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【I・OWE・U】西城樹里の裏テーマはにちか救済ではないかという話

※本記事は【I・OWE・U】西城樹里Trueまで、及び七草にちかW.I.N.G.のネタバレを含みます。

4/12「シャイニーの日」に、【I・OWE・U】西城樹里が実装されました。いつもと違うスーツ姿でキメた樹里ちゃんの姿に狂わされたシャニマスユーザは多いことかと思います。あの手首までないタイプの手袋(ハーフパームグローブというらしいです)は"癖"すぎるでしょう。

で、私もそんな樹里ちゃんをプロデュースしたのですが、その中で1つ感じたことがあります。それは
「にちかW.I.N.G.の内容を踏襲した箇所がある気がする」
ということです。タイトルに「にちか救済」と書いたのは通りの良さを優先したもので(私は別に救いがないとは思っていないので)、正確には「にちかW.I.N.G.で精神にダメージを負ったシャニマスユーザへのケアを兼ねている」と感じました。

何を言っているのかと思われるかもしれませんが、完全なこじつけというわけではありません。今回の記事では【I・OWE・U】のコミュそれぞれがどうにちかW.I.N.G.と繋がっているかを説明していきます。
また、決して樹里ちゃん本人を蔑ろにしているというつもりもなく、「なぜ樹里ちゃんのコミュでそれをやるのか」という根本的な問題についても一応の理屈がつけられています。

ですので、【I・OWE・U】を読んだけど全くそんなことは思わなかったという方も、とりあえず聞くだけ聞いてみてください。その上で、「やっぱ妄言じゃん」と片付けていただいてもまったく大丈夫です。以上前置きでした。

【I・OWE・U】 表のテーマ - something little

まず、【I・OWE・U】がどういうコミュで構成されているか、簡単におさらいします。

・ハッピー・シェア〜樹里の場合
 樹里ちゃんが買ってきたメンチカツをPに分けてくれる話
・スニーカーそんぐ
 樹里ちゃんの新しいスニーカーをPが選んであげる話
・これまでとひととき
 樹里ちゃんが事務所倉庫の整理を手伝ってくれる話
・いつかその時も
 樹里ちゃんのスーツ姿を見てその魅力について話す話
・something little
 樹里ちゃんとPがおばあさんの荷物持ちを手伝う話

ざっくりこんな感じです。「I owe you」は「あなたに借りがある」という意味であり、Trueエンドではささいな優しさ、助け合い(something little)の積み重ねで今があるのかもしれない、という話がされます。
各コミュであるように、互いに助け合うのは二人にとって当たり前のことで、二人のそうした小さな優しさは外の世界の人へも広がっていく、という樹里ちゃんとPの信頼関係とその先にあるものが見て取れるとても素敵なお話でした。
「something little」は、「スニーカーそんぐ」でPと一緒に選んだスニーカーを履いて楽しそうに歩く樹里ちゃんの姿で終わります。

……スニーカー…………「靴」!?!?!?

いや、いくら直前のにちかW.I.N.G.で靴が重要なモチーフだったからといって、これだけで結びつけようとするのは流石に早計です。
ここから「にちかW.I.N.G.のケア」という裏のテーマをどうやって見出していくことができるのか、もう少し丁寧にコミュごとに読み解いていきましょう。

ハッピー・シェア〜樹里の場合 - プレーン味のメンチカツ

メンチカツを受け取るかどうかで二人が揉めるという微笑ましいコミュなのですが、注目したいのは選択肢「……ちなみに何味だ?」を選んだ時の会話です。

Screenshot_2021-04-14 アイドルマスター シャイニーカラーズ(1)

「プレーン味のメンチカツは、なんてことねー味だけど、なんもねー味ってわけじゃない」とPにメンチカツを渡して、樹里ちゃんはレッスンに向かいます。メンチカツを食べたPの「うん、確かに美味い」という独り言でコミュは終わります。
他の選択肢だと二人で一緒に食べる流れになるため、これだけ会話の内容的にも少し浮いているように思えます。「プレーン=平凡」...

