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シャニマスの「なくてもいいけどあると嬉しい」描写 5選

私がシャニマスをプレイしていて最も嬉しくなる瞬間の1つが、「なくてもいい描写を発見した時」です。なくてもいいというとちょっと過激な言い方ですが、ニュアンスとしては「普通だったらカットされる、物語の進行上必然性のないシーンやセリフ」的な意味で、「いらない」とは違います。むしろそういうのが好きだ、という話をします。
シャニマスのコミュを読んでいると、あたかもその場に隠しカメラが設置されていて、彼女たちのやりとりを恣意的な編集なしにそのまま覗き見ているような妙な感覚になることはありませんか? そういうのです。

肌感ですが、この「なくてもいい描写が好き」という気持ちに共感してくれるシャニマスユーザはわりと多いのではないかと思っています。TLに流れる二次創作を見ていても、生活の一場面をアイドルに置き換えたような、何でもないシーンを切り取ったイラスト等は他の作品よりも多い気がします。

今回はそんな「なくてもいいけどあると嬉しい」描写を5つほど取り上げて紹介したいと思います。なぜならそういう話をすると楽しいので。
とはいえ、私がまだシャニマス歴1年ちょっとのプレイヤーなのと、可能な限りネタバレを避けたい都合上、ざっくり以下の基準を設けています。

・イベントシナリオやイベント報酬カードのコミュ、かつだいたいここ半年間くらいで実装されたもの

ガシャに頼らず手に入る範囲にしているので、ネタバレはほとんど気にせず楽しんでいただけるのではないかと思います。
それではおつきあいください。

2002円支払う西城樹里

Screenshot 2021-06-18 at 23-18-11 アイドルマスター シャイニーカラーズ

明るい部屋 第3話「ラブコメ」より

まずは、当時も結構話題になっていた「2002円支払う西城樹里」です。
こちらは、蛾を捕まえるための虫取り網を買いに来た樹里さんと千雪さんがレジでお会計をしているシーンなのですが、よく金額を観察すると、樹里さんがお釣りが細かくならないよう端数の2円を出していることがわかります。いや、そのこだわり、何?????

流れとしては、寮のみんなで節約をしようという話があり、また「明るい部屋」全編を通して「お金」の話題がよく出て来るので、その1つとしてあってもいい描写ではあると思うのですが、店員に「2002円のお預かりです」とは言わせずに、あくまで注意深く見るとわかるレベルに仕込んでいるんですよね。で、プレイヤーたちもそれに気づいて「あ"ーっ、樹里ちゃんがお釣りが細かくならないように支払いしてますーーーー!!!!」と話題にしている。このコンテンツ、異常では?

でもこういう描写って嬉しいんですよね。お金というと、財布を忘れる浅倉、ICカード派の樋口が思い浮かびますが、樹里さんは現金できっちりお釣りを計算して払う人であると、そういう事実に思いを馳せるのって、なんか...いいですよね。全然うまく言語化できないので次に行きます。

真乃「手が油になっちゃうもんね」

Screenshot 2021-06-18 at 23-51-02 アイドルマスター シャイニーカラーズ

【Scoop up Scraps】八宮めぐる 「コンソメ色の日差しの中で」より

「青のReflection」報酬カードにて、第39回イルミネお泊まり会をする3人のエピソードがあります。お菓子にポテトチップスを用意しためぐるさんは割り箸とお手拭きを使うよう2人に勧めますが、そこで真乃さんが言います。

「手が油になっちゃうもんね」

これ、初見では「あー、そういう言い回しあるかも。〇〇の口になっちゃった、みたいなやつかな」と思ってスルーして読んでいたのですが、調べてみると別に一般的に使われている言葉ではないみたいなんですね。でも、灯織さんもめぐるさんも特にそれに触れません。では、なぜこの必然性のないセリフをわざわざ入れたのか?

「手が油になる」はニュアンスとして全然伝わりますし、真乃さんは日常会話でいきなり突飛なことを言うタイプではないと思うので、3人の間でこういうノリって時々あるのかもしれません。とここまで書いて、これって浅倉初期sRで円香さんが言った「湿布でメロンが死ぬから」と似ているな、と気づきました。いわば、今この場だから通じる、この瞬間のためだけにある言葉です。もしかしてこれ、イルミネがついにノクチルの『領域』にまで来た...ってコト!? (いや、わからん)

とはいえ、実際真乃さんは学校や、プロデューサーや、他のアイドルの前でこういう言い回しをするかというと、たぶんしないんですよね。39回もお泊まり会を重ねたからこそ出てくる空気なのかもと思うと、なんかすごくいいなと思います。さっきから「いい」しか言えてません。

冬優子「あんたも存外平気そうでよかったわ」

Screenshot 2021-06-18 at 23-24-36 アイドルマスター シャイニーカラーズ

【頬を照らすのは】芹沢あさひ 「草むらをかきわけて」より

「このメンバーだからこそ出てくる言葉」でいうとこちらも好きです。
「幽霊を探しにいく」というあさひさんに付き合って、夜の暗い森に分け入っていくストレイの3人。そこで冬優子さんが愛依さんに「あんたも存外平気そうでよかったわ」と声をかけます。

いや、日常会話で「存外」て使う人、オタクか内藤泰弘作品のキャラ以外にいます????

