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RTA in Japan Summer 2023にプロゴルファー猿(走者)と東方剛欲異聞(解説)で参加した話

前回の記事は出場からおよそ1年後と執筆がかなり遅れてしまったので、今回は早めに上げられるように執筆を急ぎました。

思いの丈をぶつけた結果、かなりの長文となってしまいましたが、もしよければお付き合いいただければ幸いです。


・出場決定まで(プロゴルファー猿)

話は2022年の冬に遡ります。

2022年冬のRiJは走者としても解説としても出場が叶わなかったのですが、同イベントで披露された『ノットトレジャーハンター』は、個人的に特に楽しみにしていたタイトルの一つでした。

なぜかというと、RiJ前にバカンダさんの配信を見に行った時にノットトレジャーハンターの現在の相場について聞き、「RiJ後にたぶん値上がりするだろうから今のうちに買っときます!」とその場の勢いで購入し、本番を迎える時点で自分もノットレRTAの走者となっていたからです。

実際にプレーしてみるとRTAを詰める過程の研究が存外に面白く、最終的にはオフイベントで披露できるレベルまで練度を上げることができました。
今ではノットレそのものが純粋に好きなタイトルの一つになりましたし、出会いのきっかけをくれたバカンダさんには感謝の限りです。


そうした背景もあり、自分は実際にRTAの研究を行っていたため、畏れ多くも「ノットトレジャーハンター学会」の一員という名目で、本番前の練習部屋でバカンダさん・解説(話し相手)の核さんと会話していました。

その中で、「もしよかったら来年は何かの並走で参加しませんか?」という流れになり、ノットレ以外で唯一2人ともRTAを行っていたタイトルである『プロゴルファー猿』で応募しましょう!という話が浮上しました。

自分が猿のRTAを始めるきっかけになったのは昨年5月のRTAハッカソン(新しいRTAを数日間で覚えるイベント)なのですが、その際には先駆者であるバカンダさんの動画を大いに参考にさせていただきました。
自分としても、この機会にその恩返しをしたい、という気持ちもありまして。

しかし、プロゴルファー猿の中で最も難易度とハードルが低い「Any%」は既に第1回のRiJでプレーされていたため、

・並走形式という真新しさ
・6年の歳月を経たチャートの変遷

これらの要素を加味したとしても、過去にプレーされたカテゴリーが採用されるかは不安要素となっていました。

そこで、それまで理論上は可能だったものの、自分を含めて誰も走っていなかった「100%(全てのキャラクターと隠し要素を出すまでの時間を競うカテゴリー)」の研究を年明けから開始。
夏までの間に試行錯誤を重ね、チャートの研究と洗練を行っていきました。

ありがたいことに、去年の3月に入ってから、それまで不明だったプロゴルファー猿の隠し要素を出す方法をまとめた記事をnoteに執筆してくださった方がいらっしゃいました。
それによって100%のカテゴリーが実現可能になったといっても過言ではないですし、あらためて作成者の方に対しては感謝しかないですね…


そして、100%のチャートが概ね固まってきた段階で自作のチャートをバカンダさんに共有し、RiJの申込期限までに応募用の記録動画を作成していきました。
100%はAny%に比べて難易度が大きく跳ね上がることもあり、バカンダさんにはたいへん苦労をおかけしましたが、無事に2人とも応募期間までに100%のランを形にすることができました。

ただし、100%のESTは1時間15分といささか長く、このカテゴリー1本で応募した場合、枠の都合で採用されない可能性もあるのではないか?と考えました。
今回は1つの作品につき2つまでカテゴリーを応募できたこともあり、応募期間中に「やっぱりAny%も応募しませんか?」と提案。バカンダさんに快諾していただき、Any%も応募に加える運びとなりました。

果たせるかな、今回採用していただけたのは所要時間の短いAny%でした。
先述した思いつきがなければ今回のRiJには出られなかった可能性が高いので、人間の直感って捨てたものじゃないんだな、とあらためて感じましたね。

・採用決定~本番まで(プロゴルファー猿)

並走での参加ということで、通常であればまずは解説者の方を決める必要があります。
ただし、今回はその点については心配無用でした。

というのも、バカンダさんと「並走しませんか?」という話をしていた際に、ノットレの解説(話し相手)を務める核さんも隣にいらっしゃいました。
その流れで「もしプロゴルファー猿が採用されたら解説は核さんにお願いします!」という話もしていたので、これはもう核さんにお任せするのが筋だろうと考え、そのまま依頼して快諾をいただきました。

