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中央銀行によるベーシックインカムの展望


フランスのイエローベスト運動のラウルとの最近のやりとりのなかで、彼は「このアイデアはとても洗練されていて、イエローベストでも流行らせることができると思う」と書いてきた。

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イタリア第1党五つ星運動の創始者で、欧州で知らない人はいない伝説のコメディアン、ベッペ・グリッロは、昨年の来日後、このアイデアについて「グレート・エンスージアズムでサポートする」とメッセージをよせ、私の名前で、自身のブログに寄稿させてくれた。彼のブログは最高で世界9位にランクされ、ノーベル経済学賞のスティグリッツも寄稿している。
その投稿がこれだ。

https://www.beppegrillo.it/reddito-base-da-parte-della-banca-centrale/

ベッペは最も大事な政策はベーシックインカムと言い、彼の五つ星運動は貧困の撲滅を最優先政策として、政権獲得後にすぐ財政出動で所得保障政策を導入した。もちろん、イタリアのユーロ使用については国民投票で決めるべきとしている。

最初に、このアイデアを台湾で、MBAを教えている教授と突っ込んだ議論をしたら、彼は「穴がない、十分いける」と言う見解を見せた。私はその時、これはどんな経済学者も明確な理由をもって反対できないなと確信した。実際、どんどん意見が欲しい。

オランダのアクティヴィストは「中央銀行が嫌いだから反対だ」と言った。
私も、決して好きだから言ってるわけじゃなくてね(笑)、大事なことは、誰でも理解できるように、既存の制度を最大限活用しながら、新しいシンプルな原則をまとめ、みんなが「そうだよね」って言えるものにしないといけない。スイスで国民投票をつぶさに見てきて、それが必須だと思った。条文案もそのまま憲法に盛り込めるようにできるだけシンプルに。それも教訓だ。

スイスの2度の国民投票、ベーシックインカムとソブリンマネーの憲法改正案をベースに必要な原則や要素を盛り込んだ「中央銀行によるベーシックインカム」の条文案はこれだ。


1(ソブリンマネー)中央銀行のみが、公的かつ独立した機関として、紙幣、帳幣、および電子通貨の形で法貨を発行するものとする。取引口座にある既存の帳幣はすべて法貨になる。商業銀行の対応する債務は、中央銀行に対する債務となる。
2(ベーシックインカム)すべての個人が尊厳をもって存在し、社会生活に参加するために、中央銀行は毎月無条件にベーシックインカムをすべての個人に支給する。
3(経済の原則)経済は人間の生活を基盤とするものでなければならず、ベーシックインカムは経済のベース・マネーでなければならない。マネーサプライの総額は中央銀行によって透明性をもって適切に調整されなければならず、特に、政府と相談して貸付額と課税額を調整することによって物価を安定させなければならない。


このアイデアは、ドイツやスイスでも話したけど、おおむねnot so bad、面白いってな反応だ。

一方、日本人は、反応がない。新しいアイデアに対して、何かの権威によらず自ら考えて自分の意見を話すと言う習慣がないし、下手なこと言って非難されたくないからだろう。それは想定どおり。権威ある人の言葉の拡声器を演じることでしか、自分の存在をアピールできないのは、残念なことだし、社会の進化の大きな阻害要因だと思うけど、まぁ、そこを突っつくよりも、今の世界を見渡して、一番効率よいことをやって前進させた方が未来に貢献できる。

でも、グッドマインドで考えてみて、批判含めて建設的な意見をくれる人はいつでも歓迎だ。

昨年、グルノーブルのラウルの家に泊めてもらって、欧州中銀包囲デモの話をした時、パートナーのクララは言った
「これが実現したら、どんなに素晴らしいだろう。ユーロを使っているすべての国の活動家のネットワークをつくってやれたらベストだわ」

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イエローベスト運動は、毎週土曜日、フランスの至る所で人々が繰り出して半年以上デモを続けた。これは歴史上例のないことだ。リーダーレス(リーダーなし)のムーブメントで、過激派が入り込むことを阻めなかったが、その暴徒たちは、今の金融システムが悪いから貧困が広がっているとして、銀行を襲撃した。残念ながら、それは政府に取り締まりの口実を与えるだけだ。解決策を提示してそれをみんなで共有するというポジティブな次のステージにシフトすべきなのは多くの人が分かっていることで、そこに彼らの熱いエネルギーを注いで欧州中を結集させる。それが一番いいと思う。

そう、本当は増税なしでユニバーサル・ベーシックインカムは可能だ。UBIに必要な資金はGDPのおよそ3割に相当する。既存の社会保障を組み替え、さらに必要な資金を税金でまかなうと言っても、実際に誰がどのように負担するかの議論を始めたら、利害調整が困難を極めて合意は見えないだろう。もちろん、どんな資産家だろうが、大企業だろうが負担しきれない。でも、経済の基盤を人間において、まずは、中央銀行が生活資金を無条件にだして、それを核に経済をまわしててマネーサプライを調整して物価を安定させればすべてが丸く収まる。通貨システムの民主化、いわば人本位制の通貨システムは、わずかな原則をルール化して合意、法として明文化してしまえば良い。

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この世界の貧困は、単なるリーダー達の不作為、実はかなり意図的な不作為のせいに過ぎない。実際に、この世界に足りないものはない。本当は、あらゆるものが有り余っていて、マネーは最たるものだ。不足に見えるのは、人間を支配するための演出にすぎない。

幸いにもデモクラシーを表立って否定できる人は今の世界ではいないのだから、およそ過半数の人が、「それ、そうだよね」って言えば法律にできるんだ。そう、まずは多くの人が知ること。それに最善の方法が欧州中銀包囲デモだと思う。その様子が世界に放映され、世界中に運動が広がる時、世界は本当に変わり、貧困と支配のない世界が現れる。もちろんダイレクトデモクラシー、つまり市民イニシアチブでこの国民投票が実施可能な国では、随時実施していきたい。ドイツでは、ECI(欧州市民イニシアチブ)で100万人の署名を集めて欧州中央銀行がNPOに直接融資する制度をつくろうとしている。あちこちで進化の試みはある。

アンドリュー・ヤンは「すべての成人に月額1000ドル」って言ったけど、日本だったらとりあえず10万円でいいだろう。毎月日銀が無条件に10万円支給したら、自分の暮らし、私たちの社会はどうなるか、想像して欲しい。それは実現可能なんだ。

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