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昔から無言の会話が好きですね
2年に1度、松の剪定を行うところがある。
庭に松は5本。1階の屋根より高くその周りにモミジや八重桜など大小様々な樹木が狭いながらも趣よくある。庭の端には畑もあって手が込んでいるのが松のてっぺんから見てわかる。
松以外は60を越えた大工のお父さんが手入れをしているそうで松は僕がすることに。
しかしおもしろいのが松の剪定代金は息子さんが支払う。
おもしろいと言ったのは、この息子さんは僕よりずっと歳下で植物が好きなようなのは見ていてわかるのだか、なにせ口数が少ない。
盆栽に水をやり、里芋の苗を買ってきて、深植えされた木の改善策を熱心に聞いている。
なぜ安くない松の代金は息子さんの財布から出るのかわからないけども、それは聞くのが野暮だと感じる。
知る気がしない。違っていても想像していたい。
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この息子さんは茶道を習っていていつも休憩に茶を点ててくれる。
玄関に腰掛けるとその目線より少し高い壁の奥から茶匙の音がする。
立てば覗ける高さの壁というか仕切り。足元は石を埋めた土間。玄関だけで大工の仕事がたくさん見え隠れしている。
開けた玄関戸の外から鳥の声も聞こえる。
黙って聞く。
横からスッと出てくる。
菓子付きだ。
特に話をすることもなく2日間の剪定が終わる。
帰宅するとLINEで仕事の感謝と茶を点ててくれた御礼、とてもおいしかったと今年も伝える。
またよろしくお願いします。と来る。
最近コミュニケーションの本を読んでいたのだがなにも面と向かって話をするだけがコミュニケーションではないと、松の枝葉を触っていて思った。
ずっと歳下の静かな人との間には松と茶があって、無言のなかに僕は鋏で松を出した。そして一杯の茶をいただいた。
最後にお金も。
おかげさまで、生きていけます。