見出し画像

コロナ下の日本での入国手続きが残念すぎた話

ねこはうす通信 第2号」という同人誌に寄稿させてもらった原稿の転載です。
500円で他の記事も読めるので良かったら買ってくださいませ。

↓↓↓

2021年の3月まで仕事でミャンマーに滞在していたが、2月に軍事クーデターが発生して、あまりにも不穏な雰囲気になったので、3月19日に日本に帰国した。
その際の日本の入国手続きがあまりにも酷いと思ったので、個人の感想として書き残しておく。

プロローグ、ミャンマーからの脱出

クーデター下のミャンマーからの出国もかなり大変だった。
今回書く内容とは関係がないけど、これはこれで面白かったのであったことを列挙。

- 航空券はANAの予約サイトやANAのサポートデスクでは取得できない
- そもそもANAの定期便は飛んでない
- だいぶ先の定期便は予約できるので、とりあえずその内容で予約して、現地のANAの担当者に振り替えてもらう
- 日本への入国には、搭乗前にPCR検査が必要だけど、クーデターで病院に行けないので検査はできない
- 特例としてPCR検査なしで入国できるような措置が取られた
- ただし隔離ホテルでの3日の隔離が義務付けられる
- ミャンマーではインターネットの接続が毎日止められており、朝の空港ではチェックインシステムが使えなかった
- 手作業でチェックイン
- ラウンジでもインターネットは使えず、エアコンもあまり効いておらず暑い
- 離陸後に機内Wi-Fiに繋がったときには本当にホッとした
- クーデターにより空港の機能が麻痺していて、空港で補給はできない
- 食料の補給ができないので温かいご飯はなし
- 燃料補給もできないので、那覇で一度着陸して1時間ほど給油タイム
- 那覇で食料も補給されるかと思ったけどちゃんとしたご飯は配られず
- スナックが配られたけどハラペコすぎるのでCAさんにご飯ないの?、と聞いたらカップラーメンはもらえた

そんなこんなでいろいろバタバタしたけれど、無事に成田に着陸したときには本当に安心したよ。
安全な国というのは本当に良い。

成田空港での手続き

さて成田空港に着陸してからが本題。

まずは機内でいくつか書類を書いておく必要がある
手書きで書かなきゃいけないのが面倒。
複数枚書くのも面倒だなあ、と思ったけど、これはまだまだ序の口だった。

着陸後にしばらく待った後に指示に従って順番に飛行機から降りる。
空港設備や空港スタッフはそれほどちゃんとウイルス対策をしてる感じではない。
スタッフがマスクとフェイスガードと手袋をしてるぐらい。
ミャンマーの検疫ではありとあらゆるところに防護シートが貼ってあったし、消毒は徹底されていたし、担当者は防護服を着ていたのに、日本はこんなに適当で良いのか?、と正直思った。

ターミナルまでバスで移動後、受付のようなところに通されて、そこでパスポートや搭乗券等のチェック。
マニュアル等がごっそり入ったクリアファイルを渡される。

その後は唾液接種。
ブースに貼ってある梅干しの写真をみながら唾液を出す。

唾液接種後は検査結果を待つための待機場所へ移動。
待機場所の入口で、QRコードを見せろ、といきなり言われる。
なんだそれ?と説明を聞くと、入口近くに貼ってあったウェブサイトにアクセスしてフォームから、すでに手書きで書いた書類と同じような内容を入力すれば良いらしい。
なぜ同じものを手書きとウェブで入力するのか意味不明。
ウェブフォームに記入するとQRコードが表示されたので、それを入口で見せてPCR検査結果待機場所に入場。

PCR検査には時間がかかる。
1時間以上座って待ちつつ、マニュアルに従ってスマホの設定をしたりアプリをインストールしたり。
かなりの人数が待機場所に集っているけど、こんな密状態でウイルス対策は大丈夫なのか?とも思った。
後ろのほうにカロリーメイトを配っていたのでもらって食べる。
空腹だとなんでも美味しい。

検査結果が出た後は、長い距離を歩かされて通常の到着ゲートまで戻る。
そこでいつも通りの入国審査。
その後は自分の荷物のピックアップ。
ミャンマーだと荷物は消毒液をかけられて隔離ホテルの部屋まで直送されるのに、日本はこんなに普段通りでオペレーションで良いの?、とちょっとびっくりした。

荷物を持って隔離ホテルに向かうためのバスのところまで移動。
普通に歩いて空港の中を移動するので、一般の人にも普通に接触可能。
私が帰国したときにはテレビ局が普通に帰国者に取材していたよ。
こんな適当な感じで良いのか?