メンバーも固まったところで、本番が近くなってからは週1ペースで打ち合わせを重ねていきました。

個人的には、一番最初の打ち合わせで、核さんに「今回は解説ですか?それとも話し相手ですか?」という確認をいただいたのが印象に残っています。これだけで言わんとしていることがよくわかるのがすごい。

ただ、今回の並走に関してはプロゴルファー猿でRTAのレースをやっているというだけで既に面白いということもあり、変に奇をてらうのではなく、ガチガチのレースを見せるほうが絶対に受けがいいだろうという確信がありました。
そのため、核さんには今回は「解説」役をお願いしました。

しかし、核さんはバカンダさんの話し相手としてこのゲームでイベントに出場した経験こそあるものの(下記動画)、このゲームのプレー経験そのものはありませんでした。
そりゃ普通の人はやってませんよねこのゲーム。

なので、自分がこれまでのプレーで培ってきた、Any%に関する大小さまざまな知識やルート構築について、打ち合わせを通じて出来る限りお伝えいたしました。
このゲームは見ているだけでは伝わりにくい難所が多く存在するのですが、そうした点に関してもしっかりと汲み取っていただけてありがたかったです。

それに加えて、核さんは自分がほぼ毎日やっていた練習配信も視聴してくださり、知識のアップデートを行ってくださっていたそうです。
「難解そうに見えないけれど実は難解」というある意味では一番解説泣かせなゲームにもかかわらず、解像度を高めるためにさまざまな努力をしていただき、あらためて頭が下がる思いでいっぱいでしたね…


ゲーム内容に話を移すと、このゲームは2ホール目以降が(ある程度の法則性こそありますが)ランダム抽選となっています。裏を返せば、最初に選ぶホールだけは自由に選択できるということです。

バカンダさんは最初に「暗闇温泉」を選ぶチャートを以前から使用されていましたが、自分は記録狙いの時に初手で選んでいた「竜の頭」をそのまま使用することにしました。
「竜の頭」のほうが難易度が高くなる代わりに多少の短縮が見込めることに加えて、せっかくの並走なんだからルートの違いがあったほうが面白いだろう、と考えたからです。

このゲームは基本的にすごろくなので、適切な位置をポインティングしたうえでナイスショットをすれば、必ず所定の位置にボールが落ちます。
さらに、ショートホール(パー3のホール)であれば、ナイスショットでなくともOBになるレベルのミスショットさえしなければ、カップから数ヤードの位置に収まってくれるので大きなロスにはなりません。

しかし、「竜の頭」はミドルホール(パー4)であるため、2連続でナイスショットを決めないと、ボールの落ちる場所が大きくずれてしまいます。
そうなると、運にもよりますが概ね30秒以上のロスが確定します。
雨が降ろうが風が吹こうがナイスショットを決めないといけないため、練習に練習を重ねてもなお、このホールで完全な安定を取ることはできませんでした。

途中で「やっぱり自分も暗闇温泉にするべきかもしれない」という考えも頭をよぎりましたが、

・これまでずっと、最初は「竜の頭」という形でプレーを続けてきた
・一発通しとはいえ、極端に難しくなければ一秒でも短縮できるルートを選択するべきなのでは?

これらの要素が重なり、「竜の頭」骨を埋める覚悟をしました。初志貫徹。


また、Wiiリモコンは電池によって動くコントローラーであるため、本番で使う電池をどうするかも課題でした。
自分の環境では、電池の残量が残っていても何故かWiiの側で電池の残量が少ないという扱いになり、Wiiリモコンの反応が悪くなることが何度かあったため、決して軽視できない要素です。

自分は普段から充電池のエネループを使っているのですが、何らかのトラブルが起きた時のために適当に買ってきた市販の電池を試してみたら明らかに軽く、「手首への負担を考えたらこっちのほうがいいのでは…?」という考えも出てきました。

しかし、普段からプレーしていて慣れている重量のほうが本番でも安定してプレーできるだろうと考え、そのままエネループを使うことにしました。
万一の事態に備えて予備の電池も持っていきましたが、そちらを使うことにならなくてよかったですね。

・会場入り後(プロゴルファー猿)

去年のアンシャントロマンの時には、本番前日は会場に行かずに休養日に充てたのですが、今回の出番は前回とは異なり2日目です。
去年とは異なる会場ということもあり、練習部屋も含めた環境の確認と、何より会場までに迷わずに辿り着けるようになっておかないと危ないと考えたため、初日から会場に向かうことにしました。

まあ今回も駅から近いからさすがに大丈夫だろ!と思っていたのですが、スマホのマップアプリが何故か全然違う場所に「note place」と書いてあるピンを立てていたこともあり、見事に迷子になりました。

