発生してしまう。これから収穫されるトキは味は乗って美味しいはずなのに産地市場で高値は期待できない。
実際の栽培現場でも、トキを栽培している生産者は多く輸出向けに早めに収穫する生産者、完熟してから収穫する生産者の二極化が進んでいるように思う。美味しいトキを作ったとしても相場が下がった市場に出荷するよりも高値を期待できるうちに出荷したいという生産者側の気持ちも重々わかる。我々生産者も物価高騰の煽りを受け栽培経費も高騰しているのだから少しでも作ったりんごを高く販売しなければならない。
商品名を変えてみてはどうか?
私の気持ちとしては美味しさが評価の基準となるべきだと思っているのだが、現状はそうではない。市場の都合や仲買人の都合、、、りんご産業は昔から変わらず既得権益の最たるものだと感じてしまう。一部の生産者や生産者団体はSNSなどを利用し適期収穫を訴えているのだがその効果はというと、、、。他県のようにトキの収穫開始日(基準日)を設定してはという意見もあるが、完熟したトキが基準日から毎日のように数万箱と市場に入庫されたことを想像すると需要と供給のバランスが崩れ価格崩壊が起きることも容易に想像できる。
二極化が進んでしまった生産現場はこの先もきっと変えられないだろう。
私としてはどちらもあっていいと思っている。どちらも生き残る道はないのだろうかと毎年この時期になると考えてしまう。例えば、9月20日頃までに収穫されたトキを販売先店舗では「※フレッシュゴールド(仮)」として販売。
9月20日以降に収穫されたトキを「トキ」として販売してみてはどうか?などと考えている。
※記憶が確かならば「トキ」と品種登録される前は「フレッシュゴールド」だったような。
SATOFARMとしてのトキの位置
お客様と直接取引するにあたって、やはり「美味しさ」というのは当たり前であってお客様にはそれ以上に何かを感じてほしいと思っている。りんご=赤という固定概念、赤いりんご=美味しいという固定概念を一口で覆すことのできる数少ない黄色系りんごだと思っている。私自身も初めて実った完熟したトキを食べたときの感動は今でも鮮明に覚えている。一度食べたらまたリピート注文も多いというのがこのトキというりんごのポテンシャルの高さだとも思っている。剪定が難しく収穫量も豊産性とは言い難く近年生産を辞めていく人も多いが、私は現状の生産量を維持し品質だけは常に向上するよう技術の研鑽して行きたいと思います。
今年は平年よりも数字上の熟度は進んでいるようで、見た目も黄色くなるのが早かった。そして園地によっては夏場の酷暑の影響なのか?落果被害も見られ9月25日の今日現在、周りではトキの収穫を終えた人がほとんど。数字上の熟度は進んではいるのは確かで毎日のように試食して「美味しい」という味にはなってきてるが、トキのポテンシャルはこんなもんじゃないという事も知っている。「美味しい」を超えたトキを自分のお客さんには食べてもらいたい。
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