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キングスジレンマ 感想の感想

またの名を、『Boardgame memo』はなにを見落としたのか。

ボードゲームのルールブック冒頭にある世界観やテーマを説明する「イントロダクション」。
これを楽しんで読めるかどうかが、今作が向いている向いていないが分かれる気がする。僕は、基本的に「イントロダクション」を読まない。
テーマが大事そうなゲームの時は読むけど、それでも流し読みだ。このゲームは、「イントロダクション」をひたすら読むゲームとも言える。
プレイ部分の投票は、おまけというかなんというか・・・
「イントロダクション」で得た情報と、各プレイヤーに与えられたバックストーリーからの情報というなんとなくの情報を元に想像して投票しなければならない。その領域に到達するだけの資質も根気も無い我々は、無機質にステータス上げ下げに没頭するだけになった・・・

ユーロシステムばかりやって、高校現代文の読解みたいな具合でシステムを嗜むことに偏重していると、ここまでおじいちゃんになってしまうのかと不安になってしまいました。あるいは、クローズドサークルの御隠居サークル化が相当進んでしまってないですか?メモさんのレビューは精力的であり、いつも参考になるだけに、この無気力加減で点数をつけてしまうのはちょっと頂けないと感じました。

まず、投票はまさにプレイ部分として、しっかりとした屋台骨を成していると言いたい。このゲームでは、2択を選択し続けることになるのだが、システムによって、頭数の多い方が圧倒的に有利になっている。1人が意地になって、リソース(パワー)を注ぎ込んでも、多数派がそれを上回ることが非常に容易にできているのだ。つまり、自分がいくらリソースを集めた強者でも、多数派工作がうまくできなければ、肝心の選択で負けてしまうことになる。まさに交渉と思惑のある投票ゲームになっているわけです。

その投票でお話が進むわけだから、長期的にはどうお話が転んで欲しいのかと、短期的には今はどうあって欲しいのかを実現するために、きちんとプレイ部分に向き合う必要があるようになっています。

そして、そのプレイ部分を支えているのが結果の想像です。結果に間するなんとなくの情報しか与えられないからこそ、交渉の「余」地があるようになっています。もしかしたら、話の発生点になって、ストーリーに署名できる「かもしれない」、ステッカーが貼れるのはわかっているけども、それが何に作用するのかわからないから、これだろうと当てをつけて、賛成のための交渉材料にする。これの全容がわかっていたら、値踏みがされることがわかりきっているし、計算能力の上手い下手の話にしかならないでしょう。ゲームの展開による結果に対する信頼をテキストから読み取って積み重ねることで、フレーバーテキスト的なものがしっかりとした材料に転じているわけです。
この曖昧さこそが、投票の多数派工作を呼び起こす立派な起点になっているし、このゲームを楽しむ遊びどころとしてしっかりと機能していて私は大いに満足しています。

メモさん達は『その領域に到達するだけの資質も根気も無い我々』と言って、その余白を活かして交渉をすることを投げてしまっているわけですが、それはもはやゲームをやってないに等しいだろうと思うわけです。もちろん、そういう人がいるのはいいけれども、それで点数を4点とつけたり、投票がおまけと言ってみたりするのは、自分たちの無気力プレイによって的を外しているのに気付いていなくて、はっきり言って失礼なレビューになっていると思いました。

わかりきってることだけど、この文章は、キングスジレンマは傑作で、批判的なレビューを許さないぞ!ということではないです。『非常に好き嫌いが分かれる』という部分に異論はないし、楽しめないプレイヤー・グループがいるのも当然だと思う。
しかし、上に述べたように、投票がおまけと判断してしまっているのは明らかにグループによるバイアスが強すぎるが故に見落としてしまっているところが多いと思うし、そこを見落として4点とかになっちゃうのはレビューとして大きすぎる穴ではないのだろうかと、あのプレイグループにお疲れが見えてるのではないかと無用な心配をしてしまうわけです。

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