前日にmiraiさんがXに上げていた会場までの道筋を撮影した動画がなかったら辿り着けたかどうかすら怪しいレベルだったので、もう感謝しかなかったですね。神はいた。


どうにか会場に到着した後は練習部屋でプレー感覚を確かめたのですが、やはり普段の環境とは違いがありました。

まず、自分は普段 RetroTINK-2X Proを使っているのですが、会場で使用するのは5Xのほうだったので、若干ではありますが遅延の差は感じました。
アンロマの時には一切気にならなかった部分なのですが、猿の場合はWiiリモコンの特性上、振ってからゲーム側に認識されるまでに多少のラグが生じるため、タイミングが命なゲーム性もあって少し気にはなりました。

とはいえ、結局は本番の環境に慣れるしかありません。練習部屋の時点から5Xでのプレー感覚をつかむことを心掛け、コースのコンディションを1打ごとに変更しながら、あらゆる場面に対応できるように練習していきました。


それ以上に大変だったのが、センサーバーの設置問題です。

Wiiリモコンの横持ちで操作できるメジャーWii パーフェクトクローザーとかいう神ゲーと違って、プロゴルファー猿は残念ながら、初期のWiiにありがちなリモコン操作を多用するタイプのゲームとなっています。

そのため、できる限り正確にポインティングを行うためにも、Wiiリモコンの反応に直結するセンサーバーの設置場所は非常に重要となります。

自分は普段液晶テレビの上にセンサーバーを設置しているのですが、本番で使うViewSonicは液晶の厚みが非常に薄く、ただセンサーバーを置いただけではバランスが取れずに落下してしまいました。

どうしたものかと思いましたが、もうテープで固定するしかないんじゃない?という話となり、実際に核さんがマスキングテープを用意してくださったことによって無事に固定が可能となり、かなり普段に近い感覚でプレーすることができました。
こういう形でもサポートを行っていただき、つくづくありがたい限りでしたね…


前日を通してひとまず確認したいことは確認し終えたので、体力を温存するために19時ごろに早めに撤収。
翌日の本番に向けて、出来る限り良い状態で臨もうと思っていました。

思っていました……

・本番当日(プロゴルファー猿)

当然ながら帰宅後は早めに寝るつもりでしたが、hachimituさんのロックマンX4はどうしても見たかったので、それを見届けてからすぐに就寝しました。確か23時30分くらいだったと思います。
就寝自体はできたのですが、ここで唯一にして最大の問題が発生しました。

暑すぎました。眠れないくらいに。

午前3時ごろには早くも目が覚めてしまい、その後は窓と部屋のドアを開けっぱなしにしてもなお暑い。
一度起きた後は二度寝ができないまま、時間だけが過ぎていきました。

ただし、自分は冷房に非常に弱い体質であり、実際に本番から数週間前に冷房をつけたまま就寝したせいで、そこそこ重い風邪をひいてしまったという経験もしています。
そのため、暑いからといってここでエアコンをつけてしまうと風邪をひくリスクが生じてしまい、そうなれば当然ながら会場に行くどころではなくなります。

つまり、暑くて満足に眠れない可能性と、冷房を作動させた結果風邪をひく可能性を天秤にかける必要がありました。
そのうえで、自分は前者のほうがマシだと判断しました。

スマートウォッチ曰く、この日の睡眠時間は2時間55分。
眠れなくともベッドで横になっているだけで体調は回復するという話もありますし、とりあえず6時過ぎまではひたすら横になっていました。

結局どうあがいても眠れそうになかったのと、就寝前の時点で1時間ほどスケジュールに巻きが発生していたことを把握していたのもあって、早めに会場に入っておこうと考え、8時ごろには会場に到着できるように家を出ました。


また、前日の時点で練習部屋に配置されているモニターの数に対してRetroTinkの数が足りないことも把握していたので、バカンダさんに「核さんの家にあるRetroTinkが用意できなかった場合、(HDMI出力が可能な)WiiUを練習用に持ってきてもらえませんか?」という依頼も受けていました。

本体を破壊する可能性のあるメジャーの場合は断固としてWiiUで起動したくないのですが、プロゴルファー猿なら本体に影響は及ぼさないだろうし大丈夫だろうとは思いましたが、Wiiに加えてWiiUも持っていくとなると文字通りヘビーなので、無事にRetroTinkを用意していただけてほっとした部分はあります。


本番前の練習では、最初のホールであり、ショットの難易度が最も高い「竜の頭」の練習を集中して行いました。
ルートの違いの影響で、先に必殺ショットを撃つのがバカンダさんではなく自分になります。
それを見越して、音声や解説に関してもまずは自分の画面を優先する流れとなっていたため、レースの見栄えという面でもミスが許されませんでした。

