高齢者による性加害が増えている?!ニュースから考える【子どもの守り方】
夏休みも終盤にさしかかり、たまたま開いたネットニュースを見ていると
『小学校低学年の女児にキス 80代の男を不同意わいせつ容疑で逮捕 顔見知り程度、那覇市の集合住宅で(沖縄タイムス)』
という、頭が「?」でいっぱいになる(理解不能な)タイトルが目に入りました。
「小学校低学年」ということは、小学校1~2年生なので、年齢でいうと6歳~8歳です。
その小さな女の子に、80代の男=おじいちゃん がキス?!ってどういうこと?!!
と、気付いた時には記事の詳細を見ていました。(記事の詳細はこちら)
<記事の要約>
事件は沖縄県那覇市で発生(那覇署が担当)
5月17日に女の子が住む集合住宅に加害者(80代の男)が訪れた
当時、家には女の子と加害男性だけだった
同日の14:30~16:00にかけて口にキスするなどのわいせつ行為を行った疑い
女の子は家族を通じて加害者と面識があった
女の子が帰宅した際、本人から話を聞いて発覚した
この記事が出たのが夏休み真っ只中で、子どもだけで過ごす時間が増える時期ということもあり、共働き世帯の親御さんからすると『他人事』ではない事件・・・
一体どうやったら防げるのか、この事件を読み解いて同じことが起こらないように対策を考えてみたいと思います!
▽SASENAI チャンネルで解説しました!
(まず、記事は事件の一部しか出ていないので、私の推測から解説をしています。事実と異なる点があることをご理解の上お読みください。)
さて、記事を読むと事件は女の子しかいなかった自宅に80代の男が訪れ、犯行が行われたということでした。
親御さんも、まさか留守中にこのようなことが自宅で起こったとは想像もしなかったと思います。
ここで私が思い出したのが「狼と7匹の子羊」の物語です。
子羊のお母さんが家を留守にする際「誰が来ても、開けてはいけないよ」というのに、狼は巧みに子羊を騙して家に入ってしまうお話しですね。
公表されている報道からは詳しい経緯は発表されていませんので、あくまで憶測になりますが、当然お母さん羊が子羊にしたように「開けないように」と子どもに伝えていたはずです。
でも、なぜ子どもの方は開けてしまったのか
記事に戻ると「那覇署によると、女児は家族を通じて男と面識があったという」とあるので、女の子の証言を公表したものと考えられます。つまり、女の子からすると、この80代の男性は知っている人で信頼できる人と考えた可能性があります。
もし留守を任されている時に、知り合いのおじいちゃんが訪ねてきて、ドアを開けてしまったのだとしたら?と考えてみると、この状況はたとえ大人であってもとても判断が難しい状況ではないでしょうか。
例えば、知り合いの近所のおじいさんがインターホンを鳴らしてきて、「美味しい桃を沢山もらったから、良かったらと思って持ってきました~」とか言われたら、ついつい開けてしまうかもしれませんよね。
(もちろん、大人を相手に無理やり襲いかかるという状況は考えにくいわけですが、ドアを開けるかという時点で警戒心はなかなか持てないと思います。)
では、どうしたら防げたのかを、この事件を例に考えてみたいと思います。
『知り合いだから』いいんじゃない(安全じゃない)
ある性被害相談窓口に寄せられる性被害の相談のうち性被害の8割は知人からによる加害だったといいます。
少し古いデータですが、平成20年に内閣府が行った調査でも同様の結果になっていました(参照元)ので、性犯罪の多くが面識のある「知人」からによるものと考えていいと思います。
子どもへの防犯対策では、「知らない人にはついていかない」という言い方をしがちですが、「知っている」か「知らないか」では身を守ることができず、むしろ面識の有無で警戒心を低くしてしまうリスクが高まる可能性がありますので注意が必要です。
もし子供に留守をさせなければならないことがあれば
知っている人が訪ねてきても、絶対に家を開けちゃいけないよ
