ダイナクローネ = サツカーボーイ = ベルベットサッシュ = タタールプリンス = ゴールデンサッシュ (Family#1-t)

血統 

1984 Dyna Krone 
1985 Soccer Boy 
1986 Velvet Sash 
1987 Tartar Prince 
1988 Golden Sash 
1989 Mr.Z


父 1967 Dictus ⁃ FR
 父父 1960 Sanctus ⁃ FR
 父母 1960 Doronic ⁃ FR 
母 1979 Dyna Sash ⁃ JPN
 母父 1971 Northern Taste ⁃ CAN
 母母 1966 Royal Sash ⁃ GB


Lady Angela 5*4
Nearco 5*5・5
母ダイナサツシユからの継続のみ
父母間には五代クロスなし

父 Dictus ⁃ FR

父 Dictus[デイクタス]については下記のページ内にて触れています。

Dictus × Dyna Sash

Blenheim と Gainsborough

Dictus が持つ代表的な血脈 Blenheim 5*5×5。彼を父に持つ Mahmoud は、Princely Gift の父 Nasrullah と母母 Mumtaz Mahal が共通しています。そもそもダイナサツシユは Northern Dancer 経由で Mahmoud を受け取っていますが、同時に Nearco もついてきて4×4*4となるとだいぶしつこい。そこで Mahmoud のみ持参してくれるあたりさすがです。

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Northern Taste[ノーザンテースト]が挟まったことによって、目に留まるのは Dictus の五代父 Artist's Proof の存在。父が Gainsborough で、母父は Tracery です。ひとつ手前のダイナサツシユで Lady Angela と Sash of Honour にあった関係性をなぞるかのようにサイアーラインにおられます。

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上記から Blenheim と Gainsborough を抽出してみます。

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やっぱり Mahmoud なのかな。エプソムダービーをレコード勝ちした名馬の血こそがサツカーボーイの豪脚を生み出す重要なピースだったのかもしれません。(もちろん Fine Top の関与に加えて Wild Risk も併せ持つ Dictus の悍性が彼の爆発力を点火させていたのであろうことは前提として)

Miranda = Pretty Polly

そして忘れてはいけないのが父母 Doronic 。Northern Taste を含む配合においては外せない、必殺《Miranda = Pretty Polly》こそがメインウエポンです。Lady Angela の基礎たる牝馬を全姉妹クロスを使って押さえているのですから完璧です。加えて Dulzetta は Hyperion の牝系 Gondolette にもアプローチしてます。

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もう少し詳細に Sarita の〈Swynford + Pretty Polly(= Miranda)〉と Selene の〈Chaucer + Gondolette〉まで含めて Lady Angela と比べても Worden & Dulcimer と Bozzetto で同じ組み合わせに。* ついでに Great Sport が Gallinule 産駒なところにまで脈略があって緻密感上乗せです。

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複数の Gainsborough は Hyperion を経由することなく、かつ牝系は押さえて Lady Angela に呼応してみせ、Blenheim を三本クロスしていても Nasrullah なしはおろか、どこを探しても Nearco 皆無で Mumtaz Mahal ならちゃんとあるという離れ技。Dictus の血統表はどこを切っても楽しすぎます。

Soccer Boy (1985)

白老 社台フアーム
社台レースホース
募集価格総額 1300万円
栗東 小野幸治

* ダイナサツシユの長女ダイナクローネは3着3回のあと東京芝1600で初勝利、その後3戦大きな着差なく走っていたにもかかわらず突如抹消となっています。弟がデビューを飾る直前に引退してしまった400Kg前後のちいさな牝馬は母になることもありませんでした。

二番仔として生まれたサツカーボーイもやはり馬格には恵まれておらず、悍性は強すぎる。母は未勝利で特筆できる近親なし。様々な背景が重なったせいか、牡馬としてはかなり控えめな価格で募集されることになります。

