人生の終わりについて考えるゲームを通して、大事にしたい価値観に気づけた話
先日、医学部の実習で訪問診療のクリニックを訪れました。
そもそも訪問診療とは、さまざまな事情で通院が困難な人達に対し、医療者が家を訪れて診療を提供するしくみです。
積極的な治療は望まず、家で受けられる限りの治療を受けて穏やかに過ごしたい、そうした願いを叶えるのが訪問診療の目的のひとつです。
訪問診療に同行したあと、実習の一環で「もしバナゲーム」というカードゲームを行ったことがとても私の中で印象的だったので、今回はこのテーマについて書いてみようと思います。
「もしバナゲーム」は、「もし自分がもうすぐ亡くなってしまうとしたら、何を大事にしたいか知ること」をテーマにしたゲームです。
35枚のカードには、重病のときや死の間際に「大事なこと」として人がよく口にする言葉が書いてあります。
たとえば「機器につながれていないこと」「痛みがないこと」「自分の話を聞いてくれる相手がいること」など。
「どんなケアをしてもらいたいか」「だれといたいのか」「自分がどうありたいか」といったテーマのカードの中から、死ぬ前に自分が大事にしたいと思うことが書かれているカードを3枚選びます。
複数人でゲームをする場合には、なぜそのカードを選んだのかについて、お互いの考えを話します。
このゲームを通じて自分の考えを身近な人、大切な人に共有しておくことで、もしものときに周囲の人が本人の意志を判断する一助になれば、という目的で開発されたそうです。
わたしが最終的に選んだ、死ぬ前に大事にしたいことのカードは
・良い人生だったと思える
・ユーモアを持ち続ける
・自分の望む治療やケアをしてもらえる
でした。
考えてみると、この3つは死ぬ前のみでなく、普段からも意識したいなと思えることばかりでした。
わたしは自分の過ごし方や決断を自分で決められることにとても喜びを感じるし、日々のちょっとしたことを面白く思える人でいたいし、自分の人生に納得感を持って進みたい。
この選んだカードから、
「自分の人生に関することを自分で決断し、その結果を自分の中で前向きに受け止められること」
が、わたしにとっての大事な価値観なのではないかと感じています。
学生、研修医の先生、講義をしてくれた先生の4人でこのゲームをしていて、他の人達の選んだカードについても、なぜその価値観を大事にしたいのか、理由を聞くことができました。
人とのつながりを大事にしたい人、大切な人との別れのタイミングをしっかり準備しておきたい人。
当たり前ですが、人によっても、人生のフェーズによっても、大事にしたいことはきっと変わっていくのだろうと、他の人の考えを聞いてより実感しました。
もしバナゲームは、自分の心の声を知り、中々普段考えることのない「死」について、暗くなりすぎずに身近に考えさせてくれるような、そんなゲームでした。
人生のゴールに立つことを想像してみると、自分がこれからどう生きていきたいかが見えてきます。
また5年後・10年後、自分の大事にしたい価値観は変わっているのか、いないのか。
定期的に振り返り、自分の人生をどう生きるか考えていきたいと思えた経験でした。
ちなみに「もしバナゲーム」はカードゲームだけでなく、無料でできるオンライン版もあるみたいです。興味があったらのぞいてみてください。
今回はそんなところです。
読んでくださってありがとうございました。
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