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PROLOGUE八戸:羽生さんて音楽だ

旅の始まり

横浜公演のあまりの倍率の高さに恐れをなし、「参加することに意義がある」レベルの期待で挑んだ八戸公演になぜか当たり(ローチケのサイトに結果見に行ってハイハイ落選落選を予想していたので本気で二度見した)、しかしやはり今回の八戸公演でも落選者が多々あり、毎年ショーや試合でご一緒する友人もその中に含まれ、胸の痛みを抱えつつの遠征となりました。
全落は全落したことのある人間にしか分からない痛みなのだ。あのやりきれなさは…と言い出したらその話題だけで千文字行きそうなのでやめる。

苫小牧駅前のイルミネーションがすごく美しかった(あまり伝わらない)

仕事を終えてそのまま旅に出るのは、日常の服から非日常の服に一瞬で着替えていくようでとても不思議な気分。などとポエムを語る余裕がないのが冬の北の旅。朝からの雪でサックリJRは遅延する、鹿アタックも頻繁に起きている、且つコロナの影響で予定していた高速バスが滅する。余裕に余裕を重ねて移動。移動しきるまで安心は出来ない。雪があるので転んで足を折るのもいけない(体験者は語る)。

夜のフェリーターミナル アガる
無慈悲な運休
フェリーターミナルの匂いとクラシックの親和性の高さときたら
シルバーフェリー船内
もう少し早く起きれば朝日が見られた(これは未遂画像)
朝7時半に到着

下船する際に船のエントランスにカバンにプーがついている女性を複数お見かけしました。私はそういうものを一切身につけておらず、なんなら赤黒のコンサドーレマフラーなので同好の士とはミリも気づいてもらえなかったでしょう。

お騒がせしております

本八戸で朝ごはんをいただき、バスに乗って八戸まで。バスの方が本数多くて楽ですよというツイッターの情報を参照しました。ああいう地元情報ほんとに助かりますよねありがとうございます。
ところで八戸は太平洋側らしい寒さでした。苫小牧とか釧路と似てる。本州だから言うて寒さもしれてるだろうと思った私は甘かった。普通に寒いわ青森県。

情緒あふれる

八戸駅に到着すると人出がすごい。羽生ファン…ではなく新幹線開業記念かなにかの鉄道イベントで、その筋の皆様方が集結しておられました。八戸ちょっとした祭りだった。

グッズを買う予定時間にはまだ早かったので、青い森鉄道のワンデーパス買って乗り鉄。一日2,100円で乗り放題になるので青森八戸往復するのにたいへんによろしかったです。普通に買えば片道で2千円以上でしたので。帰りはこの電車で青森まで移動。

ツイ友の方とお会いして駅前のイベント広場っぽいところでラーメン

フラット八戸そしてショー本体へ

フラット八戸は2020年4月に開業したばかりのとても新しいアリーナ施設。町田樹のスポーツアカデミアで特集されていたのを見て、これは一度ぜひ訪れてみたい施設…と思っていました。ちょうどコロナ禍序盤の一番たいへんな時期に開業されていたということは、ここまで色々大変だっただろうなあ。

八戸駅から見た図
かっこいいです

今回訪れてみて思ったのは、アクセスがなるほど素晴らしい。八戸駅にたどり着くともう正面に見える。数百メートル歩くと建物。佇まいはスポーツアリーナというよりはライブハウスの雰囲気。見た感じのサイズは(慣れ親しんだ)苫小牧の白鳥アリーナや釧路の丹頂アリーナと同じくらい。ということは「中に入ると近いのでは…」と怯えながら入場すると「近い。」以外ありませんでした。

やばい

いつも書いてると思うんですが、「近くで見るより上から俯瞰したい」民なので、基本スタンド選択(財布の都合もありますし)・今回もスタンドAという一番安いカテゴリで選んで、あてがわれた席はショートサイド。たしかに仮設席でパイプ椅子で階段上であり高さはありますが 近い。真駒内なら普通にS相当の近さ。これは大変だ(動揺)。スタンド民大歓喜のフラット八戸、アリーナで見ても近いのかな。

