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#12 マイ・ディア・ウェイトレス

以前、「マイ・ディア・カウンセラー」を投稿したのですが、「マイ・ディア…」というフレーズは優しい感じがしてとてもいいですね。今日は第二弾としてマイ・ディア・ウェイトレス、お世話になったウェイトレスさんについて書きたいと思います。最近は女性を示す “-tress” という接尾辞のついた名詞を使うことが減りましたが、ここではあえて使います。


2年前の2021年、社会人大学院生として意気揚々と立教大学に入学しました。昔通った茨城県の筑波大学とは異なる都市型キャンパスはこぢんまりとしていて美しく、100年以上の歴史のあるチャペルと自分の通う近代的な建物のコントラストを楽しんでいました。しかしそんなキャンパスライフにも災難が降りかかりました。入学後わずか3週間で、左足首を骨折してしまったのです。

翌日から仕事も大学の授業もすべてオンラインに。すぐに手術を受け、左足にはチタン製のプレート1枚とボルトがなんと7本!埋め込まれました。病院ではいろいろと配慮してもらい、ベッド上のテーブルで会社の仕事をして、夜は大学院の授業を受けました。しかし問題は退院後でした。妻が仕事に出てしまうと、両方に松葉杖をついているので、食事も一苦労です。

スーパーで食材を買ってきて料理したり、コンビニエンスストアでお弁当を買ってきて食べたりというのは難しいということで、昼は自宅近くのファミレスへ行くことにしました。サコッシュを斜めがけにして店に入り、広めの席に座ります。心配していたのは、「お水はどうしよう?」でした。そのファミレスではお水やドリンクバーはセルフサービスなので、頼んでも「当店はお水はセルフサービスになっております」と言われちゃうのかな、と心配していました。それでも食事を注文し、勇気をふりしぼって(少し大袈裟ですが)お願いしました。

すみません、両方松葉杖なので水を取りに行けません。お水を持ってきていただけますか?何度もお願いするのは悪いので、2つお願いできると嬉しいです。

するとそのウェイトレスさんは快く、

いいですよ。お水2つですね。氷は入れますか?

と聞いてくれました。氷はなしでと答えると、すぐに持ってきてくれ、問題なく食事をして帰宅しました。


自宅から一番近い飲食店がそのファミレスなので(松葉杖でも5分ほど)、翌日も自然と足が向きました。今日もお水持ってきてもらえるかな…と思って店に入り、座ってメニューを眺めていると、視界に昨日と同じウェイトレスさんが入ってきました。まだ何も頼んでいませんが、手にお水を持っています。

お水2つ、氷なしでしたね(スマイルつき ^^)

まるでドラマみたいだ、と感動しつつお礼を言い、その日はピザを頼んだのを覚えています。するとピザを持ってきてくれる時には、

ピザなので、タバスコも持ってきました!(さらにスマイル ^^)

※本来はタバスコもセルフサービス

おお、「まるで新海誠作品みたいな展開だ」と興奮しました。その夜、ファミレスの「お客様ご意見センター」サイトに彼女の名前と共に感謝のコメントを書き込んだのは言うまでもありません。その後も毎日お水を持ってきてくれると同時に一言二言交わすのが楽しみになり、松葉杖が外れるまで、平日はほぼ毎日通いました。彼女のおかげで、松葉杖をついていた期間は「不自由な期間」ではなく、楽しい思い出となりました。実はタバスコは好きではなかったのですが、その日以来ピザには必ず使うようになりました。


ウェイトレスが印象的な映画といえば、ニコラス・ケイジとブリジット・フォンダ主演の1994年の映画 “It Could Happen to You”(邦題『あなたに降る夢』)が大好きです。宝くじで4億円を当てた警官がウェイトレスにその半額、2億円のチップを渡すストーリーで、なんと実話を元に作られた映画です。映画の予告編がありました。

この映画で何より素敵なのはブリジット・フォンダ演じるコーヒーショップのウェイトレスで、この映画は何十回も観てセリフも一緒に言えるほどです。そして映画の中のウェイトレス、イボンヌ(ブリジット・フォンダ)はファミレスのその彼女とぴったり重なります。この映画のテーマ曲のフランク・シナトラ “Young at Heart” の次の歌詞も印象的でした。

Fairytales can come true, it can happen to you, if you’re young at heart.
夢のような話はちゃんと起こる、心若ければ。

あの頃彼女が毎日笑顔でお水を持ってきてくれなかったら、大学院の勉強は上手くいっていなかったかもしれない、ドイツ行きの一部は彼女のおかげかもしれない、そう思うのです。出発前にもう一度お店に行って、お礼を言おうと思います。

今日も読んでくださって、ありがとうございました☕️
(2023年7月17日)


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