マガジンのカバー画像

一次創作小説まとめ・ウィズ、ナイトスケープ

13
一次創作小説まとめ
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

ウィズ、ナイトスケープ キャラクター設定

ウィズ、ナイトスケープ CharacterDesign AIイラスト 外山香奈子 23歳 一人称わたし 明るく物怖じしない性格。ソフィーとバディを組む。  自分を転送するタイプの転送魔法が得意。合計自分の体重までに限る。 正確に位置を把握していない場所を指定すると、予期せぬ事態に陥る。 趣味はウィンドウショッピングと、甘いものを食べに行くこと。 ソフィー・コスタ 30歳 一人称アタシ 明るく快活、男勝りの性格。香奈子とバディを組む。 雷を操る魔法が得意。視認できればなんで

ウィズ、ナイトスケープ4 鯨日和

 連日報道がかかるほど、その連続爆発事件は起こっていた。  空き地にぽつん、と置かれている袋――それも、ぱんぱんに膨らんだビニール袋が放置されているから、と触れた瞬間、猛烈な異臭とともに爆発するのだ。中に釘のような危険物が入っていないだけマシなのだが、その爆発の威力は十二分に人を傷つけることが出来るものだ。  警察も犯人を特定するために懸命に捜査を続けているのだが、異臭を伴った爆発騒ぎは不定期に、それでもたしかに増えていた。 「ヒサラの反応はあるってことは魔法を使ってる、っ

ウィズ、ナイトスケープ3_2 デビルオブスライミーズ

「この度は本当にすいませんでした」  そう言うと、詫びのラーメンです、と瀬田は続ける。そんな彼に、いいねえ、とソフィーは指笛を鳴らし、香奈子はトッピングマシマシにしていいですか、と躊躇う事なく尋ねる。俺の財布は気にして欲しいけど気にしなくていいよ、と苦しそうな顔をする瀬田をよそに、ニクラスはメニュー表を見ては、一番高いものに一番高いトッピングつけますかね、とケロリとして言う。 「いやー、俺が全面的に悪いんですけど、あんまり高いのはやめてよ!?」 「いや、ラーメン屋で高いの

ウィズ、ナイトスケープ 3_1 デビルオブスライミーズ

「で、入り口のこの音はなんだい」 「めっちゃ体当たりしてそうな音ですよねえ」 「多分なんだけど、ゴミ処理スライムが突破しようとしてる音……かな」 「おそらくは、そうでしょうね」  ソフィーと香奈子が到着した時、ニクラスと瀬田は入り口の重たい金属扉を背もたれにしていた。  もずん、どすん、と鈍く聞こえてくる音に、ここから出られる可能性があるって知ってるんだねえ、とソフィーはのんびりと感想を言う。そんな彼女に、スライムに知性があるみたいなこと言わないでよ、とうぇっ、と舌を出して

ウィズ、ナイトスケープ 3 デビルオブスライミーズ

「あれ? ニクラスさんに瀬田さんもお出かけですか?」 「そうなの。今日は俺たちが出番らしくて」 「あまりないんですけどね。どうしても、瀬田くんの力が立候補したので」  不思議そうに小首を傾げる香奈子に、瀬田はみてみて、と重ね合わせた自分の両手を開く。すると粘着テープを剥がした時のような、粘りのある液体が彼の手からべりべりと音を立てて出てくる。  べりべりと音を立てているそれに、痛くないんですか、と香奈子は思わず尋ねてしまう。痛くはないし、粘りもないよと答えた彼は、手から溢れ

ウィズ、ナイトスケープ 2_2 キャンディ・ラビットの叛逆

 現場であるオフィスからほど近い――それこそ、徒歩五分ほどのコンビニエンスストアに到着すると、すでにそこには犯人が確保された光景が広がっていた。  ソフィーと香奈子が現場の責任者を探して話を聞こうとしていると、後ろから声をかけられる。そこにいたのはすらり、と背が高い紺色のスーツを身に纏った男性だった。黒髪をオールバックにまとめている彼は、フレームレスのメガネ越しに、狐のように細い目を細めて、ご足労かけました、と謝罪してくる。香奈子が誰だこの人、と思っている間に、ソフィーが顔馴