指定されたバス乗り場でしばらく待つとバスが到着。
バスのトランクに自分の荷物を積むのは自分でやる必要がある。
バスの中はビニールシートが貼られまくっていて、それなりにウィルス対策をしてる風ではあった。
バスに乗って隔離ホテルである東横インまで移動。
ホテルでの手続きに時間がかかっているらしくバスの中でしばらく待機。
待つ間に飲み物が配られた。

隔離ホテルへチェックイン

1時間ほど待たされた後にバスから降りる許可が出たのでホテルロビーへ移動。
ホテル内はビニールシートが貼られていたり、それなりにウイルス対策はしている感じ。
ようやく休めるかと思ってたのに、ここでも15分ぐらい待たされる。
とにかく手続きに時間がかかる。
待っている間にホテルへ提出する誓約書を確認したり。
同じような書類を何枚も書く必要があるのは本当に効率が悪い。

名前を呼ばれて受付。
書類を確認して、ようやくホテルの鍵をゲット。

荷物はすでにバスから降ろされていてロビーに置いてあったので、自分の荷物をピックアップ。
でもなぜか段ボール箱にまとめていた荷物が見付からない。
ロストバゲージを日本で経験するのか、しかもバスに積んだのは自分だぞ、まじかー、と思いつつも、ホテルの担当者とどうするか相談。
おそらく荷物の降ろし忘れで、バスはすでに業務終了してる、とのことなので、後日届けてもらうように依頼。
同じようにロストバゲージしている人は他にもいた。
現場の人々は疲れきっているように見えた。
これだけ効率が悪いことを延々とやらされればそれは疲れるよねえ。

弁当と飲み物をもらって、自力で部屋へ移動。
ミャンマーだと防護服を着た人に部屋まで案内されたんだけどなあと思いつつ、無事に部屋まで辿り着いた。

弁当はすっかり冷たくなっていたけど、今日はじめてのまともなご飯。
空腹に勝る調味料なし。
部屋ではちゃんとWi-Fiが使える。
狭いけど、ちゃんとベッドで寝れる、それだけで本当に安心できた。
横になってすぐに眠りについた。

隔離ホテル滞在1日目

朝から放送で起こされる。
これから弁当を配る、配ってる間は外に出るな、配り終わったら連絡する、とのこと。
なんだそれ、と思いつつ待つこと1時間、配り終わったという放送の後に扉を開けるとドアノブに弁当がぶら下がってる。
ミャンマーだと部屋の外にテーブルが置いてあってその上に弁当が置かれてたんだけどなあ。

弁当は冷えていておいしくない。
多分お米がいまいちなんだと思う。
部屋に電子レンジもないので温めることもできない。

朝体温を測って報告をする必要があるんだけど、良くわからないけど2箇所に連絡しなければいけない。
ホテル向けには、ウェブフォームからの入力。
QRコードを読みとってそこから入力。
そしてLINEアプリからも入力をしなければいけない。
入力項目も無駄に多い印象。
なんだかなあ。

そしてミャンマーのような暑い国から帰ってくると、3月の日本はまだまだ寒すぎた。
部屋の温度を25度まで上げてもだいぶ寒い。
スウェットのようなものがあれば良いんだけど、さすがに持参はしていない。
耐えてれば慣れるはず、と思いつつ、薄い布団の中に入ってゴロゴロ。

