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なんとなくEQかけてませんか?〜確信を持ってEQをかけるための6つのポイント〜【ミックス】


はじめに

大変お待たせいたしました。。。
今回取り扱うEQそして次回以降扱うコンプについては音を扱い始めた方にとって難しく感じる方が多いのではないでしょうか。また、慣れてきた方でも色々と処理方法に考え方があり、一概に「この方法が正しい!」と言えるものではありません。
あくまでも考え方の例として捉えてください。

EQとはなんなのか

EQの始まり

Equalization、縮めてEQ。和訳すると平衡化ということになるわけですが、周波数別にピンポイントでボリュームを上げ下げできるこのEQ、元々は1920年代に映画音響の補正のために開発された回路が始まりという説や、他にも当時、電話が長距離に渡って音声信号を送信する際、落ちてしまう高域を送信側で上げて音を補正するために開発されたという説もあります。
その後、1930〜1940年代のラジオ全盛期を経てレコード制作や録音の際に機材による音のばらつき等を現場で聴いている生の音に近くなるよう「補正」するためにEQが使われるようになったようです。

ミックスにおけるEQの役割

ミックスにおいてEQで行うことは大きく分けて2つ、「不要な音の掃除」「音作り」です。
まずは「不要な音の掃除」これは各パートの音源を聴き、余計な金属の響きやピッキングのカチカチとした音が大きすぎるとき、ボーカルが少しこもって聞こえるとき等、必要以上に大きく耳障りになる帯域を下げ、聞きやすくすることを目的とします。料理で言えばジャガイモの芽を取り、必要に応じて皮を剥くようなものです。
次に「音作り」、これは「キックの素材にもっと厚みが欲しい」、「スネアの胴鳴りが欲しい」「エレキギターの音がボーカルとぶつかる」等、楽曲のイメージに合わせて理想の音にブラッシュアップする目的で使用します。

自分が聴こえていない音は調整できない

EQで音をコントロールするにしても聴こえていない音、意識していない音について調節することはできません。人間の可聴域は20〜20kHzです。聴こえ方に個人差はあるにせよこの範囲で音を扱うことになります。
「EQの処理前後で違いがいまいちわからない…やっぱり耳が悪いのかな」と自信をなくすことがあるかもしれませんが、各周波数帯の音の変化に対して耳のフォーカスを合わせずに漫然と聴くとわかりづらいことも多いので、腐らずに以下の項目を参考にしつつ、ご自身のDAWで音を触り、スペアナ等を使って視覚情報も併せて確認しながら慣れていけばきっとEQ処理に根拠と自信を持てる日が来ますので地道に頑張りましょう!

音を帯域別に捉える

エリア分割

まずは可聴域を6つの帯域に分割し、各帯域の印象とともに整理します。
以下の図をご覧ください。

可聴域のエリア分けと音のイメージ

各帯域の音量変化で変化する印象

各帯域をEQで操作するときにどの帯域を操作するとどういった印象の変化が起こるか、以下の図にまとめました。

各エリアの大小で受ける印象

まずはこれらの音の変化の印象を実際にDAWを触りながら実感してください。音の変化とご自身の感覚を結びつけることで調節したい帯域に当たりをつけるのが楽になります。

パート別調整ポイント

これから示す帯域のポイントはあくまで目安です。音源ごとに調整するポイントは様々ですので、以下を参考にしつつ音源に応じてご自身でもポイントを見つけてみてください。
代表的なトラックしか挙げていないので、より細かく知りたい方は参考書籍等も有効活用してください。

キック

キックの帯域別ポイント

スネア

スネアの帯域別ポイント

ハイハット

ハイハットの帯域別ポイント

シンバル

シンバルの帯域別ポイント

タム

タムの帯域別ポイント

エレキベース

エレキベースの帯域別ポイント

エレキギター

エレキギターの帯域別ポイント

アコギ

アコギの帯域別ポイント

ピアノ

ピアノの帯域別ポイント

ボーカル

男性と女性ではポイントが変わってきますが、大体1kHz以下では男性的な太さが、1k〜4kHzには女性のヌケの良い帯域が集中しているようです。

ボーカルの帯域別ポイント

2Mix

マスタリング時のや、すでにオケがある「歌ってみた」等のボーカルミックスの際に参考になります。

2Mixの帯域別ポイント

そのロー/ハイパスはほんとに必要か?

ネットの情報や、書籍でEQの扱いを学ぶ際に「キックのハイは要らないのでローパスかけましょう」や「ハイハットはローがいらないのでバッサリカットしましょう」など、大まかにまず切るということを勧めるものを見ることが多いと思います。確かに効果的な場合も多かったり、なるべく初心者に苦手意識を持たせないためということもあるのかもしれませんが、何も考えず「音が”スッキリ”するから」とカットする前に「空気感とか風合いは本当に損われないだろうか…?」と一度立ち止まって考えることはとても重要です。
セオリーにただ従うだけでは良い結果が得られるとは限らないというお話でした。

細かく弄れば良い音になるのか

最近は沢山ポイントの打てるパラEQのプラグインもあり、音を極端に持ち上げて左右にサーチしなんとなく不要っぽい音を切ってみる。「良くなったかどうかはいまいちわからないけど沢山触ったし良い音になったに違いない」
とEQをやっているようで全く効果的な使い方をできていないばかりか逆に悪くなっている…みたいなことに心当たりがある方も多いのではないでしょうか。かくいう私も初心者の頃はそうでした。いまでもEQは課題の一つでもあります。
最初に書きましたが「自分が聴こえていない音は調整できない」のです。
EQで音を変化させるということは少なからず音質は劣化します。多少の音質を犠牲にしても整えるべき音があるから処理をするのです。「やってる感」のために不用意にポイントを打ち細かく弄ることは得策ではありません。
まずはQ幅を広めに1〜3ポイント打ち、変化が感じられる範囲で最低限の補正に留めるというところから目的の音に近づける練習から行えば、苦手意識を持たずEQに向き合えるのではないかと私は考えています。

以上、さっちーでした!!

参考

Webサイト

書籍

ミックス&マスタリング 音圧アップの鍵は「EQとコンプ」 竹内一弘 著

スグに使えるEQレシピ DAWユーザー必携の楽器別セッティング集
角智行 著


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