しかし美しい毛色と鋭い目付きを兼ね備えた彼は、ターフに現れた途端多くの人々を魅了し、誰もが一目置く競走馬へと成長したのです。

怪我や気性の問題を抱えて決して万全ではない現役時代を過ごしつつ、勝利したレースではことごとく強烈な印象を残していきます。純然たるマイラーでないことは明らかながらもマイルG1を2勝した王者は、類まれな末脚を解き放ち圧倒的な着差で駆け抜けてみせた自らの走りで、遂には故郷へのスタリオン凱旋を叶えました。

産駒は主流血統を抱えた Dyna Sash 方面がクロスされやすいこともあって Dictus の気性が刺激されずに済んだのか、内に秘めたスタミナを素直に顕出させるステイヤーが目立ちます。きらきらの良血牝馬が集まったとは言えなくともG1を含む複数の重賞馬さらには後継種牡馬もきちんと残す面目躍如、つきまとう蹄葉炎と戦いながら内国産種牡馬の道を切り拓きました。

Velvet Sash (1986)

白老 社台フアーム
社台レースホース
美浦 鈴木康弘

ベルベットサッシュが福島芝2000で勝利した時の馬体重は398kg。親世代からの傾向とはいえ、ここまで軽量が続くともう仕方ない。サツカーボーイが名声を得た直後だったにもかかわらず、社台で産まれた彼女の仔がホールオブフェームのみだったのは、どうしても拭えない馬格と気性の問題が影響していたとしか思えません。

一方で先の物語を知っている我々からすれば、その残された初仔が複数の重賞馬を送り出すことになる牝系の底力と粘り強さに驚かされます。他の娘たちは系統が途絶えてしまっていますが、その過程ではベルベットサッシュの 3×3 という彼女の結晶みたいなクロスのダイショウドラゴンという馬がいたりもしました。結果は残せなかったけれど、牝系の繁栄があったからこそ生まれた貴重な存在でした。

Progeny

1991 早来 牝 鹿毛 ホールオブフェーム
JRA-11[2-0-0-9] 1910.2
by Allez Milord ⁃ USA

1992 浦河 牡 栗毛 スピードバリー
未出走
by Jade Robbery ⁃ USA

1993 浦河 牡 黒鹿 エンドレスダンス
JRA-4[1-0-0-3] 590.0
by Park Regent ⁃ CAN

1995 浦河 牝 栗毛 クインオブクインズ
JRA-3[0-0-0-3] 0.0
by Criminal Type ⁃ USA

1996 浦河 牝 鹿毛 サツキアラシ
NAR-21[1-1-1-18] 306.0
by Carroll House ⁃ IRE

1997 浦河 牝 青毛 オグリサッシュ
NAR-19[1-3-2-13] 151.0
by Arcangues ⁃ USA

1998 浦河 牝 鹿毛 コスモチャーミング
北海道10月市場 325.5
JRA-7[0-0-0-7] 111.0
by Zagreb ⁃ USA

1999 浦河 牡 鹿毛 サダムステップワン
北海道10月市場 1365.0
JRA-7[0-1-0-6] 251.0
by Seattle Dancer ⁃ USA

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* 1987年誕生の弟タタールプリンスは2着2回から勝ち上がり、京都3歳ステークスを3着。サツカーボーイの手綱をとった河内洋騎手を初戦から迎えている点からも陣営が掛けていた期待が伺えます。しかし6戦を終えたのち11ヶ月に及ぶ休養となり、なんとか復帰するも以前の輝きは戻りませんでした。

Golden Sash (1988)

白老 社台フアーム
吉田勝己
栗東 小野幸治

サツカーボーイに良く似た美しい妹、ゴールデンサッシュ。兄と同じ厩舎から焦らしに焦らして遅いデビュー、走ったのはたった5戦でした。馬券人気 1→1→1→3→5 の記録からも彼を重ねていた方は多かったのでしょう。未勝利引退も最後のレースは函館ダ1700重馬場で0.1秒差の2着に入っています。

故郷に戻って紡がれた母としての功績は語り尽くすことが難しいほどです。受胎が順調なので早生まれが多く(ちいさく出すせいか)いつも安産。19頭もの産駒を授かって初仔以外全て無事デビュー。母としても祖母となってもさらにその先でも重賞馬を輩出します。白老が育んだ「名馬の妹」は母としての年月を重ね、かけがえのない「偉大な名牝」となりました。