ここで少し飛躍させて、この「プレーン味のメンチカツ」が「平凡な女の子」であるにちかさんを表していると考えると、「平凡であるということは、わかりやすいフックはないかもしれないけど、無個性だってわけじゃない」とそのまま読み換えることができそうです。

考えてみれば、別に変わった味や特別な製法でなくても、ちゃんと美味しいからちゃんと人気のメンチカツ屋さんは世の中にたくさんあるでしょう。アイドルも同じことで、まさにPはそういう話をにちかさんにしていました。

というわけで私はこのコミュの隠しメッセージを、「にちかさんは平凡かもしれないけど、だからといって魅力が無いということにはならない」というありのままの彼女の個性の肯定だと捉えます。
まだ説得力が足りないと思うのでどんどんいきます。

これまでとひととき - 忘れかけていたものを思い起こすということ

「スニーカーそんぐ」はTrueエンドにもかかってくるので一旦後回しにして、「これまでとひととき」から見ていきます。こちらは、樹里ちゃんが事務所倉庫の断捨離を手伝ってくれるお話です。
「断捨離って忘れてたものとか出てきて楽しいよな」という話になり、選択肢は「CD・ゲーム・写真」と色々ですが、総合すると「忘れられかけたものを確かめることには意味がある」という内容になっています。

Screenshot_2021-04-14 アイドルマスター シャイニーカラーズ

この「忘れられかけているもの」は、にちかW.I.N.G.では世間の記憶から消えつつある「八雲なみ」に当たるかと思います。にちかさんは「なみちゃんのステップ、今やったら絶対話題になります!」と必死に練習していました。
そうするとこのコミュは、「八雲なみを現代にリバイバルさせようとするにちかさんの試み自体には価値がある」という、にちかさんの八雲なみ信仰の肯定であると読むことができます。
(とはいえ、この作業が「断捨離」である以上、完全に再現(にちかさんが八雲なみになる)すればいいという話ではなさそうです)

いつかその時も - 色々な衣装を着るということ

本カードのイラストにもなっている、樹里ちゃんがスーツを着るお話です。
「服に着られている感じがする」と言う樹里ちゃんに、Pはちゃんと着こなせるようおまじないをかけます。つまり、衣装に自分の気分を合わせるためのチューニングを行なっています。その後の会話が重要です。

Screenshot_2021-04-14 アイドルマスター シャイニーカラーズ(1)

色んな衣装を着こなすことで、別の魅力が引き出されるということの重要性は、シャニマスという作品自体が体現しています。こんなに軽率に様々な衣装を着せたり髪型を変えたりする作品を私は他に知りません。
にちかW.I.N.G.でいうところの「靴」は比喩表現であり、実際には靴だけでなく衣装やヘアスタイル、仕事内容など、アイドルとして用意されるあらゆるものを指しています。
八雲なみのインタビューでは「靴に合わせないと、色んな靴を履かせてもらう意味がない」とありました。それは一定の正しさを持っていて、「色んな靴を履いて、色んな魅力を見せる」のはアイドルとしての本懐とも言えます。そして、そのために色々な靴を用意するのがPの仕事です。(用意された靴が本人にとって幸せなものではなかった、というのが八雲なみの問題でした)

よって、このコミュは「靴に合わせるというにちかさん(ひいては八雲なみ)の姿勢自体はアイドルとして大事なことである」というにちかさんのアイドル観の肯定であると読むことができます。

スニーカーそんぐ - 一緒に靴を選ぶということ

最後に「スニーカーそんぐ」です。
これは一番わかりやすくて、「樹里ちゃんとPが一緒に靴を選ぶ話」です。
最初樹里ちゃんの要望はふわっとしていて、それをPがいくつか選択肢を提示することで具体化していくという流れです。

Screenshot_2021-04-14 アイドルマスター シャイニーカラーズ(3)

この作業、「靴」がその人の魅力を引き出すようなアイドル像だとすると、そのままプロデュース業に置き換えられませんか?

