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いきる

「この木も生きている」

そんなふうに言われ ぺちぺちと触られる

わたしは100年ちょっと生きているらしい

生きている そう 生きている

まだまだわたしが小さき頃 枝をへし折られたり

葉をむしられたり 皮をはがされたり

そういうことをやられました

でも 大きくなった頃 

「素晴らしい大きな木だ」 と言われてから

枝も葉も皮も大切にされ 側に人が寄らなくなった

素晴らしいなんて 本当のところは違うのですが

人はありもしない崇高な心をわたしに与え

ありもしないわたしの気配に畏怖の念を送る

ただわたしは生きている 何も変わらず生きている

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