ウィズ、ナイトスケープ 2_1 キャンディ・ラビットの叛逆

 あ、と思い出したように口を開いた香奈子は、お茶で喉を潤すと思い出したことを口にする。 「そういや、ニクラスさんにボスは強いって言われたんですけど、どのぐらい強いんです?」 「それは……出力を指しているのかしら。それとも、性能のほうだったのかしら」 「あー……どっちのことも言ってなかったような?」 「それなら、全部をひっくるめて、かしら? たしかに、強いけれど……」 「破壊活動なら、誰にも劣るつもりはないが」 「おお……! 物騒でおっかねぇ発言……!」  そのうちボスが出

ウィズ、ナイトスケープ 2 キャンディ・ラビットの叛逆

「うあっ!」 「そうだね。コスタくんが言うように、真上への転送は何も知らない奇襲にはいいけど」 「あっだだだだだ!」 「転送系魔法が得意だってバレたら、対策されてしまうから、そこがまだまだ詰めが甘いなあって思うよ」 「っちょ、ちょ、ニクラスさん!」 「どうしたんだい?」 「腕ちぎれます! 後ろにぶちって! ちぎれますって!」 「体が硬いんじゃないかなぁ、それは」 「ぜってぇ違いますよぉ!」  ニクラスの背後を取ろうとした香奈子は、転送してみたはいいが、そのことを予想していた

ウィズ、ナイトスケープ 1_4 レインボーローズの蕾

 可燃性の液体特有の鼻につく臭いに眉を顰めながら、ソフィーはとん、とコンクリートの床に足をつける。どてん、とソフィーの後ろで音がしたから後ろに目線を向けると、そこには香奈子が着地に失敗していた。慌てて立ち上がった彼女と、ほとんど同時に、部屋にいた男が慌てたように二人に向けてライターを向ける。それは百円ショップでも取り扱っている、使い捨ての、簡易的な火炎魔法が込められたものだ。普通であれば、ごくごく小さな炎を生み出すしかできないそれでも、これだけ可燃性の気体や液体で塗れている場

ウィズ、ナイトスケープ 1_3 レインボーローズの蕾

 翌朝、出勤早々にヨハンから呼び出されるソフィーと香奈子。なんだろうか、とミーティングルームに向かうと、無言で一枚の紙を渡される。ソフィーがそれを受け取り、香奈子が覗き込む。そこには男の顔写真と生育歴。得意とする魔法に職業が記載されている、個人情報の塊だった。いいとこの大学だー、と香奈子が感心しながら読んでいると、昨日の夕飯時に速報が流されていた火災についても記載されている。 「この人がやったんですか? 昨日の火災」 「魔法的痕跡と監視カメラ、ヒサラ残渣調査の結果割り出され

1_2 レインボーローズの蕾

 事務仕事と関連各所への挨拶回り――これはラファエルが付き合ってくれた――を済ませ、交代で出社してきたメンバーと入れ替わりで香奈子とソフィーは勤怠タイムカードを打刻する。まずアンタの荷物を片付けないとね、と言ったソフィーに、先日まで荷物をぎっちぎちに入れた段ボールとまた格闘するのか、と香奈子は大きなため息を吐く。そんな彼女にソフィーは、幸せがウサギみたいに逃げ出しそうなため息だねえ、と笑う。 「だって、段ボールたくさん詰めたんですよ。服とか、服とか」 「服ばっかりじゃん。ま

ウィズ、ナイトスケープ 1_1 レインボーローズの蕾

 昼休み、ソフィーは社食よりも安くて美味い店があると香奈子とともに外に出ていた。そこは香奈子もよく利用している――それこそ、今日の朝食はそこの唐揚げ定食(普通盛り)にした店だった。店の夫婦は、ソフィーと香奈子が二人揃って来たことに驚き、香奈子とソフィーは二人ともこの店を利用していることに驚いた。 「なんだい。アンタもここの店使ってたのかい」 「そうですよぉ。普段、だいたい晩ご飯とかここで食べちゃいます。安くて量があっておいしくって!」 「わっかるわ、それ。寮生活だとさ、食事

ウィズ、ナイトスケープ - 1レインボーローズの蕾

「新しく配属された、外山香奈子です! 得意な魔法は転送魔法、自分を転送させるタイプの魔法で、同行者は総合計自分の体重までです!」  ぱちぱち、とまばらに拍手が上がる。がちがちに緊張していた香奈子は、とりあえず受け入れてもらえたことに安堵し、ふう、と息を吐く。  茶色に染めた腰まである髪を緩く三つ編みにした、ややぽっちゃりとした体型の彼女は、好きで太ったわけではない。無論、脂肪のうちにしっかりと筋肉が潜んでいる。ただ、彼女が得意とする魔法が体重があればあるだけ、同行させる人や