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pinkのはなし

実生活がやっと落ち着いてきて、いや厳密には現在進行形で収束している段階ではあるけれども、そして新型なんちゃらは未だに収束の兆しもないけれども、とにかくつい先日まで灰色まみれだった日常にもようやく一筋の光が射してきたような心持ちです。そう、光が。光が……RAYが!

ということで、RAYが5/23にリリースする1stアルバム『Pink』が、サブスクで先行配信されました!イエーイ!
これがもう本当にすごくいいアルバムで、1日2周3周は聴いてます。テレワークの概念が存在しない異世界ファクトリーで晩から朝まで労働しているので全然聴き込めてないけど。十数曲入ってて全部いいアイドルのアルバムなんてそうそうない。マジでいい。

メンバーの内山結愛さんがnoteでいろんなアルバムのレビューを書いているので、それをリスペクトして全曲分の感想を書こうかなと思ってしまいました。シューゲイズは好きだけど全然詳しくはないし、音楽を専門として何かしてるわけでもないのでそのうち誰かから怒られそうな気がするけど……

01. Fading Lights
作詞・作曲・編曲:管梓 (For Tracy Hyde/エイプリルブルー)
このイントロを聴いた瞬間にアルバムの完成度が分かってしまう。(ちゃんとしたファンのひとたちがそうかは知らないけど)少なくとも自分が持っている「RAYのこういう雰囲気がすき、こういう曲が聴きたい、こういう存在であってほしい」みたいなイメージにドンピシャだった。サビのコーラスの綺麗さと歌詞が相まって涙が出る。”悲しみ疲れた時には 泉のように清らかに その美しさを映す鏡になってあげるわ”という温かい歌詞と、その体温を否定するような残酷なタイトルと、夢の中みたいな浮遊感のあるサウンドがめちゃめちゃ情緒に来る。アウトロは余韻を残しつつフェードアウトしていくのかな、と思っていたらラグなしで次の『バタフライエフェクト』のドラムに繋がるのも超エモい。最初からバチバチに聴かせにきてる。

02. バタフライエフェクト
作詞:管梓、作曲:管梓/みきれちゃん、編曲:みきれちゃん

この曲は昨年リリースのEP『Blue』にも収録されていて、たしか最初に発表されたオリジナル楽曲ではなかったかな……予兆めいたドラムから始まり、シンプルなコード進行とギターリフ、しっかりディストーションを利かせつつポップに落とし込んでいる、一番最初の曲として完璧すぎる曲だと思う(これで最初の曲じゃなかったら相当恥ずかしいな……)。改めて聴いてみると、前身グループ・・・・・・・・・の1stアルバム『         』の色がかなり出ているように思います。「アイドルである以上、音楽性にポップネスは不可欠なのではないか?」と常々考えているので、楽曲派アイドルの曲としてひとつの正解なのかもしれない、といっても過言ではないかもしれない。です。

03. 世界の終わりは君とふたりで
作詞・作曲・編曲:ハタユウスケ (cruyff in the bedroom)

これも『Blue』に収録されていた曲ですね。荒っぽいイントロと対照的な、悲しい歌詞が印象的。”ぐしゃぐしゃを流してくれたなら 泣き顔も残さずでいいのにね”のところの、半音ずつ下がっていくクリシェっぽい進行がすき。歌詞のストーリーに情緒的な意味を与える重要な部分における”恋をした 恋をして 失くした”という散文的なワードの配置が巧みだなあと思います。PVは後から公開されたもので、RAYのこれまでの記録のような構成になっていて、全然初期から追っかけてるわけでもないのにめちゃめちゃエモくなってしまいます。0:22、1:52、2:35、3:11、3:13、3:51あたりがすき。

