『せんべいむしくん』 2023/08/01 日記

”せんべいむしくん”はいつからか私のバイト先に現れたマスコット的存在である。
名前の通りペシャンコにされた虫のことで、ペシャンコの度合いがあまりにも見事な物だから、僭越ながら”せんべいむし”と名前を付けさせていただいた。
彼の住処(許可をもらっていないので違法入居者だ)は、お店の壁と男子トイレのドアとを繋ぐ3つの蝶番の上から一番目と二番目の間だ。

始めて出会ったのはバイトを始めて3日が経った頃だったか。閉め作業のトイレ掃除を教えてもらっているときだ。店長がトイレの扉を開いたとき、彼はそこにいた。始めて見たときは思わず「ひぇっ」という声が出かけた。真っ白い壁に黒と黄色の印、警告だ!と言っている(なんの?)ようにも見える。しかしびっくりしたのはその一回だけで、次第に「やぁ、元気しているかい」と声を掛ける(心の中で)ほどに親しくなっていった。

ところで一体全体、”せんべいむしくん”は何者なのか。私より前から住んでいたはずなので、一年以上はお店にいることになる。
なのに誰一人として言及しないし、クレームも入ったことが無い。気づいていないからか、下らなさすぎるからか。きっと後者だろう。
私はといえば、他クルーに聞きたくてウズウズしている。「トイレのせんべいむしくんってなんなんですか」と。”せんべいむしくん”の話題で盛り上がりたい。でも聞けない。仮に聞いたとして、一時話に花が咲いたとしても、”せんべいむしくん”が撤去されてしまったら元も子もない。一年間の友情を無下にされるのはごめんなのだ。

そんな”せんべいむしくん”には何か特別なパワーがある気がする。オーラなのかなんなのか・・・。不思議な力は閉め作業で会う度に元気をくれる。そんなささやかな安らぎを壊したくはない。一方的ではあるが住処を撤去されないように祈るばかりである。いや、どうしようもない時は戦闘も辞さない。粉骨砕身で挑むつもりだ。

進展があればまた書こうと思う。


今日はこのくらいで。
おやすみなさい、さようなら。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?