父親になるメリット~仕事に与える影響③許容範囲が広がる~
父親になるメリット「仕事に与える影響③」は「許容範囲が広がる」です。ちなみに、ここまで①と②を読んでいただいた方のなかには、「同じことを言っているのではないか」と思われるかと思います。基本的には、その通りです。子どもという、自分とは年齢・経験・前提が異なる人間と対峙するときに求められることは、単純化すれば「他人と接するときに求められる応対」です。ただし、子どもは、会社関係で出会う方々とは異なり、あまりに素直で無垢で、そしてまだ理解能力が育っていません。子どもと対峙すると、自分が当然にできていたこと、自分が自然に理解していること、そして普通や常識ということが全く通用しないことを痛感させられます。それは、子どもには前提がないからです。その前提は、親や学校、社会によって形成されていきます。子どもと対峙することとは、人と応対することの原初を思い出されることになります。だから、基本的には、子どもと応対して得られることとは、対人関係においてはコミュニケーションということに尽きるかと思います。そのことについて、この本で色々な観点から光を当てて、書いています。
話を戻します。「許容範囲が広がる」とは、「仕方ないよね」と思えることが増える、ということです。少なくとも私の場合はそうでした。これはとても大きなメリットでした。
働くことには残酷な側面があり、結果を出していないと意味がないという場面があります。特に顕著なのは営業です。私は今では転職して事務職となりましたが、前職では営業をしており、しかも新規事業案件の営業であったため、在職期間中に自分の給料分ほどに利益を稼ぎ上げることがあまりできず、ずっと悩み、そして苦しんでいました。そして、社長にも叱責されることもあり、社内に自分の居場所がないと苦しんでいました。これは働く人全てにあてはまるケースではないかもしれません。しかし、「働く=給料を得る」ことであり、そのためには成果が求められます。
一方で、人の能力は平等ではありません。それだけではなく、適材適所ということで、その人の能力が輝く場所もあれば、なかなか効果的な役割を果たせない時もあります。かつて、私は自身に対しても、人に対しても「成果を出さなくてはいけない」と感じており、且つ自分にも人にもそれを求めていました。今も決して、人に対して優しい人間だとは思いませんが、その時は今以上に厳しい人間であったと思います。しかし、子どもが生まれ、生まれたばかりの子どもが正しく「何もできない」状態であることや、11歳の長女よりも8歳の長男が得意とすること(8歳の息子の方が、論理的な思考能力が優れており、どうぶつ将棋は私よりも息子の方が強いです)を目の当たりにすると、「年齢を問わず、人には得手不得手があるなあ」と、当たり前のことを改めて実感し、理解できるようになりました。
私は現在、どちらかというと仕事ではメイン担当ではなくて、メイン担当の業務を行う人の補佐的な役割をすることが多く、一緒に仕事をする人は何が得意で、何が不得意なのか、自分がどの様な役割を果たせば仕事がスムーズに回るようになるのかを、この様な「人には得手不得手がある」ということを理解してから、より意識して動けるようになりました。
以前であれば、「得意不得意があるのはわかるが、役員なんだから最低限のことはやってくれよ」「これくらいなんでできないんだよ」とフラストレーションを多く抱えてしまっていました。今では「まあ、仕方ないよな。この人はスケジュール管理はできないけど、発想力があるからな」「少し抜けちゃうけど、マメにフォローできればしっかりした企画書を作れるから、ちょいちょい進捗を確認しよう」「この人は一人で仕事を一人でやりたがるから、困ったときには助けられる状況を作っておこう」みたいな感じで、当然この様に寛容になれない時も多くありますが、そうなれるように心掛けられるようになりました。
話は少し重くなりますが、最近では発達障害やADHDと言われるような、普通の感覚の人とは少し異なる方が職場にいるケースが増えてきています。私もその様な方とこれまで一緒に働く機会があり、「この人は怠けているのではないか」「前に説明したはずなのに、この人はわざと知らないふりをしているのではないか」と思い、イライラするときがたくさんありました。しかし、子どもの成長過程で発達障害の本を読んだり、また、子どもと接するなかで、「自分ができることは誰でもできるはずだ」という意識が減り、少しづつ物事に対する許容範囲が広がる中で、その発達障害の方に対して「この人が得意なことをお願いしよう」「お願いするときには、その物事や順番を明確にして、判断基準を曖昧にはしないようにしよう」と心掛けるようになりました。そうすることで、その方がどの様に思っていたかはわかりませんが私としては前よりもコミュニケーションが取れるようになり、仕事も以前よりもスムーズに進行できるようになりました。自分が当然だとは思わないこと、そして、相手を許せるようになること、これは仕事をするうえでも、生活をするうえでも非常に大切だと思います。この様に感じられるようになったことは大きなメリットです。
しかし、逆に許容範囲が狭まったことがあります。「自分の子どもにはこの様になって欲しくない」「自分の子どもにはこの様なことはして欲しくない」と感じてしまう人に対して、どうしても厳しい眼差しを向けてしまいます。例えば、一生懸命にやらない人、自分に甘い人(自分に甘くて他人に厳しい人は最悪です)、責任感のない人、調子だけいい人、などです。とにかく、私の場合は、一生懸命物事に臨んでいれば、もうそれだけでその人を「いいなあ」と思うようになりました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?