ピアノのフレーム精度の重要性と調律の安定性


久しぶりです。またまたピアノのフレームの話です。

ピアノの調律の安定性を決める要素の一つとして、フレームの精度が挙げられます。
それは何故なのか、そしてピアノの調律の安定性を決める要素も簡単に話していきたいと思います。

フレームボルトを締めた時点で打ちまわし高さがバラつく

今から説明するピアノの状態は、弦がまだ張られておらず、フレームも付いてい無い状態を指します。その状態のものにフレームを取り付ける際に起こる現象について話します。

そう、フレームが歪んでいると、せっかく響板設計がしっかりしてても歪んだフレームを取り付ける事で、響板がくっ付いてる「打ちまわし」がフレームの歪みに沿って締め付けられます。

打ちまわしは、響板のムクリを決める要素です。従って響板のムクリも狂うということなのです。

フレームボルトを締めると同時に、アップライトピアノで言う「土台」や、グランドピアノなら「インナーリム」、また両者共に「支柱」もフレームの歪みに沿って引っ張られます。そう、バック全体が歪むのです。
上記の状態は、まだ弦が張られていません。この状態で弦を張ってみましょう。バック全体がピアノの中心部分に向かって力が掛かります。

ピアノのバックの歪み要素

よってピアノのバックの歪みを決める要素は2つで、

・フレームの歪みに沿ってバックが引っ張られた
・弦の張力でフレームを含むバックが引っ張られた

主にこの2つになると思います。

よく皆さん「温湿度の関係でバックが狂う」と言いますが、例えば硬い金属の板にネジで木の板を固定したとしましょう。仮にその木の含水率が大きく変動したとしても、木は鉄の板に固定されているので、殆ど狂わないはずです。
(全く狂わないと言いたいわけでは無いです)

打ちまわしや支柱はフレームボルトで固定されますが、響板に関しては弦の下圧力のみで固定されます。従って温湿度で狂いやすい部品は「響板」ということになります。

組み上げる上で考慮しなければならない事

という事で、ピアノのフレームの歪みがピアノの歪みを起こすという事をお伝えしました。
メーカーによってはピアノのフレームを型から出した後、NC加工で歪みを補正している所もあります。むしろNCで加工精度を上げないとまずいかもしれません。

最後に特に気をつけなければならないと思ったことをまとめました。

・フレームの歪みを無くしてより精度を出す

・張弦後の下圧力に対してバックがどう捻れたり反ったりするか予測してフレーム、フレームボルトの位置、支柱を設計する

・ピアノを作る前段階でのシーズニング環境を整える

・積層材の接着精度を上げる

・フレームを除くバックの組み上げ精度を上げて、ジャバラ状態にならないようにする

以上の5つを守るとピアノの調律の安定性が上がるのではないかと思います。
因みに5つ目の「ジャバラ状態」というのは、
支柱同士や、支柱とピン板と打ちまわしの組みが甘く(嵌合が合ってない、隙間が空いてる)、張弦後にその隙間に向かって力が働いてしまい、ジャバラのようにグネっと動いてしまう、ということです。

しかし事実として、支柱の組みの精度を上げてもフレームが歪んでいたり、弦の下圧力が大きいと接着部分が剥がれる、という事もあります。

フレーム設計と製造における精度の重要性を感じました。

また余談ですが、よく中古ピアノの弦を外す際に「フレームに変な力が掛かって割れるかもしれないから順番に少しずつ緩めよう」
という考えがありますが、何をもってその答えに行き着いたのか?
ピアノの張力、応力分布の大きさはピアノによって違えど傾向は一緒なので、なるべく明確な答えを導き出せるといいですね。

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