itsuka mita yume no hanashi

itsuka mita yume no hanashi

ダムの底に沈んだ僕の
僕等の想い出の町並み
君の居ない町だったけど
僕の確かな居場所だった

其の知らせは突然届いた
知らなかったのは僕だけで
実はもう大分昔に
判っていたことの様だった

僕は歌う景色を失くす
君との想い出さえ失くす
そんな気がして途方に呉れ
青ざめた顔で呟いた

「君の笑顔が恋しい」
「君の泣き顔さえも」

「もう思い出せないの?」
「厭だよ」

「まだ僕は…」

想い出の場所を巡り歩く
もう殆ど残っちゃないけど
君の居ない暮らしに慣れて
其れを悔いることも忘れて

僕は今更頬を濡らし
僕等の町の総てを愛でる
「消えゆく夢」伝えてくれた
其の言葉の意味をやっと知る

(そして、町は沈む)
(ふかく、ふかく、沈む)

「君の笑顔が恋しい」
「君の泣き顔さえも」

「もう思い出せないよ」
「厭だよ」

「まだ僕は…」

ダムの堤防に独り
腰を下ろした夕方

沈む陽に目が眩んで
水の底
覗けもしない

君が帰る場所が無いよ
僕が君を待つ場所も無い
月夜がやがて訪れる
僕の涙は止まないよ

足を揺らし小石を投げ
波紋揺れる満月を見て
「消えゆく夢」伝えてくれた
其の言葉の意味をやっと知る

そんな時に聞き慣れた
呼びかける声が確かにしたんだ
君の手は僕の頭を
そっと優しく撫でていた

「どれだけ待ったって思っているんだい」

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