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「最後のキャラバンサライ(オデュッセイア)」@シアターイースト 東京芸術祭2022 World Best Play Viewing(太陽劇団)2022.10.08

今回の東京芸術祭2022では来日公演がかなわなかった作品を中心に「World Best Play Viewing」として上映会が行われました。期間は、10月5日~9日まで。上映作品は下記の3作品です。
 ☆「モリエール」@太陽劇団
 ☆「最後のキャラバンサライ(オデュッセイア)」@太陽劇団
 ☆「ローマ悲劇」@ITA

私は「ローマ悲劇」と「オデュッセイア」で悩んだのですが、どちらも上演時間が5時間前後あり(笑)他の作品の観劇予定との兼ね合いで、以前から一度見てみたかった太陽劇団の「オデュッセイア」を拝見しました。

最初に申し上げると、演劇とか映像とか、そういうものとしての価値観以前に、私には「プロパガンダ映像」に感じられてしまったことがとても残念でもあり、強く違和感を覚えた作品でした。
以下、個人の感想です。


主に 1990年代後半~2000年前半頃かと思われる、中近東近郊における迫害と難民問題を当事者のインタビューを元に戯曲化されたもののようです。
私の第一印象は、たとえそれが純粋な善意であったり弱者とされる方々への共感や手助けであろうとも、どちらか一方のみの訴えを元に作品を作ることは、非常に偏った視点から描かれた作品であり、一種のプロパガンダ映像作品となりかねないと思いました。

難民の方々が不当な被害を受けられたことや、実際にはこれ以上に悲惨な現実もあったのかとおもうと、演劇で世界に問うこと自体はとても意義があるとは思うんです。
ただ、迫害を行った側にも被害の歴史があるのだろうし、難民受入に消極的な国らの事情や国益もあるだろうことは想像に難くなく、そちら側からの視点でも問題を描こうとしないこの作品に強い違和感を感じました。

演劇として、こうした根深い問題を扱う時に、どちらか片一方の主義主張だけを「正」であり「事実」だとしてしまうことは、とても危険な香りがして、演劇として優れているかどうか?という以前に、その点が非常に気になってしまうのです。演者さんの中には巧みな方もいらしゃったし、5時間近い時間を魅せてしまうものはあっただけに、その偏りが残念でした。

演劇や映像が生まれて久しいですが、民衆の感情を誘導しやす力があるのは周知の事実でしょうし、間違った使い方をすれは(特にそれが意図的であれば猶更)新たな民族の争いや分断を招きかねませんよね。だからこそ、そうあってはならないと私は思います。