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無職の聖地

ある島では
出港前にロビーで面接をし
到着したその日から働くという
見事な無鉄砲ぶりを発揮し

なんとかそれからの一年半を過ごすことになる

社会に出たら働き続けなければいけないという声が強かった地元での暮らしとは違い

ここでは働いていない若者やリタイヤして長期滞在する人も多く

働いていたとしても正社員ではなく
フリーターや掛け持ちで働く人が普通に暮らしていた

特に働いていない若者たちは
無職の聖地として
同じような境遇にいる仲間ができる

無職としてほとんどの人が肩身の狭い思いを経験していて
切ない気持ちを言わずとも分かり合えた

世界中を旅してきた旅人もたくさんいて
同じ世界観で話ができた

一言でいうと
変な人が集まる場所

社会に出たら普通に働いて
というレールから寄り道している人

ある島では
そこを訪れる長期で滞在している人たちは
みな仲間のよう

一度会っただけでもどこかで
こころの支えになるような人ばかり

大袈裟でなく

ある島

のキーワードさえあれば世界中どこへ行っても
分かり合えた


さらに毎日スキップして歩いていたわたしは
少しくらい仕事が辛くても無敵

疲れたら海に足を入れて癒され
暇があればきれいな夕陽を見に行く
会いたい友人には狭い街中を歩いていればどこかで会える

こんなに毎日が
人との出会いに溢れて
楽しいことはなかった

大人になるっていいことだ


と思っていたのは最初の数ヶ月

だんだんと仕事に追われ
新しい出会いを求めることもなく
自然のありがたさを感じる心の余裕がなくなってしまったのが長くなり

最近笑えてないかも


どうやって笑うんだっけ


そんな日々が続いた



そして

島ぐらしにも慣れ
仕事ばかりの時期に


目を合わせてはいけないあの人と出会ってしまった

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