Progeny

1993 白老 牝 栗毛 ホイッスル
社台レースホース
未出走
by Jade Robbery ⁃ USA

1994 白老 牡 黒鹿 ステイゴールド
社台レースホース 3800
JRA-48[5-12-8-23] 76299.3
UAE-1[1-0-0-0] US$120.0
HKG-1[1-0-0-0] HK$800.0
by Sunday Silence ⁃ USA

1995 白老 牝 栗毛 ローズサッシュ
日本ダイナースクラブ
JRA-11[0-0-1-10] 284.0
by Dr Devious ⁃ IRE

1996 白老 牝 鹿毛 レイサッシュ
サンデーレーシング 1800
JRA-38[3-1-2-32] 4422.4
by Paradise Creek ⁃ USA

1997 白老 牡 鹿毛 サンシャインレイ
サンデーレーシング 7000
JRA-8[1-0-1-6] 790.0
by Brian's Time ⁃ USA

1998 白老 牝 栗毛 グレースランド
社台レースホース 3200
JRA-4[0-1-1-2] 407.0
by Tony Bin ⁃ IRE

1999 白老 牝 鹿毛 スターアミュレット
サンデーレーシング 1800
JRA-13[0-0-0-13] 218.0
by Bubble Gum Fellow

2000 白老 牝 鹿毛 キャッチザゴールド
サンデーレーシング 3600
JRA-26[4-3-4-15] 6082.6
by Sunday Silence ⁃ USA

2001 白老 牝 黒鹿 レクレドール
サンデーレーシング 5000
JRA-27[4-2-4-17] 18488.5
by Sunday Silence ⁃ USA

2002 白老 牝 栗毛 プリンセスゴールド
社台レースホース 5000
JRA-27[1-2-1-23] 2264.0
by Sunday Silence ⁃ USA

2003 白老 牡 黒鹿 ギュリル
サンデーレーシング 12000
JRA-2[0-0-1-1] 255.0
by Sunday Silence ⁃ USA

2004 白老 牝 栗毛 キューティゴールド
社台レースホース 3600
JRA-5[0-1-1-3] 330.0
by French Deputy ⁃ USA

2005 白老 牡 鹿毛 オーログランデ
サンデーレーシング 5000
JRA-10[0-0-0-10] NAR-9[3-0-1-5] 165.8
by Symboli Kris S ⁃ USA

2006 白老 牝 鹿毛 ペッシュドール
サンデーレーシング 3000
JRA-5[0-0-0-5] 0.0
by King Kamehameha

2007 白老 牝 黒鹿 メルヴェイユドール
サンデーレーシング 3000
JRA-36[3-2-5-26] 5900.0
by Fuji Kiseki

2008 白老 セ 鹿毛 ザルグーン
サンデーレーシング 6000
JRA-13[1-0-1-11] 780.0
by Deep Impact

2009 平取 牡 栗毛 ケントリューズ
JRA-6[0-0-0-6] NAR-12[1-2-2-7] 41.7
by Zenno Rob Roy

2011 新冠 牝 鹿毛 ゴットサーガ
JRA-1[0-0-0-1] 0.0
by Dance in the Dark

2012 白老 牝 栗毛 ヴァイスゴルト
JRA-4[0-0-0-4] 0.0
by Dance in the Dark

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1989年に Dictus が死亡し、6年にわたるダイナサツシユとの蜜月は終わりの日を迎えます。最後に産まれた牡馬ミスターゼットは残念ながらデビューできませんでした。それでもサツカーボーイ・ベルベットサッシュ・ゴールデンサッシュが系譜を継ぎ、其々のラインから拡がった血脈が現在でも着実に繋がっていることを考えれば、父にとっても母にとっても素晴らしい相手だったことに疑いの余地はありません。


いちいち調べながら試行錯誤して書いていることが多いです。 新たに気が付くこともあるので加筆修正はわりとすると思います。 どこまで続けられるかは気力と体力と時間次第です。