見出し画像

Design in tech report 2023を読んで

SXSWでのJohn MaedaによるDesign in tech report2023版が2年ぶりに公開されたらしい。毎年世界のデザイントレンドを占うプレゼンテーションということで注目していたので今年も読んでみた。

元のデータと動画は全て以下に公開されているので見て欲しい。

参考までに過去のDesign in Tech report2018の時に書いた記事。

前提として、元々John Maedaは以下のようなアジェンダを用意していたんだけど、150枚くらいの用意していたスライドを全てカットして、今起こっていること=AIに集中したプレゼンテーションをすることにしたんだって。

元々のアジェンダも参考になる。

0.役にたつAI関係のツール
1.デザインXピープル
2.デザインとデジタルトランスフォーメーション
3.いかに機械と話すか?
4.AIケチャップボトルモーメント
5.レジリエンスか、リニューアルか
6.倫理の美学

→これはこれで、すごく内容が気になる。デザイナーにとって、人間というものを扱うことが最大の価値であることや、DX文脈でデザインがどう必要とされているか(それがお金になっていること)や、デザインの持つ美意識が倫理と繋がってくることなどが語られる想定だったのだと思われる。

そして、代わりにプレゼンされたテーマは、やはり興隆するAIワールドにおけるデザインという切り口。

John Maedaは、以前からDesignを、Classical Design, Design Thinking, Computational Designという分類をしているが、以前のような3つを並列で並べるのではなく、階段状に見せた上で、Computational Designによって大きな価値創造が生まれることを示している。


デザイナーへサーベイの結果。
1.ChatGPTによって仕事に変化が迫られると8割のデザイナーが思っている。
2.デザインXAIツールという意味では、以下のようなツールが将来的に有望ではないか?
Adobe tool (X AI)/Figma+AI Plugins/DALL-E/Midjourney/D-iD/Copy.ai/Elevenlabs/Stable Diffusion/Hugging Face /"Anything"/Chat GPT
→チェックできてないツールもあるのでみてみよう。
3.Figma+AI plug-inとしては、diagram.comが注目。


アプリケーションを作る作り方も変わる。人間が使う道具としてのハサミに見立てながら、認知(Cognition)と文脈(Context)という2枚の刃のうち、大規模言語モデル→プロンプトデザイン→ベクトルDB→プロダクトが出来上がる!という新しいモデルが立ち上がる。ただし、今までのモデルベースの考え方とは根本的に作り方が異なるため、新しいOSが必要。


文脈からアプリを作る、プロンプトエンジニアリングの考え方が紹介されている。1.言語モデルを選び、2.プロンプト(モデルへの命令)を作り、3.意味のある文脈を加え、4.チューニングする。


ここまで、AIの進化とその可能性を伝えた上で、ウイリアムモリスのアーツ&クラフト運動になぞらえ、機械のシステム化に対してのCritical Makingの必要性を提唱している。


AIはデザイン思考についても影響しうる。一つの考え方は以下の通り。
1.共感:ユーザーインサイトについてはカスタマーサポートのログのAIによるサマリー
2.定義:共通の課題をAIにより分類
3.発想:考えられる解決策をAIで出す
4.プロトタイプ:解決策のユーザー体験のビジュアライズ
5.テスト:ユーザーのリアクションのシュミレーション

→ここは、現段階ではいうほどシンプルにはいかないと思われる。3.発想と5,テストはAIが強い領域だけど、1.についてはあまり深い感情は今の所出てこないし、プロトタイプは一番デザイナーの手に残る領域だろう。


Classical designにも影響が及ぶかもしれない。その一つの仮説は以下の通り。
1.想像:AIでオプションを生成
2.実験的に作ってみる:AIでオプションをテスト
3.制作:AIでスケッチする
4.振返:AIと批評チャットする
5.共有:AIオーディエンスにシェアする

→これは、確かにオプション作りという意味では有り得るけど、そもそも、このデザイン作業って楽しいのか?という根本的な疑問は出てきますね。


AIとパートナーを組む時代には、僕らはすべきこととそうでないことを明確に分けていく方がいい。さらにいうと、愛し、トキメキを持ってできることに熱中する方がいい。

やるべきこと
・意思決定
・人と話す
・他の人と学ぶ
・メンタリング/コーチング
・関係性構築
・プレゼンテーションする
・戦略を創り出すこと

やるべきでないこと(AIに任せること)
・カレンダー管理
・パワポ資料の作成
・データのクリーニング
・どうでもいいE-mail処理
・競合リサーチ
・要約すること
・モニタリング・アラート出すこと

AIについてイメージできない場合に見たらいいSFムービーとして、二つ挙げている。(どちらもAmazon Primeで見れる)
1.Arrival (2016)
2.Black Panther (2018)


サマリー:
・デザイナーは、人を人として大切にする傾向がある。見込み客でもカスタマーでもなく。
・デザインは、機械に話し、もっとスケールし、そしてもっとお金を生み出すフィールドとして進化するだろう
・新しい「倫理の美学」を生み出すためにデザインの世界で多くの仕事がなされるだろう
・人に対してうまく話せることは、機械に対してうまく話せることよりももっと重要になるだろう。
・でも、それはメインストリームにはならない。なぜなら、お金や時間を節約したり、新しいお金を生み出すことにはつながらないように聞こえるから。
・来年のプレゼンテーションは、新しいデザインがビジネスフィールドでどんな価値を生み出すかが中心になるだろう。
・我々に幸運がありますように!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?