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「発明者」になる人/ならない人|発明者の認定基準

新規発明の届出を受けた際に、発明者の記載内容に違和感を感じるケースはありませんか? 例えば、多人数が記載されているので詳しく聞いてみると、研究チームの大半のメンバーだったり…。
このような場合、知財担当者としては、「発明者」が正しく記載されているか確認したほうがよいと思います。発明者の認定に関する事項について、まとめておきます。


発明者とは

発明における技術的思想の創作行為に現実に加担した者を意味すると解される。

発明者に該当しない例

①単なる管理者
例えば、研究チームのマネージャーが含まれている場合には、本発明の具体的着想に対する指示・示唆を与えていたのかを確認したほうがいい。

②単なる補助者
例えば、テーマを担当しているとは考えにくい若手メンバーが含まれている場合には、単なる実験補助や資料作成を担当していただけではないかを確認したほうがいい。

③単なる後援者
企業だとあまり考えにくいかもしれないが、発明提案が少ない部門だと、管理者でも補助者でもないメンバーであっても、「せっかくの機会なので、この案件に少しでも関わりがあった人を全員入れておこう」というケースがありえるので要注意。

「発明」とは「自然法則を利用した技術的創作のうち高度のもの」をいうから(特許法2条1項)、真の発明者(共同発明者)といえるためには、当該発明における技術的思想の創作行為に現実に加担したことが必要である。したがって、①発明者に対して一般的管理をしたにすぎないもの(単なる管理者)、例えば、具体的着想を示さずに、単に通常の研究テーマを与えたり、発明の過程において単に一般的な指導を与えたり、課題の解決のための抽象的助言を与えたに過ぎない者、②発明者の指示に従い、補助したに過ぎない者(単なる補助者)、例えば、単にデータをまとめたり、文書を作成したり、実験を行ったに過ぎない者、③発明者による発明の完成を援助したに過ぎない者(単なる後援者)、例えば、発明者に資金を提供したり、設備利用の便宜を与えたに過ぎない者等は、技術的思想の創作行為に現実に加担したとは言えないから、共同発明者ということはできない。

東京地判平成17年9月13日(平成16年(ワ)14321号

発明者の認定基準

発明の成立過程は、着想の提供着想の具体化の2段階に分けられる。各段階について、実質的な協力の有無を次のように判断する。

提供した着想が新しい場合は、その着想者は発明者である。
ただし、着想者が着想を具体化することなく公表し、その後別人がこれを具体化して発明を完成させた場合には、着想者は共同発明者ではない。両者間には、一体的・連続的な協力関係がないためである。

新着想を具体化した者は、その具体化が当業者にとって自明程度のことに属さない限り、共同発明者である。

発明者が正しく認定されていない場合

特許を受ける権利を会社が承継できていなければ、当該発明の特許を受ける権利は、権利承継が漏れた発明者と会社が共有することとなり、共同で出願しなければならない(38条)。これに違反した出願は、拒絶理由(49条7号)無効理由(123条1項2号)を有することになる。
なお、無効審判の請求人については、特許を受ける権利を有する者に限られる(123条2項)。

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