どうしようか困ったら、お父さんかお母さんに電話してね
と具体的に対応策を伝えることがポイントです。
万が一を考えるのであれば、留守中には誰が来ても「対応しない」というルールにしてしまうのが1番かもしれません。
『お年寄りだから』いいんじゃない(安全じゃない)
※まず、高齢者=犯罪を犯すということではありません。データから、ご自身が持つバイアスを理解することを目的に記載しています。分断や差別を助長するためではありませんのでご理解いただけますと幸いです。
私自身、このニュースの見出しにあった「80代の男性」と、女児に対する犯行内容に対して理解が追い付きませんでした。それは、私自身の老人に対するバイアスがあるからだと思い、高齢者の性犯罪の現状を調べてみたところ3つの参考になるデータが出てきましたので紹介します。
その①:高齢になっても性欲は変わらない
熊本 悦明先生が2007年に発表した、パートナーが健康な男性における性生活の疫学調査結果では
加齢による性行動の頻度は減少、性的障害は増加する一方で、性欲はそれほど変わらないと示しています。
▽調査結果▽
性交渉が全くない者の比率
60代後半:20%
70代前半:28%
70代後半:45%
80代前半:57%
月に1~2回以上の性交頻度がある者の比率
60代後半:50%
70代前半:37%
70代後半:25%
80代前半:17%
その②:高齢者の性犯罪者の45%が子どもを狙う
次に高齢者による性犯罪の実態を調査した、山上皓先生と、渡邉和美先生の論文では「65歳以上の性犯罪で検挙された高齢者の特徴」を以下のように挙げています。
1.65~69歳の年齢層が6割
2.被害者が12歳以下の比率が45%
∟略取・誘拐:70%、不同意わいせつ:48%
∟被害者のほとんどは女性だが、男性被害者は5%で12歳以下の男児がほとんど
3.日中の犯行が多い
4.強姦(不同意性交等罪)は知人を対象とする場合が多い
5.略取誘拐、強制わいせつ(不同意わいせつ罪)は無関係の子どもを対象とする場合が多い
6.犯行は自身の日常生活圏から遠くない範囲で行う
∟被害者との生活範囲が重なっている
7.凶器は使わず、言葉でコントロールする
その③:高齢者の性犯罪件数は増加傾向
高齢者による性加害が増えているのかを調べるため令和3年(2021年)における65歳以上の高齢者の検挙人員(※1)とそれから14年前の平成19年(2007年)(※2)を比べてみました。
強姦(不同意性交等罪)は約2倍(18人から38人)、強制わいせつ(不同意わいせつ罪)は約3倍(135人から352人)に増加しています。
※1:令和4年版犯罪白書・図表4-8-1-1より
※2:警察庁「平成28年の犯罪情勢」(平成29年7月)・図表1-3-2-2より
上記データをみて、みなさんの中で高齢者に対する印象に何か変化はあったでしょうか。
(繰り返しになりますが、高齢者=犯罪を犯すということではありません。客観的なデータを見ていただき、ご自身が持つバイアスを理解していただくことを目的に記載しています。分断や差別を助長するためではありませんのでご理解いただけますと幸いです。)
子どもはとても素直に大人のいう事を信じて、出来る限り従おうと努めます。「お年寄り」と聞けば、優しく接しなければならないと多くの子どもが考えるはずです。しかし、時にこの考えに付け込んで犯行に及ぶ犯罪者もいるということを考えなくてはいけません。
まずは、子どもが1人の時は、相手が誰であっても危険に遭うリスクが一気に上がるという自覚を親自身も持つこと、そして「~だから大丈夫」というバイアスは持たずに、警戒心を持つ大切さを教えることがとても大事です。
是非、今回の事件について自分たちだったらどうするかな?どうしたらいいかな?と親子で話し合い、対策を考えるきっかけにしてみてください。
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