ショートサイドで選手が出入りする場所のちょうど反対正面で、暗幕の奥に引っ込みきるまでが演技時間というのもよく伺えました。徹底しているなあ。
ショーの内容は横浜と同じく、映像で過去を振り返りながら本人の演技とお話が織り込まれていきくスタイル。6分間練習からのSEIMEIはアイスショーでは異例の照明オールアップ状態で、もし声を出せる状況であったならば観客席からは「ゆづガンバー!」の声がたくさん飛んで、より試合みたいになったんだろうなあ。

白い照明の中のSEIMEIを見ていると、本当にいろんなことがあったなあって思い出されます。でもその感傷は「4T4S、3Aが簡単なジャンプに見える」ことで真顔になります。
試合のときはこなさなければならない要素というものがあるので、その成約のなかで演技をしなければいけませんが、競技会を退くことで要素からは解き放たれ自由度が増しやりたいことがやれるようになる。だからといって難易度を下げるわけではなく、仮に採点されてもGOE+5がつくような実施をする、そんな風に見えるところにアスリート羽生さんの決意やこだわりが感じられるようでもありました。

でもねえ本当にSEIMEIの終盤のコレオに入る前のあのダンダン!(両手広げる)を真後ろから見られてあああ~ってなっちゃいましたYO! あれを思い出して無限に酒が呑めます。飲み会の場所だったら思い出して泣きながらビールもう一杯ってやるやつだと思う。羽生さんは背中が美しいんですよ…

そうそうショーを通して3Aが謎に高かったです。パッと飛び上がって高く上がってゆったりと3回転半回って降りる。勢いではなく完璧にコントロールされた匠の3A。なにかと跳ぶ3A。カジュアルに跳ぶ3A。「トリプルアクセル簡単なジャンプじゃねえぞ」そのたびに真顔。

SEIMEIからCHANGE、それからお話の流れ、さっきまで場を制圧するかのように演技していたひとが話し始めると急にフニャフニャトークになるのは、個人的に中島みゆきコンサートを思い出す一幕でした。「中島みゆきの歌は知っているけどトークは知らない」という人は「中島みゆき オールナイトニッポン」でYouTube検索してみてください。聞けば私の言っていることが秒で伝わると思います。

コンサートを思い出すというのはそのことだけでもなくて、ライブハウスみたいな雰囲気のアリーナで、たったひとりの演目を見ることが、スポーツではなく一人舞台かソロコンサートみたいだなあというのもあって、更に言えば、どのプログラムも、「羽生さんが歌っている/奏でている」ように思えたからでもあります。
EDEAさんが以前"Yuzuru is Music"って表現をされたことがありますけども、ああ羽生さんて本当に音楽だ って思ったんすよね。今回特に。

音楽は耳で聞くものだけど、目で音楽を見るとしたらこうなるんじゃないかっていう。音楽が目の前で映像として結実している。美しい音楽が耳から入ってくるのと同時に目からも入ってくる。そういう心地よさが彼の演技にはある。競技会時代もよく思っていたけど、プロになったらそれがより顕著に特化されているように思いました。

リクエスト投票で選ばれたのは(というかご自身がこれをと思ったような気がする)「悲愴」。2018年のCwWのときにも披露されていますが、それから4年の時を経て演じられた悲愴は、「思いの丈は当時とまったく変わっておらず」「且つ表現力が当時よりも上がっている」。余裕があってゆったりとしているのに、熱というか温度というかは以前と変わらない。成熟しているように見えて内側の熱は本当になにも変わっていない。どれだけ忘れていないのか、どれほど深く刻まれているのか。

フェリーターミナルにあった津波の痕跡 忘れないための印 それは悲愴の中にあるものと近いようにも思います

そしてとても楽しみにしていたプロジェクションマッピングの「いつか終わる夢」。この時点で「は?もうそんなに時間経ってる?嘘でしょ?体感3分だぞ?」。

これはもう、なんと言えばよいのか。言葉が頭の中でまとまるのを待っていたら仏像が建立される時間を要しそうなので勢いで書いてみます。

3次元の世界にいるはずなのに、2次元を見る思いだった。というのかな。
選手が此方側に滑ってきて、それに呼応するように光が追いかけるように流れてきて、まるで本当にその人が滑ったあとの滑走の跡が発光していくような、プログラムされたものなのにとてもそうは思えないほど一致していて、それはつまり双方の技術力によって数値レベルの緻密な作業をし且つ達成出来ている ということなんだけど、そういうことを書くことが野暮に思われるほど、「彼が滑った跡が光っていく」で納得したくなってしまった。