やることもないのでずっと寝てたんだけど、食事のたびに放送で起こされるのは困る。
昼も夜も、これから弁当を配る、配り終わった、というのが2回流された。

そして、夜うるさくするな、みたいなことを言われたけど、そもそも壁が薄い、部屋も狭い。

暇なのでテレビでも見るか、と思ったけど、ビデオオンデマンドサービスは使えなくなっている。
ただずっとインターネットが使えるのはも本当に嬉しい。
ミャンマーでは毎晩インターネットが止められてたからねえ。
品質も良好なので接続切れすることなくネットで麻雀ができる。

自宅に帰るために、ハイヤーを予約。
品川まで27,500円はちょっと高いけど、公共交通機関は使えないので仕方がない。

ロストしていた荷物は午後には無事に届いた。

隔離ホテル滞在2日目

2日目も放送でたびたび起こされる。
体温を測定してアプリとウェブでフォームで同じようなことを2回入力。

やることもないので本を読んだり寝たり。
弁当は冷えててやっぱりおいしくない。
温かいものは電気ポットでお湯を湧かしてティーバッグで入れるお茶だけ。
だいぶげんなりしてきた。

隔離ホテル滞在3日目

朝からPCR検査をします、という放送で起こされる。
7時からPCR検査。
唾液採取キットが配られて、自分で採取した後に、取りに来た人に渡す、というプロトコル。
キットが配られたのが7時で、取りに来たのは8時すぎ。
すごく時間がかかってるなあ、という印象。
宿泊している対象者が単純に多いのかもしれないけど人手が足りてないような気はする。

朝の弁当の配布開始は8:30頃から。
食べて良し、と言われたのは9:00頃。

昼も夜も規則正しく放送で起こされる。
朝昼晩と弁当の業者は違うんだけど、どの弁当も米がいまいち。
コスト削減しやすい部分だとは思うんだけど、ご飯ぐらいはおいしいものを食べたい。
寒いのには慣れてきたけど部屋が狭いので閉塞感が半端ない。
囚人になった気分。

隔離ホテル滞在4日目、隔離終了、帰宅

朝はご飯配布の放送で起こされる。
強制的な規則正しい生活。
ネットに繋がるので普通にお仕事ができちゃうのは良いことなのか悪いことなのか。

15時頃に検査結果を電話で伝えられる。
陰性とのことなので退所できるけど、退所のプロトコルはさっぱりわからない。

退所するので夕食抜きだと思ってたんだけど、
部屋で夕方のミーティングに参加していたら、夕食の弁当が配られてた。
弁当を食べて、荷物をまとめて、入口まで移動。
入口で台車を借りて部屋に戻ってから段ボールとトランクを乗せて再度入口へ。
体温計を返却して、アプリがインストールされてるのを見せて、スマホの設定も見せて、書類をもらって退所。

隔離ホテルの宿泊費を請求されるのかな、と思ったけど、無料だった。
有料でいいからもうちょっと良いところに宿泊させてくれよ、もっと美味しいご飯を食べさせてくれよ、と思った。

ロビーから手配していたハイヤーに電話をして入口まで来てもらった。
ハイヤーで家まで送ってもらう間に運転手さんといろいろ雑談。
家に帰って風呂に入ってすぐ就寝。

自宅での自主隔離

入国してから2週間は自主隔離してください、とのことなので自宅でひきこもり。
その間に、厚生労働省の入国者健康確認センターから電話があった。
帰国者はOSSMAというアプリをインストールして、現在地情報を毎日発信してください、と言われた。
とりあえずインストールしてみたけど、疑問点だらけ。

- OSSMAって留学生危機管理サービスよね?
- それをコロナ用に使うって誰がどういうルールを作って決めたの?
- 運営者も良くわからないし、どういう情報を取得してどういう目的で使うかも良くわからない
- 初期ログインIDがパスポート番号と生年月日になってるけど、これは脆弱性ありすぎる運用では?
- 登録完了メールは迷惑メールに埋もれてて見逃してしまったよ。

