戦略的迷走のすすめ 迷走を受け入れて迷走を楽しむ
私は、「“やりたい”を事業として実現する」というプログラムをやっています。そのプログラムを通して、「うまくいった!」というひとの特徴を考えていくと、プログラム中に大迷走して、「自分はうまくいっていないな」と思い悩んでいたようなひとでした。
正解はないのです
私は、「“やりたい”を事業として実現する」というプログラムをやっています。そのときに、参加者のひとは2つのことで苦しみます。「自分の“やりたい”って何だろうか?」ということと、「どうしたら事業にすることができるのだろうか?」ということです。参加者のひとは、この2つの問いについて「どうしたらうまくできるのか」を知りたいと思ってやってきます。「言われた通りに順番にやっていけば、夢が叶う」という魔法のステップがあると思っているのです。
もちろん、世の中にはこの2つの問いに答える枠組みはたくさんあります。書籍として出版もされていますし、セミナーも多種多様に存在します。でも、そのよう書籍を読んで、多種多様なセミナーに参加して、それでもうまくいかないから、いまでもこのテーマに対する新しい書籍は毎月のように出版されていますし、セミナーを受け続けるセミナーマニアのようなひとも出て来てしまうのです。たぶん、なのですが、「自分の“やりたい”って何だろうか?」「どうしたら事業にすることができるのだろうか?」ということに対して、「この通りやっていけば答えがでますよ」という定理のような、レシピのような、マニュアルのようなものは、ないのだと思います。
うまく行ったのは、「迷走」したひと
ここまで多くの方の「“やりたい”を事業として実現する」ということに向き合ってきた中で、「“やりたい”を見つけて事業にすることができた」方もいれば、「自分でよいと思える方向に人生を変えることができた」という方もいました。逆に、せっかく時間とお金をかけて来てくれたのに、変わらなかったり次のセミナーに行ってしまうような方もいました。なにが成功かは、それぞれが定義することではあるのですが、私から見たときに、「あー、参加してよかったねー」と心から思えるような方とそこまで思えない方には、大きな違いがあることがわかってきました。それは何かというと、「迷走したかどうか」ということでした。大迷走して「なんかうまくいかないな」と思っていた方ほど、その後成果につながって、迷走することなく進めた方は、次につながりにくい、というような傾向です。
動物の例。中長期的に成果を生み出す迷走の構造
この「迷走」について。動物の世界ではいくつかの面白い例があります。
アリの世界では、あるアリが餌を見つけると、フェロモンを出しながら巣に帰るそうです。巣にいたアリたちは、そのフェロモンをたどって餌にたどり着き、協力して巣に餌を持ち帰ります。このときに、アリたちは、そのフェロモンを完璧にたどることができたほうが効率がよいように思えます。でも、実際はそんなことはないそうです。フェロモンを追尾するということに対して、完ぺきではなくたまに間違えるほうが、中長期的には効率がよくなるという研究結果があります。これは、最初のアリがたどった道が必ずしも最短経路ではなく、間違えたアリがたまたま最短の経路を見つけることがあるため、間違えるアリがいたほうが中長期的には効率がよくなっていくとのことです。
ネズミが迷路のなかで、どれだけ早くゴールにたどり着けるかという実験がありました。早くたどり着くことができるネズミとそうではないネズミの違いを観察したところ、ゴールに早くたどり着くことができたネズミの特徴は、「迷路に入った最初の段階ででいかに失敗したか」ということだったそうです。
短期的な正解を求めるよりも、初期のうちにどれだけ迷走したかで、中長期的な成果にはつながりやすいということが示唆されています。
迷走を受け入れて、迷走を楽しむ
さて、私の「“やりたい”を事業として実現する」プログラム。初期のころに、やってもやってもうまくいかなくて、「もう行くのがつらいな、さぼっちゃおうかな」と思う方が一定数います。でも、そのような経験をした方ほどうまくいく。迷走しているときは、「よくわからないからツライ」「なにをしていいかわからないからツライ」という気持ちになるようです。「やりたい」も「事業として実現する」にも答えはありません。「迷走するものだ」と理解して、「迷走」を楽しむことができるようになった方が、中長期的には参加者ご自身が「よいと思える変化」を手に入れているようです。
大切なのは、迷走力。迷走を楽しむことです。
迷走しているときは、順調だと考えて、迷走を楽しむ力がつけば、夢は叶うのです。
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