04. Blue Monday
作詞:みきれちゃん、作曲・編曲:Kei Toriki
他の収録曲とは明らかに毛色もBPMも違う変態感強めの曲。ドラムンベースに括っていいのかなと思ったら、コンセプトはアイドルにIDM(Intelligence Dance Music)を躍らせる、というものらしい。IDMってなんだ、D'n'Bと別物なのかと調べてみたけどよくわからなかったし、なんならD'n'BのサブジャンルにもIntelligenceというものがあってIDMとはまた別物らしくて、本当にわからなくなって一旦置いておくことにした。ダンスミュージックの名を冠してはいるけれども、どう考えても踊るための曲じゃない。new orderのそれを意識しているかと思いきや電子音以外に共通項が全然なかった(もちろんインスピレーション的なものはあるかもしれないけど)。2:20あたりからの展開はライブの音圧で聴いたらえらいことになるだろうなと思う。定期的に現場に通ったりするのが難しい自分にとってはかなりポテンシャルを感じます。正直この曲はまだ受け取り方に悩んでる部分があるので、そのうちバシッとくる瞬間が来るのかなと思っています。だいぶ実験的なこの曲を4番目に配置した意味も。早く分かりたい……

05. ネモフィラ
作詞:みきれちゃん 作曲・編曲:teoremaa
前身グループ・・・・・・・・・の音源化されていなかった楽曲のカバー。アンビエントな音のなか、唐突に現れるボーカルにはっとする。急に2拍子が挟まって一瞬見失って、またボーカルが現れて、コーラスになって、また戻って……と、酩酊感というか、自分の五感を疑うほどの霧の中にいるような感覚。個人的にはこれは目を瞑って聴いていたい曲なので、ライブでやってほしいようなほしくないような複雑な感じ。
なんか相対的に短い感想になってるけど、すごく好きな曲です。

06. Meteor
作詞:Lilia Ijiri、作曲・編曲:Elliott Frazier (Ringo Deathstarr)

『Blue』収録曲3つのうちの残りの1曲。RAY楽曲の中でもかなりシューゲシューゲしている楽曲なのですが、これをいちばん最初のEPのいちばん最初に置くのは本当にどうかしてる(褒めてる)。ドラムやハットが走ったり歩いたり、サビで突然ファズが増したりと、結構忙しく展開している印象を受ける一方で、ボーカルは一貫して抑揚がなく気怠げで、そのギャップが独特の没入感を出しているように思います。小さい頃、熱を出した日に見た夢に近い感触があってクセになる。個人の感想です。
MVもめちゃくちゃすきです。元々、一度誘われて行った(本命グループとの対バンだったけど)RAYのライブで甲斐莉乃さんを見て、ビジュアルとパフォーマンスのギャップにやられてからファンになったのですが、(飲酒に纏わる部分も含めて)このMVの破滅的なイメージとの親和性が凄い。3:21~の、天使の羽のように見えるゴミ(?)も甲斐莉乃さんの表現の一部のような感じがして、好きなカットです。

07. 尊しあなたのすべてを
作詞・作曲・編曲:ハタユウスケ

アルバムのなかで一番好きな曲です。このサウンド、この歌詞、この声の組み合わせはちょっとずるい。ダイレクトに感情を揺さぶってきて、本当に泣きそうになってしまうので、好きすぎるがゆえに飛ばしてしまったりする。MVもずるい。雪国の車窓風景が流れていくだけで、メンバーの姿が一切映らない。映らないからこそ良い。会いに行くのか、別れの後なのか、会えないときなのか、何も教えてくれないし、何もわからないからこそ良い。

08. 星に願いを
作詞:みきれちゃん、作曲・編曲:Kei Toriki
6/8でしっとりエモく聴かせてくると思いきや暴れだす。メインのギターこそしっかり歪んでいるけれども、クリーンな部分の音作りといい、一息で駆け抜けるようなサビといい、独白パートといい、sora tob sakanaのようなポストロック的テイストを感じておもしろいなと思いました。その独白からラストまででまたエモい流れを取り戻すところも良い。いつか変拍子まみれの変態シューゲイズとかやってくれるのではないかと期待してしまいますね……。

09. no title
作詞:甲斐莉乃、作曲・編曲:みきれちゃん
甲斐莉乃さんの作詞曲! 詞のセンス、けっこう好きです……疾走感のある爽やかな楽曲になっていて、誰目線なのか分からないけど「良かった……」と思ってしまう。(いつも何かに傷ついているイメージがあるからかもしれない)
・・・・・・・・・の楽曲『サテライト』(後述します)に似て、懐かしさと切なさを内包したポップなロックサウンドがとても良い。どっちもみきれちゃんさん作曲なので個性として印象が似ちゃうことはあるのかなとは思うけど、こちらはシンセやパワーコードでリフを強調して曲全体の流れを保っているように感じますが、『サテライト』のほうはブリッジ部分のギミックでメリハリをつけて一気にサビに突入するという感じで、ざっと聴いた感じ似てるような曲でも聴かせ方を変えてるんだなあという、よく考えなくても当たり前のことを一人で再認識していました。

