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金魚や海月の舞い踊り 〈すみだ水族館〉

(2020年8月)

すみだ水族館へ行くことにした。海の日にふと、そんな気分になった。流行りの場所へは流行りが落ち着いてから行きたい。そう思っているうちに8年も経っていた。光陰矢の如し、恥ずかしながらの初訪問である。
行くとなったら根っから事前調査に余念がない私は、「とりあえず行ってから考えよう」とはならない。「とりあえず行ってから考えよう」と言う人も嫌いである。行ってみて閉まっていたらどうするのだ。自分に対しても人に対しても無責任極まりない。
さておき、HPによるとコロナ以降ここもチケットは完全予約制になっている。…と、”年間パスポート”の文字が目に止まった。「2回分の料金で入り放題」だそうだ。これは買うしかないだろう。18時以降は落ち着いた照明に変わり、大人向けの時間に…なんていう記載もある。ふむふむ。時間は遅いほうがファミリーが撤退して空いているのかもしれない。よし、行こう。


時刻は18時。チケット購入窓口で4,600円を支払ったあと、検温をして、年間パスポート専用の小部屋で発行手続き。私以外にも2組。いるものだな。なんて思っていると、ものの5分程度で完了。早速入場すると、確かに薄暗い。昼間に来たことがないからよく分からないが、そんな気がする。そして目の前に広がるクラゲのビッグシャーレ。

ほうほう、これは癒される。人は思ったよりも多いが、癒される。密密だが、癒される。サンシャインが縦の展示だとすると、横の展示だ。上からぐるっと360°覗き込める仕様である。なるほど、だからわりと強気に人を入れてるのか。

その他各種クラゲが各種水槽で舞い踊っていた。ただ各種水槽はそれほどダイナミックではないので、ほぼ素通りした。

そうこうしていると、サンゴ礁コーナーに。いくつかあるシマのうち、ひとつがチンアナゴ達の水槽だ。寄れるチンアナゴ。寄れるニシキアナゴ。これはたまらない。ダイバーの方はご存知だと思うが、野生の場合、なかなか近寄れないのだ。すぐすっ込むのだ。しかしガラス越しとはいえこんなに寄ってもすっ込まないチンアナゴ達が心配になる。隠れるという本能を忘れてしまったのだろうか。そういえばチンアナゴがすっ込むのは、大物が近寄ることで起きる水の流れの変化を察しているためだと聞いたことがある。そうなるとお前たちの目はなんのために付いているのだ、と、それはそれで心配になる。

階段を降りると、小笠原大水槽だ。シロワニが悠々と泳いでいるようにも、暇を持て余してウロついているようにも見える。ここも照明が少し暗くされているのか、子供が映える。むろん知らない子供である。

続いて金魚コーナー。夏祭りのようで楽しい雰囲気だ。

ポツネンと泳ぐらんちゅうの正面顔に萌えた。ぽってりして、ブサ可愛い。思わず人差し指でアゴのあたりを撫でてみたくなる。オープンタイプの水槽なので、その気になればできてしまいそうなのが怖い。よーしよしよし、と心の中で堪能するに留めた。

そういえばすみだ水族館といえばペンギンだったな、ということで、申し訳程度に鑑賞してみた。最近気付いたのだが、私はそこまでペンギンが好きではない。もちろん嫌いではないしどちらかと言えば好きなのだが、わざわざ指差して「見て見てあの子、超カワイイ〜」と黄色い声をあげて誰かと共有したくなるほどではない、という意味合いである。今日もらんちゅうに夢中で、ペンギンエリアでの水中花火イベントをすっかり見逃した。まあいいか。その程度である。

そんなことよりも再度チンアナゴを見に階段を上がった際に、隅の方に2体の海亀を見付けて衝撃を受けた。愛してやまない生物、大好きなアオウミガメ である。小さくて可愛い。それなのにどこにも行けない極小水槽に1個体ずつ入れられていて、少し悲しかった。もう少し大きくなったら自由に泳がせてもらえるのかな。元気でね。がんばってね。今日いちばんのエールを衷心から送る。


ビールでも飲んでまったりしてから帰ろうと思っていたのだが、混みすぎていてそれどころではない。次は平日の夜にでも来ようかな。なにせ無敵の年間パスポート。楽しませてもらおう。


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