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台所の歌


終末のごと、悲惨なニュースは飛び交い、

光の嬰児は闇の中に生まれ、心を病んで死んだ。

死をも羨む生がやがて来る。(来た。)

死をも羨む時代が来る、すぐにでも。(来てしまった。)

病んだ時代の、病んだ心で、

我等は汚辱をネットを媒介として撒き散らす。

我等は永遠に汚れを繰り返すのか。

深夜の台所で鳴る音楽は美しい。

しかし世界は悲嘆に暮れている。

嗟嘆は闇の如く奥行きは果てしない。

とことわに汚れを繰り返すのか。

悲しみを思う。この世界の果てしない悲しみを思おう。

されど、刹那、思い巡らす。

我等は永遠に、永遠に清め生きる。

とことわに清め生きるのだと。

喜びを思う。この濁世での限りない喜びを思おう。

それらは、黄泉比良坂よもつひらさかの二柱の神の互いのうけい

汚れも清めも、我等の自由意志の発露なのである。

とことわに汚れ、とことわに清める。

汚れの果てに世界が終わるなら、

清めの果てに終わる世界もあろう。

汚辱の世界に生まれた我等、容易く汚辱に塗れてしまった。

羞恥であり、羞恥であり、羞恥である。

悟りは得難く、教えは会い難い。

光よ、一片耿々いっぺんこうこうの志に宿る神話のごとき光よ。

さながら偉人の趣で我等はゆく。

さながら神のごときかんばせで。

汚れ、汚れ、汚れた世界を、

清め、清め、清めゆかん。

とことわの汚れ、とことわに清め。

汚辱も、清浄も、我等なのである。

限りない闇、果てしない闇の中、生まれた一つの光。

痛むくらいに美しい光を、果てない闇へと掲げる。

光と闇の舞台に、限りない美への憧憬を爆ぜ、

深夜の台所、洗い物が終わった時、思索も終わる。

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