インドにおけるバックログの現状

2023年10月13日に日本知的財産協会においてインド特許調査のセミナーを開催します。先回のインドセミナーはちょうど2年前。この2年間を中心にInPASSやPATENTSCOPEの収録を調査し、情報を色々とアップデートしました。

全貌はセミナー当日にならないとお話しできませんが、いくつかトピックをご紹介したいと思います。今回は悪名高いバックログの最新状況についてです。

■ 経過期間:出願~登録

同国の審査期間の長さや審査滞貨(バックログ)は有名な話。過去20年に登録された案件について出願から登録までの期間をグラフ化してみました。2008年~2014年の間に最頻値が8年まで進み、その後最頻値は「高止まり」しています。しかし2018年以降、5年未満で登録される案件が増加し、平均審査期間は6.0年まで減少しました。

■ バックログ解消に向けて

審査官を増員しバックログの解消に注力している様子も数字から垣間見ることができます。

左の棒グラフは2017年以降の年ごとの登録件数。2023年は8月までの数字。既に昨年の登録件数に並んでいます。

右側は月ごとの折れ線グラフ。3月の数字が高いのは、日本企業と同様の「期末の数合わせ文化」がインドにも存在するためでしょうか?2023年は毎月毎月、過去にないほどの大量の件数が登録されています。

出願から登録までの経過期間が、この3年間短縮されていませんが、登録件数が増加していることから許すとしましょうか。バックログ解消、本当に実現するかもしれません。

■ 審査請求~ファーストアクション

出願から登録までの何年間という長いスパンではなく、審査請求からファーストアクションまでの経過期間の推移を調べてみました。

縦軸がFER(First Examination Report)の発行年、横軸が審査請求からFER発行までの経過期間です。2017年以降、毎年のように早くなっていることがわかります。

FERへの応答から登録査定までの期間も、いずれ調べてみたいと思います。FER発行だけで安心されても困りますしね。

■ 公開バックログも

審査期間が異常に長いだけでなく、出願から公開までに長期間を要する案件が多いのもインドの特徴のひとつでした。

2016年には出願から20年を超えて公開された、「超遅延公開」案件が502件も。おそらく出願書類が正しく管理されていなかった(倉庫に山積み?)ものと思われます。

ようやく全ての公開バックログが解消されたのか、2017年以降は正常な状態を実現しました。

出願から公開までの経過期間が6ヶ月未満の「早期公開」案件が目立ちます。次ページに詳細を紹介します。

■ 超早期公開

2016年から2023年(8月まで)に公開された案件であって、出願から公開までの期間が100日以下のものだけについて、細かい刻みで件数をグラフ化してみました。約4,500件が出願から10日以内に公開されています。

2017年から、この超早期公開が顕著に増えました。

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InPASS収録情報から分析したバックログの現状についてお話ししました。次回は Make in India 政策の成果について紹介したいと思います。

アジア特許情報研究会/アイ・ピー・ファイン 中西 昌弘