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濡れた道路の向こう側にあるネオンの街
雨の日はいい。
嵐の日もいい。以前、台風が来たときに、私はちょうど帰り道を15分程度歩かなくてはならなかった。風もごうごうと吹き荒れているため、持っていたビニール傘は無用の長物と化した。それで私は、素っ裸で進まなくてはならなくなった。嵐の前では、傘もレインコートもない者は皆素っ裸なのである。
全身びしゃびしゃになって、やっと家に辿り着いた。一目散に風呂に向かい、熱いシャワーを浴びたとき、おお、まさかこんなふうに快感を得られるとは思いもしなかった。
帰る家があり、なんと家の風呂では熱いお湯が出て、冷えた身体を瞬く間に包み込んでくれる。風呂から出たら清潔な衣服もある。私の生命を脅かすものは何もない。並のセックスより確実に快感を得られた。並のセックスって何だ?
その後、スマホが壊れてしまったことに気づいたので、できればもう嵐の中でずぶ濡れになりたくはないのだが、悪くない体験ではあった。
そうではなくて、今日書きたかったのは小雨の話である。
小雨が降って、しっとり道路が濡れると、夜、辺りが暗くなったとき道路に信号機や街灯の光が反射することがあると思う。これが好きだ。というか、好きじゃない人はそんなにいないと思うけど……。
家の近くにほどほどの大きさの交差点がある。通行量もほどほどなので、空間を広く感じる。赤や白や青が、濡れた道路に反射してぼんやりと光る。
道路を隔てた向こう側に、別の街があるみたいだ。向こうの街では、どんな人が暮らしてどんな出来事が起こっているのだろう。
光の輪郭が曖昧な街では、すべてのものの境界線があやふやで、互いに溶け合っているかもしれない。個というものはなく干渉し合う街。そういう街では苦悩や不安の種も、争いでさえも溶けて消えていくのかも……。
いつもは信号機が赤から青に変わると、さっさと横断歩道を渡り切るのだが、向こう側のネオン街を観察するために一度青信号期間を見送る。
雨の日は、ここではない別の世界を手軽に垣間見ることができるので、いい。
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