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落ち込みなんて、簡単に対処できる

落ち込んだときは、どうしたらいいでしょう? この手の質問をする人は、落ち込みというものを大袈裟にとらえている傾向にある。私も、あなたも、誰だって落ち込む。落ち込むのは当然。仕事がうまくいかなかったり、人間関係でトラブルがあったりしたら、嫌でも落ち込んでしまうのが当たり前。

つまり、「落ち込み」などというのは、あくびをするようなもの。日常のちょっとした瞬間に、ちょくちょく出てくるものなのだ。「あくびが出た時、どうしたらいいでしょう?」と真面目に相談する人はいない。落ち込みだって同じ。生きていれば、落ち込みもする。ただそれだけのこと。なのに「落ち込むとは、心がどんな状態にあることだろう?」「脳は、どんな風に動いているだろう?」といろいろ考える人がいるから話がややこしくなる。

もしあくびが出たら、あなたはどうする? ちょっと席を立って、運動したり、お茶を飲んで休憩したりするだろう。落ち込んだときも、それと同じで大丈夫。誰かと他愛もない話をするとか、お茶を飲んで一息つけば、気分は少し変化する。そうやって工夫して、落ち込みを引きずらないことが大切なのだ。あくびが一度出たくらいでは病気ではない。しかし、あくびが引っ切りなしに続いたら、病気かもしれない。落ち込みも似ていて、ちょっと凹むくらいは誰にでもある。いつまでも落ち込み続けることが問題なのだ。心の明晰さが失われてしまう。

往々にして落ち込みというのは、マンネリの中に蓄積していく。落ち込みから脱出する方法の一つは、人生にバリエーションをつけること。普段あまり会わない人と会って話をしてみたり、滅多に行かないお店で食事をしてみたりするのもいい。たまには外でジョギングしたり、いつもと違う道を散歩がてら帰ってみるのも一案だ。いつもはやらないことをちょっとするだけで、気分はけっこう変化する。

自分以外の誰かを励ますときも、この発想はとても有効。凹んでいる友人がいたら、普段とは違う場所に誘ってみたり、ちょっとしたサプライズのプレゼントをあげたり、「いつもと少し違うこと」をしてあげる。相手の気持ちがスッと変化するはずだ。

大切なのは、「ちょっと気分が晴れないみたい」「落ち込んじゃったな」という状況を敏感に察知して、すぐに気分を入れ替えること。落ち込んだ状態でじっと我慢すると、ストレスが爆発する危険もある。運動するのでも、休憩するのでも、音楽を聴くのでも構わない。今の精神状態に気づいて、意識的にコントロールすることが肝心。「落ち込みには負けない」という気持ちをつくって、その気持ちに正直に生きていく。落ち込んだら、自分も気分が良くないし、他人も嫌な気持ちになる。それが真理。明快な真理に基づいて、真理を守るために正直になると、どんどん素直になって、楽になって、リラックスして生きられるようになる。

落ち込むこと自体は仕方のないことで、大した問題ではない。その状態を長引かせないよう、コントロールする術を持っていることが一番大事なのだ。貪瞋痴の代わりに逆のエネルギーを作れば、しっかりした明確な智慧が生まれてくる。そこに限りない幸福がある。一人でも二人でもその道を見つけたなら、大勢の人の役に立つ。現代を生きる私たちに仏教が提案するのは、激しく見栄を張って競争するのではなく、智慧を絞って、落ち着いて生活してみてはいかがですか、ということなのだ。

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