Screenshot_2021-04-14 アイドルマスター シャイニーカラーズ(4)

そして、「something little」で樹里ちゃんはその靴を履いて、「アンタのアドバイス聞いてよかったよ」と笑顔を浮かべます。
「靴」がコミュを横断する重要モチーフであり、ラストが樹里ちゃんの楽しそうな靴音(にちかW.I.N.G.でいう「幸せなステップ」)で終わることを考慮すると、やはり「わざわざ靴を登場させた」ことにそれなりの意味を見出してもいい気がします。

にちかさんに当てはめると、これは「これから自分が笑顔になれるような靴を、Pと一緒に見つけていく」というにちかさんの未来の肯定であると読むことができます。

なぜ樹里ちゃんなのか

というわけで、「【I・OWE・U】は裏のテーマとして、にちかW.I.N.G.でネガティブに捉えられがちな要素の肯定を試みている」というのが私の主張でした。やや強引な部分もありますが、逆に他のコミュでここまで綺麗にこじつけられるものもないと思うので、タイミング的にも一定の納得感はあるのではないでしょうか。

そうなると問題は、「なぜこのテーマを描くのに樹里ちゃんが選ばれたのか」ということです。ここが説明できないとこの主張の根拠は弱いままです。

私の結論としては、それは樹里ちゃんが「他の道で挫折を経験した後に、アイドルとして活躍している」女の子だからだと考えます。

具体的には、樹里ちゃんはバスケットボールの道を途中で諦め、毎日を退屈だと感じていた時に、スカウトを受けアイドルになった子です。
アイドルになる前に別の活動をしていた子は他に咲耶さんや千雪さんがいますが、それぞれ転向・両立と、別にその道を諦めたりしたわけではありません。明確な挫折があったのは樹里ちゃんだけです。

もっとも、樹里ちゃんがなぜバスケを辞めたのかは今でも明らかになっていません。単に実力の問題か、怪我か、人間関係か、色々な説があります。
(余談ですが、シャニマスのこういう「あえて過去を描かないことで人間味を出す」演出はとても好きです。現実の人間に、都合のいい回想シーンはありませんし)

わかっているのは、普段明るい樹里ちゃんがバスケの話題になると急に歯切れの悪い反応になることと、彼女の優しさの根底にはそういった過去も影響しているのだろうということだけです。

となると、逆も成り立つわけです。
アイドルとして挫折しても、その後別の道で活躍する可能性はあります。
むしろ世の中には、最初の夢を叶えるよりも、それを諦めることになり、別の道で楽しさを見出す人間の方が多いでしょう。シャニマスはアイドル育成ゲームですが、アイドルだけが人生ではないことも描いています。

つまり、バスケの道を諦めた経験のある樹里ちゃんが今楽しくアイドルをやっているということ、そういう子のコミュを通してにちかW.I.N.G.を捉え直すということは、「敗退コミュを迎えた世界線のにちかさんの救済」につながると考えられます。

Screenshot_2021-04-12 アイドルマスター シャイニーカラーズ(1)

敗退時のにちかさんの様子は痛々しいもので、自分が練習を積んできたことの証跡であるトレーニングシューズも捨てようとしてしまっています。
奇しくもこの場面は部活を辞める光景にも似ていて、バスケをする上で最低限自分で用意する必要のある道具がバスケットシューズであることを踏まえると、樹里ちゃんにもシューズを捨てようとした時があったのではないかということが想像されます。

この後にちかさんが本当にシューズを捨ててしまったかは描かれていないのでわかりません。しかし、仮にシューズを捨てて、自分で自分を肯定できないまま日々を過ごすことになったとしても、樹里ちゃんにとってのPのように、近い将来転機が訪れることがあるかもしれません。そして、その時にちかさんがアイドルとしてひたむきに努力した過去は、必ずしもマイナスにはならないでしょう。

......以上が私なりの【I・OWE・U】読解です。実際この解釈が当たっているのかどうかはわかりません。(間違っていたとしたら私はマジの狂人になってしまうので、その時は助けてください)
しかしこうして吐き出すことで、にちかさん実装以降ずっと薄緑色にこんがらがっていた私の頭は晴れやかな気持ちになりました。
樹里ちゃんのおかげです。
不思議なことですが、この文章を書くことを通して樹里ちゃんのことがより好きになりました。心の底からG.R.A.D.の樹里ちゃんファンの気持ちがわかります。
そして、いつかにちかさんにも、樹里ちゃんのように幸せなステップが踏める時が来ることを、心から祈っています。

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