10. GENERATION
作詞・作曲・編曲:みきれちゃん
めちゃめちゃライブ映えしそうなストレートなポップパンク。ほんの一瞬だけアイドルとして存在してくれるアイドルと、その一瞬に立ち会えている観測者としての自分を表しているような歌詞がエモすぎる。実は”GENERATION!!”と叫ぶところがあって、めちゃくちゃ撮り直したのに全部カットされていた話が大好きです。ライブで聴きたい。

11. シルエット
作詞・作曲・編曲:Hiroyuki Imamura (The Florist)
長歌みたいに短い情景描写をぽつぽつと繋げていく表現が素敵。最初に聴いたときは曇り空みたいな曲だなあと思っていたけれど、何度か聴いて歌詞の情景が分かってくると、ああ雲の濃い満月の夜なのだなと思うようになった。もう1曲に1回のペースで言っているような気がするけど、エモい。月明かりの下で二人という、定番で鉄板とはいえ、やはりエモい。これ絶対に月見ルで見たいやつじゃん……。

12. オールニードイズラブ
作詞・作曲・編曲:みきれちゃん
タイトルにマッチしたキラキラなイントロ。Aメロ終わったあとの”ねぇ!”が好き。未だに誰がどの声か把握できてないけど、そのうち分かるようになればいいなと思う。間奏で一瞬8ビートになるところも好き。アイドルの本質は刹那的であるところにあるような気がしていて、ノイズやディストーション、不明瞭なボーカルのような要素が常にはらんでいる一種の憂いのようなものがあるからこそ、シューゲイズサウンドとアイドルは相性が良いのではないのかな、と考えたりした。こうして聴くと、キャッチーでポップな曲と、ちょっと攻めてみた曲の比率や配置もすごく上手だなと思います。アルバムの最初と最後のオリジナル曲を、”愛”というコンセプトでリンクさせつつ、曲調で対比させているのも綺麗。

13. スライド
作詞・作曲・編曲:管梓
14. サテライト
作詞・編曲:みきれちゃん, ジム、作曲:みきれちゃん
どちらも・・・・・・・・・『スライド』『サテライト』のアレンジカバー。原曲がまずめちゃくちゃ良い曲だというのに、RAYバージョンのアレンジで違う受け取り方ができるというのは嬉しい。『スライド』のほうは原曲よりリバーブやらのエフェクトが効いていて浮遊感が爆発しています。曲の雰囲気がかなり変わっているのでどちらも甲乙つけがたいですが、しいて言うならRAY版(サングラスかよ)のほうが好きかなあ。『サテライト』は原曲より歪みが増してたりアウトロが違うくらいでそこまで大きく変わってはないのかな……?”バイバーイ!”の言い方は完全に原曲のほうが好きですが。2曲とも本当に良い曲だし、オリジナルのオリジナルをこの目と耳で体感できなかったのが本当に心残りでしかない。

ということで14曲ぜんぶ感想を書きました。意外といけた。一気にいけた。曲から曲の流れとかまで含めてすごくいいアルバム。サブスクでいつでも聴けてしまうけど、リリースされたら音源を実際に買おうと思います。棚に飾っておきたい。バンドが並ぶなかにしれっと並べておいて、女性ボーカルのシューゲイズとしてしれっと勧めたりしてみたい。ささやかな野望。

さて、内山さんリスペクトなどと称してこれを書いていたというのに、見返してみると甲斐さんのことばっかり言及している。自分で思っているよりも甲斐莉乃さんのこと、好きかもしれない。参ったな。

6月になればnuanceの新しいアルバムがリリースされるので、次回はそれでするかもしれない。その前に代代代のアルバムが出るので、万が一やる気になってしまったときのためにブレイクコアの勉強をしておかねばと思います……まあ無職になるし余裕かな……。