インボイス制度が引き起こす、もっと深い問題
消費税やインボイス制度の仕組みや問題について大方理解したところで、
本日、STOPインボイスの活動をされている人が催すお話し会へ行ってきた。
活動されている方々の生の話を聞くと、問題の見え方がまた変わる。
やっぱり、色々な立ち位置の人の話をじかに聞くのが大切だね。
消費税やインボイス制度のしくみ、インボイス制度が導入されるにあたって直接何が問題となるのか、
については以前書いた内容で合ってるのだけど、
「インボイス制度導入によって社会がどうなっていくのか」
「何を危惧して、反対派の人達は声を上げているのか」
という観点での話を今日は聞けた。
話を聞いて、
この問題に自分はどう向かい合っていけばいいのか、
答えの出ないまま悩んでいるところだけど、
ひとまず、現時点で自分なりに整理できるところまで書くことにする。
ピラミッドが下から瓦解していく
この問題の本質は、
「日本社会を1つのピラミッド組織で捉えた時に、ピラミッドが下層から瓦解していく」
ということ。
ここでいうピラミッドの階層というのは、貧困層・富裕層ということではなく、
実務を担っている人達→→→管理者・決裁者。
最下層が、農業・建設・運輸などインフラ提供者や、声優・役者・作家などの芸術価値の提供者など。
その1つ上が、それらの業界とやり取りしている職種。
その1つ上が…と続いていって、最上位が首相や財務省。
インボイス制度を推進しているのは、最上位層。
そして、ヤバさを実感して反対の声を上げているのが、最下層。
その間の層が、自分たちの足元が崩れかけていることに気づかず、現在無関心。
ただ、中間層の中で下位層にいる中小企業の経理あたりの人たちが、ようやくヤバさに気づいて反対の票を投じ始めている。
たとえるなら、ボンボンで実務経験ゼロの社長さんが、
「そんな施策したら、社員つぶれますよ!」と社員が悲鳴をあげる中、
「えー、それを何とかするのが君たちの仕事でしょ。できない君たちが悪いんだよ」
って返して、無理やり施策実行して社員が潰れていき、
社長が「あれ?やばいのかな??」と気づく頃には、
もう会社は倒産するしかない状態。
インボイス問題は、
「免税事業者に負担がいって大変らしい」
というイメージがあるけれど、実際にはそれだけでなく、
経理作業がすさまじく大変になり、
新たに税理士さんの手を借りたい事業者が生まれたとしても、
需要に対して供給が追い付かないだろう、
という話や、
免税事業者と仕入れ事業者の信頼関係がとても大切な業種などでは、
「仕入れ税額控除をどちらがもつか」の押し付け合いによって、
これまでの信頼関係にひびが入りかねない、
という話なども聞けた。
インボイス問題は、
単純なお金の問題だけではなくて、
現状の業務が回らなくなる危険性や、
人と人の関係性に亀裂をいれて、社会に断絶を生む問題もはらんでいるということ。
危機感の伝わらない原因
「日本が潰れかねない問題なのに、どうしたら多くの無関心層に関心を持ってもらえるか」
そんな話も、少し上がった。
もっとも人口が多いけど、無関心なサラリーマン層。
実は私が今日の会に参加しようと思ったきっかけは、
STOPインボイスの活動をされている方たちが、
なぜ「弱者いじめの制度です」ばかりアピールしているのか不思議に思い、その理由を知りたかったから。
このところ、消費税やインボイス制度の問題を整理しているうちに、
「これまで各事業者が節税ありきで事業がまわしているところを、政府がだまし討ち的にその節税の口を塞ごうとしているために増税に繋がる」
ということが、この問題の起点だと気づいた時に、
「なんで彼らはこれをアピールしないんだろう?過去に増税反対の署名が1000万集まったんだから、これをアピールすれば一気にサラリーマン層を引き込めるだろうに」
と疑問に思ったのだ。
そして今日行ってみて、
彼らが訴えているのは「社会が下から崩れていきます」というアラートだったんだな、
ということが理解できた。
「政府のだまし討ちで増税になるんだよ」 ということを伝えれば、現状無関心のサラリーマン層を引き込める気はする。
でも、本当にそういうことでいいのかな?
ということを、ちょっと今、ぐるぐる考えている。
昔、在籍していた会社で全社活動をしていた時。
「なんか最初、『私のことを認めて』って君が言ってるように聞こえたんだよね。色々話すうちに違うことに気づいたんだけど」
と活動を通して知り合った、別部署の幹部社員に言われたことがある。
私自身は「このままでは、会社が危ない」というアラートを発していたつもりの言葉が、そう聞こえていたらしいのだ。
なんで、そんな風に聞こえたのかわからないのだけど、
今回、インボイス反対派の人達の訴えている内容が私に理解できなかったことと、なんだか通じる。
その後、その人を含む何人かの人達から、
「○○層は、こういう点が彼らの仕事や評価に関わるから、そこを突いていけ」
というような入れ知恵を色々授けてもらって、
相手のウィークポイントを見定めてアプローチすることで、色々とうまく行きだした。
それ自体はまぁ楽しくもあったのだけど、同時に心の中で思ってもいた。
「私が訴えている問題は彼ら自身の問題でもあるのに、なぜ私が彼ら向けの言葉に変換しなければいけないのだろう? 彼らは、そんな風に自分たちに伝わる言葉で誰かが伝えてくれるのを待っているだけでいいんだろうか?」
と。
ただ、現在のSTOPインボイスのサイトやSNSの投稿は、
少なくとも今日の話を聞くまで私自身が、「下から瓦解していく」というアラートとして読み取れなかったのは事実なので、
とりあえず、そんな私と近しい感覚だろう知人たちに少しでも伝わるように、今これを書くことで翻訳を試みている。
ひとまずの問題まとめ
そもそも消費税のしくみ、インボイス制度とそれによって引き起こされる直接的な問題について、多くの国民が理解できていない問題
インボイス制度導入によって引き起こされる社会全体への影響が共有されていない問題。自分自身とインボイス制度導入によって引き起こされる問題の関係性が見えていない問題。
たぶん、問題を理解するためには、1→2の順序を踏む必要があると思うのだけど、現時点で、ほとんどの国民が1未達。その状態で、危機感を持った人達が2を伝えようとしているから、「なんか物価上昇するの?でも、よくわからない…」と首を傾げている状況。
という状況ではあるけれども、インボイス制度のスケジュールは以下。
インボイス制度開始:10月1日
首相がインボイス中止or延期を決断できる最終タイミング:9月25日
インボイス制度賛成派の生の声を聞いていないので、
インボイス制度導入による良い点もあるかもしれないけれど、
少なくとも、現時点でインボイス制度を導入するために必要な議論や問題の共有を国民が行えていないことは間違いないので、止まるなら止まってほしい。
キャンペーン · 《#STOPインボイス》多様な働き方とカルチャーを衰退させるインボイス制度に抗議します · Change.org
ただ、止まらなかった場合のことも具体的に考えていかないといけない時期である。
とはいえ、簡単に答えは出ないので、今回はここで筆をおきます。
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