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医療政策に興味を持つ人にとって、保健所は案外アリかもしれない

7月但馬/豊岡にいってきました!

少し時間が経ってしまったけれど、7月のはじめに志摩市民病院の日下先生とともに、だいかい文庫などで活躍中の守本先生のところを1泊2日で訪問しました。
守本先生と直接会うのは学生時代以来!!近い分野で活動しているよな、と思いつつ、なかなか機会がなく、やっと訪問できました。
 
1泊2日の中では、守本先生の勤める保健所の見学および業務を紹介してもらったり、だいかい文庫やケアと暮らしの編集社の内容を見学したり、翌日には養父市役所にご紹介いただいて、市の事業としての社会的処方の取組やコミュニティナース事業、子供の「第三の居場所」の事業、公立八鹿病院での意見交換などをさせていただきました。
 
今回は、まずは保健所について印象に残ったこと、そして保健所って医療行政に興味のある人にとって意外と面白いところかもしれないよ、という話を書きたいと思います

保健所の仕事:第8次医療計画策定プロセスについて

保健所の仕事…僕自身よくわかっていませんでした。もちろん学生時代含め勉強したことはあるし、コロナ禍に発生届含め連絡を取り合ってもいました。
一度興味をもって、初期研修医のときに選択科目の1か月間を保健所研修で使うことを希望したことがありましたが、時期が多忙だったとかでお断りされてしまった経緯もあります。
 
それなので、今回守本先生のところを訪問するまで、実際どんな仕事をしているのかよくわかっていませんでした。
 
今回主な話題になったのは、医療計画です。5事業5疾病+在宅医療のやつです。
2024年度から第8次医療計画が新しく始まるのにあわせて、実は今年度は各自治体では来年開始にむけて医療計画を作成しています。
そして、都道府県よりももう少し現場に近いところとして、保健所が主体的に動いて作成をしている、という業務でした。実際には、管轄する地域の医療計画を作り、それを地域のステークホルダーと調整したり会議を運営したりしながら、形にしています。
 
具体的にいうと、各5事業5疾病について、ロジックモデルを作成し、圏域内の各病院の医師から意見を聞きながらロジックモデルをさらにブラッシュアップさせる。同時に、ロジックモデルに含まれる項目について、目標のためにはどのような因子を把握し、なにをアウトカムに設定すればいいのか。そして、どのように改善していけばよいのか、について検討する。そんなようなことをしていました。
 
さらに具体的にいうなら、例えば地域の脳卒中の予後を改善しようとしたときに
・高血圧や喫煙などリスクファクターの圏域での状況は?
→予防やプライマリケアの充実度、健康増進の施策として落とし込んでいく
・急性期脳卒中対応の体制は?tPA実施件数は全国平均などと比較してどうか?
→救命救急センターや二次救急の状況、脳外科/神経内科医の配置や勤務状況を把握
→急性期医療体制は適切か?医師の働き方改革(特に脳外科など)と合わせてどのような体制にしていくか?具体的に地域の急性期病院院長や担当科医師の意見をすり合わせていく
・リハビリの状況は?社会復帰率や最終転帰はどうなっているか?
→回復期病床やリハビリ職の充実度、慢性期病床や在宅医療、福祉関係の充実度を評価する
 
そしてこれらの検討を通じてみえた、「なっていきたい地域の未来」と「把握された現状」とのギャップをどのようにして埋めていくか?ということ。
これこそが、計画して実施していくべき「施策」となっていく。そんな作業です。
※埴岡健一先生の「医療福祉計画の作成と評価」(ロジックモデル)を参考にしているとのことで、これはネットで検索すると多少読むことができるので、具体的なイメージをしたいひとは読んでみてください。
 
医療従事者や、そうでなくても病気や障害に関心がある方であれば、
「この地域はこんなことが足りないよな…」とか感じていることはあると思います。
 
その課題感をモデル化して、評価して、施策にしていく業務。
そして、現実の各病院などの現状や意見をすり合わせる作業。
まさに医療行政の現場であり、興味があるひとにとっては、「まさにこれ!!」とやりがいが感じられると思いました。
 
また各病院長らが参加する会議体を運営する中で、会議をファシリテーションすることや、自分自身が引き出したい意見や方向性をどのように会議のなかで引き出していくか、どの参考人を呼んで発言してもらうか、といった「政治的な」見識や経験を得られるかもしれません。 
 
すこし話題は変わりますが、保健所は、分野を横断した地域のPublic Healthのために活動する機関として活動しうるポテンシャルもありそうです。
いわゆる衛生業務(食品衛生や環境衛生、結核)などの事業だけではなく、保健所は保健所長が必要と認定した業務を自主的に保健所の事業とすることができるという特徴があるそうです。

現実的にありうる保健所の課題

もちろん予算や人手などの制約はあります。
また今回見学した保健所は、医師2名(保健所長+1名)という体制であり、これは恵まれていた点であることは事実です。そのほかの多くの1人保健所医師のところがどうかはわかりません。
さらに上司にあたる保健所長のキャラクターや懐なども重要ですし、。
上司のみならず、Public Healthのためなら変化や新しい事業を厭わない組織文化が保健所にあることも前提として重要です。
実際、地方ではよくあることですが、
近隣の病院長などの「天下り名誉職」として保健所長のポジションが使われることもあり、そのような場合には、仮にそこに就職しても思ったようなことはできないかもしれず、これはぼく個人としても保健所就職のリスクだな、と感じています。

まとめ

実際に見学してみると、保健所には大きなポテンシャルがあるように感じましたし、
公衆衛生キャリアを考えるひとにとっても、ひとつの選択肢としてもっと広まってもよいように感じました。
もちろん、上記のようなよい環境/上司とのめぐり合わせなど完璧ではない面もありますが、
少しずつ少しずつPublic Health人材が保健所に将来蓄積していったときに保健所がもつ地域Public Healthの拠点としてのポテンシャルは大きいと感じます。

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