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オムライスの話とカレーの話

カフェに来てオムライスを頼んだ。このオムライスがおいしくなくて落ち込んだ。「ご飯をおいしく感じるかどうか」は、私にとって健康状態を判断するうえでのひとつのバロメーターだ。もともとかなり食欲旺盛な人なので、ご飯をおいしく感じないときはよっぽど心身の調子がよくないということなのだ。最近夏バテ気味だし、日中はなんとなくだるい感じがするし、心もふさぎ込みがちだったからかな。オムライスを通じて自分の不調を自覚させられてしまった。私、知らず知らずのうちに元気をなくしてたんだ。
でも、付け合わせのサラダはおいしかった。ドレッシングがさっぱりしていて好みの味だ。ポテトフライもすごくおいしい。でも、オムライスだけがおいしくない。あれ? なんかおかしい。
これって、私の味覚や健康状態の問題じゃなくて、本当にオムライスがおいしくないのでは?
私は美食家というわけではなく、オムライスオタクというほどでもなく、ごく普通のオムライス好きだ。ふわふわとろとろのやつが一番好きだけど、薄くて固い卵の上にケチャップがかかっているような昔ながらのオムライスも好きだし、ファミレスで出てくるデミグラスソースのやつも好きだし、自分で作るオムライスもなかなかおいしいと思う。人生で「おいしくないオムライス」に出会ったことがない、と言い切ってもいい。
だから、目の前にある「オムライス」と自分の舌が感じた「おいしくない」という感覚が結びつかなくて混乱した。オムライスなのにおいしくないなんておかしい。オムライスはどんなオムライスもおいしいはずだ。でも、もしかするとこれは、例外なのかもしれない。
卵はふわふわに見えるけど、食べるともそもそしている。チキンライスももそもそしていて味がない。チーズはべちゃっとしているのに固い。デミグラスソースはふつう。総合して、おいしくない。出会ってしまった。おいしくないオムライスに。自分の健康状態がどうこうより、そのことがショックで今これを打っている。
オムライスはいついかなるときもおいしいから、初めて行くお店でメニューに迷ったらとりあえずオムライスを頼んでおけば間違いない、という信念が崩れ去ってしまった。世の中にはおいしくないオムライスも存在する。認めたくないけど、確かにそうなのだ。私はこれから何を信じて注文すればいい? 外食先でオムライスを頼むとき、「これはもしかしたら『おいしくないオムライス』かもしれない」とほんのり湧いてくる不安とどうやって付き合えばいい?
この不安はおいしいオムライスを食べて安心することでしか解消されないのだと思う。幸いなことに私はおいしいオムライス屋さんを知っているから、そこに行けば確実に「おいしいオムライス」が食べられる。世の中のオムライスがすべておいしくなくなったわけではないのだ。「オムライスの大多数はおいしい」、この信念をこれからも持ち続けるために、私はオムライスで安心したい。
でも、今はちょっと前向きな気持ちでオムライスを食べられそうにないので、これからしばらくオムライス断ちをしようと思います。

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今日はひとりぶんのカレーを作った。本当にひとりぶんを作ろうと思ったんだけど、作っているうちになんだかんだで3人前くらいになってしまった。カレーは一度にたくさん作ったほうがおいしいらしいからまあいいか。明日も食べよう。
今回はかなりおいしくできたので、作り方を書きます。まずはApple Musicを開いてYOASOBIを爆音で流す。近所迷惑にならないくらいのギリギリの音量で。なぜYOASOBIなのかというと、昼間に『推しの子』を見ていたからだ。『推しの子』、めっちゃ面白い。いま6話くらい。
それから玉ねぎを刻む。大きめのやつをまるまる1個。玉ねぎは炒めているうちに減るし、煮ているうちに消えてなくなるから多すぎるくらいがちょうどいい。あとは適当にそのへんにあったピーマンとじゃがいもと鶏肉もひと口大に切る。『群青』とかをふんふん口ずさみながら玉ねぎをバターでひたすら炒める。他のいろいろも炒める。我が家のクリーム色のカレー鍋はとても焦げ付きやすいので、炒める段階ではフライパンを使う。
カレー鍋に移したら水を少しと、カットトマトをどばどば投入。本当は缶のホールトマトを使おうと思ったんだけど、今は紙パックのものが売っているんですね。捨てやすいし手軽ですごくいい。煮込んでからルーを入れてまた煮込み、最後に牛乳を入れる。これでぐっとまろやかになる。辛いカレーが好きな人には向かないかもしれないけど、私はまろやかさのあるカレーが好きなのだ。
落ち込んだときは煮込み料理を作る、という小説を昔読んだ記憶がある。料理をぐつぐつ煮込んでいると心が落ち着くのはなぜだろう。鍋の中はふつふつと沸き立っているけど、私の心はしんとした中を炭酸水みたいな細かい泡がするする浮かぶくらいのもので、この台所には不思議なギャップがある。
トマトの酸味でさっぱりしつつ、さっぱりすぎない、コクのあるカレーができた。最近は夏バテ気味で食欲があまりなかったけど、ちょっとおかわりしてしまった。爆音YOASOBIトマトカレー、おすすめです。

おいしいものを食べます