横浜公演をテレビで見た時は「男女の性差を超えていくような表現」だと思っていたけど、実際に見てみると、性差はもちろんのこと、どこまでが映像でどこからが人間なのか、どこまでが現実でどこからが非現実なのか、その境界線が自分の中で曖昧になる気がした。

「称賛の拍手をすることが憚られる世界」があると思うんですが、このプログラムはまさにそれでした。拍手をすることで先程までいた世界から現実に戻されてしまう、そんな気がして拍手をすることを躊躇してしまいました。拍手を届けられる場所にいるにも関わらず。伝わらなくてリアクション出来なかったのではなく、伝わりすぎて動けなくなったとでも言いましょうか。

会場の一番遠いくらいのところからでもこの程度の距離でした

終わってみて「プロローグ」というタイトル名に相応しい内容なんだなと思いました。競技会で鍛え抜かれたものを足掛かりに、これから本章に入っていくのだろうと思わせられるような、そんな90分間でした。
自分が何度もこれを見たい、というよりは「誰かに見せたい」「興味がないという人にこそ見てもらいたい」「羽生結弦はむしろここからですよ」と言いたくなるような、そんなプロデビューのショーだったなあと思います。

ありがとう八戸。コンパクトながら傾斜がしっかりあり、トイレも内側にあるというのはすごいです(ドームのゴール裏にあるトイレみたいな感じ)。大きなハコじゃないけどこういうコンパクト且つ見る人目線をしっかり確保してるアリーナが増えるといいなあ。あーでも場内の携帯の電波だけは改善していただけると助かります…笑

旅の終わり

たまたま隣の席になった方とショーが始まる前から話が弾んで、お互い青森泊まりということで帰りの鉄道でもご一緒。お互いため息しか出ないわねなどと中空を見つめして、そして連絡先も聞かず別れる、この行きずり感が旅の醍醐味よ…

今回の旅で何人かの人達といろんな話をして、みんな熱心な羽生ファンで、引退したから競技はもう見ないとかそういうのでは全然ないけれど、かといってこれまでと変わらずに追うのは難しいかなって話になった。
私は競技が好きなのでこの先も普通に競技会を追っていくけど、選手を追う人、競技を追う人、それはたぶん「特定のミュージシャンが好き」なのと「音楽が好き」の違いのようなものなんだろうな、ってちょっと発見した。

旅行支援で実質千円で泊まれてしまいました

起きたら津軽海峡冬景色。
あとは帰るだけなので、その前にお土産を買いにホテルの近くのアスパムへ。

魅惑的すぎた立ち呑み店があった
看過することが出来なかった漁師カード
秋田行きの普通列車に乗って新青森へ。秋田も行ってみたい…

当初はフェリー弾丸ツアーの予定でしたが、途中で新幹線を使って帰ることに。北海道新幹線に初めて乗るのでテンションが上がりました。行きは海の上を渡って、帰りは海の底のトンネルを通る。善き哉。

新幹線!新幹線!
オタクはいちいちこうなる
そしてまたたく間に北の大地へ

ショーの他に全力で移動を楽しむ旅でもありました。海も陸もいいな!
年内の参加イベントはこれで終わりなので、あとは来年の遠征を考えながらのんびり過ごs

ショーの余韻を語る間もなく怒涛の展開
新青森駅で撮ってきたこの一枚は虫の知らせだったのかもしれない。

旅の終わりの前の章まで書き上げたところで今日の数多の情報が入ってきました…なので録画もまだ見れていません…
クロアチア戦が始まるまでに少しは見られるかな…趣味が多いの…幸せだけど…まじで…考えもの 財布的にも…。

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