AMERICAN UTOPIAに触発される

昨日は朝一で映画を観に行くと書いた。観てきたのはこれだ。

以前映画館で予告編を見てその存在を知り、なんとなく気になってはいたのだが、このご時世もあり積極的に映画館に足を運ぶ、という気持ちにまではなかなかならなかった。それでも「行こう」と思い立ったのは、近くの先輩が「好きだと思うよ」と勧めてくれたから。これが、なんかもう、すごかった。

この映画はブロードウェイのミュージカル「AMERICAN UTOPIA」を、スパイク・リーが映像化したものだ。そしてこの集団を率いるのが、デイヴィッド・バーンである。なんて堂々と書いてみたはいいが、そもそも私も「デイヴィッド・バーン? 響きしか知りませんがはてな?」という感じの無学者(どうやら「トーキング・ヘッズ」というロックバンドで活躍しためちゃ有名な人らしい)。しかし、そんな能書きなんて知らずとも2時間は濁流のように過ぎてしまう。とにかく圧倒されるのだ。

装飾がまるで施されていない舞台の上には、グレーのスーツを着たデイヴィッド・バーンと11人の男女。朗々と響く歌声、狂いのない演奏、一糸乱れぬ隊列。我々の想像力を補助するような衣装や道具は一切ないはずなのに、いやだからこそ、彼らの音楽と照明の効果によって舞台の上には無限の可能性が広がっている。パフォーマーはみな、見た目も性別も、出身地だってばらばら。それが1つの音楽をライブを作り上げる様子に、大げさではなく、人間の営みの美しさみたいなものを感じてしまった。1人1人は本当にそのままで輝いているのだということ。それぞれ多様な個性が集まるからこそ、素晴らしいものは生み出せるのだということ。

彼らのパフォーマンスを目の当たりにしていると、不思議と「生きる」ことさえ肯定された気持ちになるのだ。自分も歌いたいし、踊りたくなる。そして止めどなく湧き上がるこの衝動を、私たちは「感動」と呼ぶのかもしれないと思った。

ああ、堰を切ったように書いてしまった。とにかく「これは見てよかった」と思えた映画だったので、ぜひお勧めします。帰ってきてサントラを聞いてみたけれど、あの映像を観たからこそ補完されるのであって、これこそ映画館で見るべき映画! という気がする。近いうちにニューヨークに行って、生でこのパフォーマンスが見たい。そんな目標もできた。

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