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ポジティブモンスターに物申す

ポジティブでいることはとてもいいことだ。
いつも前向きな気持ちでいられたらどんなにいいだろう。
きっと万事が上手くいく。
というより、たとえ上手くいかないことが発生しても「次はきっと上手くいく」というポジティブマインドフィルターを濾過させ、自己肯定感も下げずに前へ前へと進んでいけるだろう。
本物の前向きな人というのは、たとえ失敗や挫折があったとしても、心折れることなく進んでいける人のことを言うのだろう。

しかしだ。
このポジティブマインド野郎、たまに自分のそれを他人の喉元にもぐいと捩じ込んでくるタイプのヤツがいる。

何事も押し付けは良くない。
そんなことは誰でも知っている。
もちろんポジマイ野郎にもそんなつもりはてんでなく、ただ励ましたくて、元気になってほしくて、良かれと思って。
地面にめり込む寸前の人にでも、容赦なくスマイル豪速球を投げつける。

私はこの類の人間が苦手だ。
悲しいときや落ち込んでいるとき、あまりにも前向きな言葉をかけられると余計に沈んでしまう。
まともに食らったら複雑骨折だ。
何も言わずにただただ寄り添って、甘く優しい言葉をかけていてほしい、そんな夜もある。

自分の中に渦巻くあれこれ(大抵黒っぽい色をしている)を整理するのに必要な時間は人それぞれだ。
人より多めにその時間を要する私のような人間には、例えば落ち込むことがあると、しばらく底なしの沼にズブズブに沈み込む時間が必要なのだ。
何も考えたくない、誰の声も聞きたくない、学校も仕事も友達も恋人も、なんもかんも嫌だひとりにしてくれぇ〜っっって。
布団に丸まってジッと時がすぎるのを待つ。泣いたり喚いたりしながら。
心当たりのある方はお仲間ですな。

で、もう無理、これ以上沈めない、息が苦しいよ〜っとなったところでフワッと急に浮かんできたりする。
浮かんでくると言うか、どうでも良くなると言うか。
沈むだけ沈んだら、なんか、飽きたわ!と突然方向転換したり。

しかしポジティブモンスターにはこの「沼にズブる時間」はもちろん不要。
次!次!次!と進んでゆくその光も追いつけぬ切り替えの速さ、素直に心から羨ましい。
ただポジモンよ、私には私の時間の進め方があるから、しばらくそっとしておいてくれ。
そしたらいつか勝手にぷかっと浮かんでくるからさ。

なんて言いつつ、その前向きさに救われていたりするのも事実。
綺麗事ばかりでは生きいけないらしい世の中。
ならば尚更、可能な限りは綺麗なものに触れていたい。
そんなにすぐに前向きにはなれないし、そのスピード感にもついてはいけないけれど。
ぴっかりの太陽のような明るさは、地球を照らし、月を光らせ、植物の光合成を促し、洗濯物も乾かす。
つまり、ポジティブモンスターなしに我々は文明を築くことはなく、繁栄することもなかった。

えっと、なんの話だったのでしょうか。
そう、これは熱烈なラブレターなのでした。
ポジモンさん、どうか私のそばにいてください。

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