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第五章 夏の始まり #06優しい時間

「じゃあ、実感湧かせてみようか。」彼のそのセリフで、心の声が外に漏れていたことに気付いた。「え?」「実感湧かないなら、湧かせてみよう大作戦!ココおいで。」そういって彼は自分の横の床をポンポンとたたいた。私が戸惑っていると、「こんな感じ!」といって私の隣に彼が座った。ただ横にいるだけなのにドキドキしている。「キスしていい?」

そんなの良いに決まってる。でも、恥ずかしくて「いいよ。」なんて言えるはずがない。そんな私を彼はリードしてくれる。「ひろちゃん初めて?」私がうなずくと、「こっち向いて」彼はそういって優しくキスをしてくれた。ドキドキしすぎてそこから先は記憶が曖昧だけど、全然嫌じゃなかったことは覚えている。あぁ、私たち付き合ったんだな、と実感が湧いた。彼の作戦は大成功だった。ずっと隣にいたい、そう思えたのは初めてだったかもしれない。そこには、優しい時間が流れていた。

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