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18.刈込む雑木 自然樹形のツツジ

 岐阜県多治見市のかさはら潮見の森は、1989(平成元)年に開設されました。コバノミツバツツジとともに、アカマツ、ソヨゴ、アセビなどの自生樹木をうまく残しながら、山の木々はかなり伐り除き、サクラなどの花木を植えた公園として、うまく木々を剪定せんていしています。他所との違いを比べながら、木の仕立て方を説明します。

かさはら潮見の森 2022年4月10日

 第17話御祓山みはらいさんは、他の樹木との競争に打ち勝って、自然に育つコバノミツバツツジです。もちろん、野仏が佇む昔からの登山路として、糸原の人々が、歩く妨げになる邪魔な枝を切り払い、路から見える倒木などは除いてきました。

御祓山みはらいさん 2019年4月20日

 第2話の希望が丘文化公園の憩いの広場は、江戸時代にはアカマツの木の根まで取ったために生まれた花崗岩むき出しのはげ山と砂が溜まったかわらの後地が、再生した場所です。広々とした場所に、アカマツとコバノミツバツツジが点在して育ち、元々雑木や草が少なかったです。草とともに生えてくる他の幼木も刈り取って、この環境を維持しています。

希望が丘文化公園 2020年4月17日

 第1話第6話で紹介した古瀬間御嶽こせまおんたけは、健全に育っているアカマツ、イロハモミジ、ザクラは守るとしても、他の雑木を全て伐採したことで、コバノミツバツツジの幼木が一斉に萌芽しました。よく見ると、コバノミツバツツジの中に、1%ほどヤマツツジが混ざっています。

古瀬間御嶽 2022年4月9日

 第9話の四季の里まつもとは、パターゴルフ場として、コースの部分を芝生と砂地にするために草を刈り、コースを区切る植込みにアカマツ、コバノミツバツツジ、クマザサを配置しています。元気なうちにアカマツに薬剤注入することと、芝刈り以外は、手入れをしていません。もちろん、店の周りの庭は、綺麗に設えられています。

四季の里 まつもと パターゴルフ場 2023年4月18日

 常緑のツツジと言えば、京都の詩仙堂のように、開花時に葉を覆って一斉に花玉を咲かせる造形美であり、1年を通して小さな葉玉が茂る美しさを求めて、玉物に刈り込むことが一般的です。

詩仙堂 2024年4月2日

 ただし、詩仙堂の庭を取り囲む木々は、最低限の剪定しかしていません。もちろん京都の三山のこと、自生して大きくなったコバノミツバツツジが、周りの木々の間から覗いています。

詩仙堂 2024年4月2日

 残念なことに、落葉のコバノミツバツツジに対しても、ツツジだから玉物に刈り込むのが当然と考えている管理者がいます。しかも、翌年の花芽がつく夏以降に、コバノミツバツツジを刈り込み、花を咲かせない愚かな剪定をしている例もあります。ひどい場合は、株をここまで寸胴切りにしている某市の公園の例もあり、残念です。

1mぐらいで寸胴切りにした例
柴として利用するためにコバノミツバツツジを刈る例もあるが、花芽が着く前にしてほしい

 コバノミツバツツジは、基本的にあまり剪定する必要はないです。ただし、枝が絡まると、風雪で折れます。だから、葉全体に光が当たる環境をつくるために間引く剪定は、良いでしょう。大きく育つと、株の内側の葉は自然に枯れます。風通しを良くするために、この細い枝を透かすために折るのもよいでしょう。花が咲く直前に、邪魔になる枝を切り、生け花にすることもおススメします。また、蕾が硬い時期に雪で折れた枝でも、水につけておくと花が咲きます。

 剪定の目的は、日照の阻害や枝落ちによる道路や家屋の被害を守るためと、通風や採光が悪くなって木が病虫害になることを防ぎ、花や実の数や大きさを維持することです。だから、人がよく集まって通る場所はしっかりと剪定し、あまり人が入らない場所は放置することが基本です。さらに、樹形を美しく見せるために、刈り込みをします。

かさはら潮見の森 2022年4月10日

 かさはら潮見の森では、アカマツは樹高や枝張りを抑えるために枝先を切り詰め、ソヨゴ、イヌツゲなどの常緑樹は玉散らし仕立て、植えた園芸ツツジは玉物仕立て、サクラなどの花木は自然にほうき状に拡がる樹形を大切にしながら錯綜する不要な枝を除く、剪定をしています。

かさはら潮見の森 2022年4月10日

 そして、落葉のコバノミツバツツジは、園路の妨げになる枝以外は、ほぼ無剪定で、自由に暴れる樹形を大切に残しています。樹の特性を知り、人が集まりやすい場所のしつらえをわきまえた、適切な管理をしているのです。

かさはら潮見の森 2022年4月10日

コバノミツバツツジの剪定をまとめると、次の3点です。

  1. 自然樹形を大切にするので、基本的に切らない。

  2. 大きくなりすぎて切るときなどは、花が咲いた後、次の年の蕾がつく6月までに切る。

  3. 雪で折れた枝の活用も含めて、花が咲き始める前に切って、生け花にする。

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