本音で語り合う
人は誰しも、本音と建前をもっている。初対面、あるいは知り合ってから間がない人と話すときには主に建前を使って話す。しかし、建前で話しているうちは決して人間関係を深めることはできない。次第に本音が出せるようになるにつれて、人と人とのつながりはより深く強いものになっていく。
学生を含め、最近の若者達と話していると、なかなか相手の本音が見えなくて戸惑うことがよくある。こちらが本音で相手にぶつかろうとすると、サッと建前の殻の中へ引きこもってしまう。なぜなのだろうか?
今の日本の社会は、本音を出さなくても済む仕組みになっている。また、本音を出すことは組織の和を乱すこととしてタブー視する傾向さえある。だから、若者達は生まれてから成人して社会に出るまでの20数年間に、本音で相手とぶつかり合うという経験をほとんどしていないのである。
最近中学生にこんな質問をされた。「先生、本音と建前って何ですか?」言葉で説明しようとするとなかなか困難である。本音で語り合ったことのない人達に、何が本音で何が建前なのか区別するのは難しい。本音を口にするには非常なエネルギーと細心の注意を必要とする。臨床心理学者の河合準雄さんも「本音は劇薬である」と述べている。思いやりに裏打ちされていない本音は、相手の心を傷付けるだけの単なる中傷にすぎない。
人が生きていくために一番大切なことは何か。それは、どんなに時代が過ぎても、世の中が変化しても変わらない。「人と人とのつながり」である。人は人によって育てられ人を愛し人のために尽くす。それこそが最も大切なことであり、最も大きな喜びでもある。本音で付き合える友達は、人生をきっと豊かにしてくれる。
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