そして成田空港や隔離ホテルでもらった書類を確認してみると、
変異が流行ってる国からの入国の場合はインストールが必要だけど、ミャンマーからの入国では不要、と書いてあるじゃないか。
スマホでインストール等が必要な箇所はわざわざ蛍光マーカーでチェックされてたんだけど、OSSMAについてはチェックがされてなかった。

なんだかなあ、と思って、かけてきた電話番号につないで、以下を言ってみた。

- インストールして現在地登録はした
- でももらった書類にはOSSMAはインストール不要、って書いてあるけどどういうこと?
- OSSMAってどういうアプリかわからない、運用者も目的も書いていない。不信感しかない
- インストールしないことによる罰則はあるのか?
- 入国前にこういう情報は知らされるべきではないのか?まとまった情報がどこにもない。
- そもそも効率が悪すぎるのではないか?

何度か折り返し電話がかかってきて、時間がかかってすみません、みたいなことを言われつつ、最終的には結論は以下。

- 今のルールとしては、3/18以降は帰国者全員にインストールと毎日の通知をお願いしている
- ただ3/19に配布した書類にはたしかにOSSMAのインストールが不要と書かれていた。
- なのでアンインストールしてもらって構わない
- 問題点のフィードバックについては厚生労働省の新型コロナ対策サイトの問い合わせから出して欲しい

要はクレーマーとみなされて現場判断で特別対応をとった、みたいな感じなのかなあ。
ひどいわあ。

掘り出したメールを見ると、差出人は、入国者健康確認センター(旧称 新型コロナウイルス感染症特定流行国滞在者健康確認センター)、となっていた。
この名称変更だけでも、なんだかバタバタしてるのねえ、という印象だ。

日本での入国手続きについて思ったことまとめ

感じたことは以下。

- 同じ書類を何枚も書く必要があって意味不明
- 情報を入力するフォームも複数あって意味不明、入国時のQRコード登録、隔離ホテル用フォーム、LINEアプリ
- アプリも複数あって意味不明、COCOA、OSSMA、LINEアプリ
- アプリやフォームの操作性がとても悪い
- スマホでの位置情報トラッキングを有効にするように、と言われたけど、いつでもOFFにできる
- 空港での動線が長い、待ち時間が長い
- ビニールシート設置、防護服空港でのウイルス対策措置はミャンマーと比べると甘い
- 現場担当者の人員が足りていない、そして疲れきっている
- 情報が分散していて量も無駄に多く、何をすれば良いかわかりにくい
- そもそもホテル隔離の3日間ってなにか根拠はあるの??
- 性善説に頼りすぎ、抜け穴ありすぎ
- やってる感だけあって、実効性は足りてない

これが今の日本の実力なんだろうなあ、これがIT敗戦国かあ、と思ってしまったよ。
無駄な縦割り、全体統制ができていない、IT活用能力不足、現場の疲弊、もうダメダメ。
もはや笑うしかないんだけど、さてさてどこから手を付ければ良いのかねえ。
デジタル庁に期待したいけど、やっぱり笑うしかない。

(参考)ミャンマーでの入国はどんな感じだったのか

2020年の10月に渡航したときには、こんな感じだった。

- 渡航前に自宅隔離をすることを求められる
- 渡航前にPCR検査は必須
- スタッフは全員防護服着用
- 動線のあらゆるところをビニールシートで保護
- 飛行機から降りると専用の入国管理ゲートで手続き
- 入国すると専用のバスで隔離ホテルまで移動
- 荷物は消毒液をたっぷりかけられ隔離ホテルの部屋まで届けられる
- ホテルは有料で宿泊費はちょっと高いけど広い
- ご飯はとてもおいしい
- 隔離ホテル滞在は1週間、その後は自宅もしくは宿泊ホテルで1週間自己隔離
- ホテルでの隔離はとても厳格、部屋から出ないようにスタッフが見張っている
- 毎朝電話で体温と健康状態を確認される
- アプリのインストールやフォームでの入力などは要求されない

そのときは面倒でつらいなあ、と思ったけど、日本よりかなり楽だし合理的だと思うね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?