見出し画像

EV先進事例:国レベル(2)

2)中国🇨🇳

「EV先進国」としてはノルウェーが他を圧倒する筆頭国で、オランダが少し離れて後に続くのだが、残りは殆ど全て欧州諸国である(Decarbonizing road transport by 2050)。ただ、その中で目を引く欧州以外の国がある。それが中国である。

 中国が「新エネルギー車(New Energy Program:NEV)」に対する補助金制度を導入したのは2013年のことだが、その時点での全新車販売に占めるNEVの割合は僅か1%だったという(Zhinan Chen (California-China Climate Institute) and Hui He, BLOG : HOW WILL THE DUAL-CREDIT POLICY HELP CHINA BOOST NEW ENERGY VEHICLE GROWTH?, FEBRUARY 10, 2022)。ちなみに中国のNEVの定義には、バッテリー車、水素燃料電池車、プラグインハイブリッド車が含まれる。ところが下図を見ればわかる通り、2021年の時点でNEVの同割合は15.5%にまで達している。特に2020年からの伸びが急激で、一気に国家目標値を5%以上も上回っている。

 こうした飛躍的なNEV普及率は、各種の取り組み(IEA, Global EV Policy Explorer)に伴う相乗効果が大きいとされるが、たとえば重要なものには燃費効率規制がある(自動車に関して2025年までに4.6 L/100 km (WLTP) または4.0 L/100km(NEDC))。これは後で参照する中国独自の政策の前提をなす制度である。近年この基準は段階的に厳格化されている。
 また、具体的な目標を設定している点からも、中国の本気度が窺える。自動車の電動化については、2025年までに70%(うち40%をNEV)に、2035年には100%(そのうちの50%をNEV、かつNEV中の95%をBEV)にすることを目標に掲げている。 

 これら各種の取り組みの中でも、中国のEV政策の主軸をなすのが「デュアル・クレジット政策(Dual-credit Policy)」と呼ばれるものである。これはEVクレジット政策を逸早く導入し、またそのことにより有名になったカリフォルニアの政策を元に考案されたものである。その名が示すとおり、2つのクレジット制度、すなわちNEVクレジットとCAFCクレジットから構成される仕組みである。
 NEVクレジット制度は、中国国内のOEMに、新車販売台数に対して一定割合のNEV(LDVs)の製造または輸入を義務付けるものである。具体的には、2020年までは12%の義務付け、その後2021年には14%、2022年には16%、2023年には18%と段階的に引き上げられている。
 同時に、余剰のNEVクレジットが生じた場合には、業者はそれを年間燃料消費クレジット(corporate average fuel consumption (CAFC) credit)の不足分に割り当てることが認められる。このことにより、自動車に対する既存の燃費効率規制に柔軟性が与えられる。このような仕組みに同政策の名称は由来する。(以上は、IEA, Global EV Policy ExplorerおよびICCT, CHINA’S NEW ENERGY VEHICLE MANDATE POLICY (FINAL RULE), January 2018を参照。)
 この制度が、近年の中国におけるEVの急激な普及拡大に寄与しているということになる。ただし、それは単に制度が設計されたことのみによるという訳ではなさそうである。というのも、それに加えて、別の条件が大きく関わっていると考えざるを得ないからである。それが「テスラ効果」と呼びうる事態である。ともあれ、ここでは中国の先進的な取り組みの概要を把握することに留めておこう。

関連記事
 「EVの社会的効果
 「EVの脱炭素性能
 「EVの脱炭素性能(2)
 「EVの脱炭素性能(2)その2
 「EVの脱炭素性能(3)
    「EV先進事例:国レベル(1)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?