まあそれは言い過ぎですけど、私的には結構驚きでした。これが咲耶さんだったらあまり違和感ありませんが、普通日常会話だと「案外」とか「意外と」って言うのではないでしょうか。「存外」ってある程度本を読む人じゃないと知らない単語な気がしますし(私の主観です)、コミュとしての読みやすさとかを重視するなら他の言葉で置き換えるんじゃないかなあと思います。
ましてや、あさひさんと愛依さんに「存外」って通じるでしょうか? バカにしているとかではなく、年齢的にも。愛依さんは普通に応答してますが、ニュアンスだけ汲み取ったのではないかと思います。

それでも冬優子さんがこういう言い回しをしたということは、普段から3人でいる時に伝わらないことを承知で難しい言葉を使いがちか、あるいはつい「オタク」の部分が漏れ出てしまったのかもしれません。いずれにせよ嬉しい描写です。

千雪「しっかりめに洗った方がよさそう」

Screenshot_2021-05-09 アイドルマスター シャイニーカラーズ

【RELAXIN】桑山千雪 「衝動的お鍋」より

続いては、アルストの3人が千雪さんの部屋で鍋パーティーをするこちらのコミュから。
お鍋を準備をする際のやりとりなのですが、ここで「箱のまま入ってるから」「しっかりめに洗った方がよさそう」って「生活そのもの」みたいなセリフが入ってくるのがすごい。 確かに新品の鍋は箱のままにしちゃうし、初めて使うときはしっかり洗っておきたいです。でもわざわざこんなに細かい描写入れる?
というか、アルストがお鍋をするとした時にこのやりとりをイメージできるのって、ライターが実際に千雪さんの部屋に出入りして書いてないと説明がつかなくないですか。

この後お鍋が新品だった理由についての話題があるので、まったくなくてもいいやりとりではないのですが、「そこの棚にあるから」「はーい」でも全然成立するんですよね。それをこの精度でやるの、本当に変態的だなと思います。

円香・小糸(・・・・・・・・・・・・)

Screenshot 2021-06-19 at 10-53-06 アイドルマスター シャイニーカラーズ

【Feb.】樋口円香 「バス」より

最後にノクチルから。ノクチルは幼馴染ならではの空気感を大事に描写されていて、基本的にずっと「どうでもいい会話」ばかりしています。なのでどこをピックアップしたものか逆に困ったのですが、今回はノクチル特有の「間」に注目してみます。

このコミュでは円香さんと小糸さんが一緒にバスで帰宅しているのですが、車内に落ちているストラップを拾うくだりの後、二人の間にはなんとなく無言の時間が流れます。
バスが止まる音。ドアが開く音。ドアが閉じる音。バスが動き出す音。
再び小糸さんが口を開くまでに、どれだけ沈黙が続いたでしょうか。

計ってみると、20秒以上ありました。マジで???

しかもこれ、「・・・・・・」というセリフ扱いではなく演出なので、タップしても飛ばせないんですよね。テンポ重視のソシャゲの世界で、これはめちゃくちゃ挑戦的なのではないでしょうか。
でも、当時テンポが悪いみたいな意見を見かけた覚えはありません。考えてみれば、アイドルたちはコミュの中だと基本的にずっと会話をしていますが、実際にはこういう無言の時間もあるはずですよね。付き合いの長いノクチルだとなおさらです。そういう意味でこの「沈黙」はノクチルらしいとすら言えますし、そういうものとしてユーザに受け入れられているのも含めて、すごい信頼関係だと思います。

まとめ

というわけで、シャニマスの「なくてもいいけどあると嬉しい」描写をいくつか紹介してみました。

最後に、なぜ物語の進行上不必要な描写を見ると嬉しいのか?という問いへの自分なりの考えですが、それはそこに「物語(カメラ)の外に広がるアイドルの人生」を感じられるからだと思っています。

少しそれますが、霧子さんが「さん」付けする基準は何か、という疑問に対して高山Pが「霧子も人間ですので、主観で判断して、付ける時もあれば付けない時もあります」という回答をしたことは有名です。このことは、霧子さんがシステマチックに反応を返すゲームのキャラクターではなく、コミュとして描かれていない時間も確かに生きている、血の通った人間であることを改めて私に意識させます。(「ライターごとのブレを吸収する方便では?ミスター・ボディビルダー」と心の中の偽円香が横槍を入れてきますが、このゲームに関してはそこは信用してもいいと思っています)

このように、シャニマスというゲームが何気ない描写にも根拠やこだわりを持って作られていることによって、彼女たちがアイドルになるまでの10年20年の人生や、コミュの外の時間でも生活を送っている様子を想像する余地が生まれます。この作品はよくアイドルの質感・実在感がすごいと言われますが、それを下支えする要素の1つが、一般的にはなくてもいいようなシーンをあえて「あってもいい」と判断して入れているところにあるのではないかと思っています。こういう楽しみ方を積極的に提供してくれる作品ってそう多くはないんじゃないでしょうか。
だから私は、シャニマスの魅力的なイラストや良質なシナリオを見るのと同じくらい、シナリオ上なくてもいいやり取りを発見した時に、「このゲームやっててよかった」と感じるのです。

以上、「単体で記事にするほどではないお気に入りのシーンを語りた~〜い!!」という欲望をそれっぽく書き連ねた記事でした。おつきあいくださりありがとうございます。


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