本番では普段と環境が異なることもあり不安もありましたが、直前のカービィをやっている間に横でセットアップを行いつつ、プレー感覚の確認を行うこともできたのは、走者としては非常にありがたかったです。

それも含めて、今回はとにかくセットアップが早かった印象があります。スタッフ・ボランティアの皆様の尽力あってのことですし、ただただ感謝の気持ちしかないですね…

また、去年の冬に行われた、同じくWiiのセンサーバーを活用するゲームである『カドゥケウス NEW BLOOD』のセットアップは、観客席で見ていた自分にとっても「難しい部分は多いだろうなあ」と感じていました。

今回も当時と同じく、テレビから椅子までの間にある程度のスペースが必要になるのかなと予想していたのですが、実際はそこまで椅子を引かなくてもセンサーバーがしっかりと反応してくれた点も嬉しかったですね。
モニターとの位置関係がいい感じになっていたからこそかな、と思います。

・本番(プロゴルファー猿)

本番前はとにかく「竜の頭」が怖かったので、だいぶナーバスになっていました。
走者としてRiJに出場するのはこれが3回目ですが、今までで一番緊張したかもしれません。
単純に寝不足によって、体力と集中力が欠如気味だったのも影響していそうではありますが。

ただ、その竜の頭で雨が降らなかったこと、きっちりとナイスショットを2連続で決められて見せたい(見せなければならない)必殺ショットを見せられたことによって、そのあとは気持ちの面でもだいぶ楽になりました。

ただ、2つ目のホールで「死の谷」を引いた時はヒヤッとしました。
というのも、死の谷では岩返しでホールインワンを決めることで大幅な短縮が見込めるのですが、1ホール目で竜の頭を選択するルートでは、雨が降った場合のみ岩返しが使えなくなってしまうのです。

仮にここで岩返しが使えないとその後の運要素が非常に大きくなってしまい、最悪の場合4ホールで終えることができなくなる可能性もありました。
なので、ワイプを見ていただけるとわかるのですが、ホールが決まってからロード時間が明けるまでの間にめちゃくちゃお祈りしてます。リアルで。

ロードが終わって雨が降ってなかったのを確認した瞬間はものすごくホッとしましたね…
その後はある程度落ち着きを取り戻したこともあり、ほぼミスなく理想的なプレーができたかなと思います。

結果的にはドラゴンくんのパットの巧拙で勝敗が決まってしまいましたが、バカンダさんも自分も大きなミスなく終えられたのが一番よかったですね。イベント本番で悔いの残る走りをしてしまうと往々にして引きずってしまうものなので、そういう意味でも良い思い出にできてよかったなと思います。


ちなみに、最後の「ゴルフですね~」「猿ですね~」は打ち合わせの時に「締めの挨拶はどうしますか?」という話題になり、「せっかくなんで掛け合いしましょう!」という流れで、わりとノリで決まりました。

「笑ってしまった」と言ってくださった方も多く、思っていた以上にウケたみたいでやってよかったなあと思いました。変に面白いことを言おうとせずに自然体でやったほうがウケる現象、あると思います。


あと、打ち合わせの際にバカンダさんが「当日は英国紳士Tシャツを着ていきます!」というお話をしていたので、自分も何か良い服装がないかと思案していたのですが…

カイの冒険Tシャツは去年のブラックフライデーで購入したものです。「カイ」繋がりでどこかで出番があるかもと思っていたのですが、存外に早く出番が来ました。世の中、何がどこで役に立つかわからないものですね。


・解説を担当させていただくまで(剛欲異聞)

2年前の記事で書いていた通り、発売前から個人的にこのゲームに対するモチベーションは非常に高いものがありました。

・神奈子が公式の作品で自機になることはもう2度となさそう
・その作品が自分が好きな2Dアクションという形でリリースされる

この2つが大きな理由ですが、リリースされたら絶対にRTAをやるぞ!と決意していて、実際に発売翌日にはすでに神奈子のRTAを始めていました。

当時の自分の熱の入れようはかなりのもので、発売直後に行われたレイドRTAマラソンの1日目が始まる前に「イベントでやるジーコサッカーはもう大丈夫だから神奈子のRTAやるわ」と言って、普通に配信で神奈子のRTAをやってから本部にレイドするくらいにはモチベーションの塊でした。

ちなみに、ジーコサッカーはそれまで散々やり込んでいたのでイベント本番の前に練習しただけで本当に大丈夫でした。


ただ、ゲーム自体の難易度の高さゆえか、剛欲異聞の走者の数は発売後もあまり増えなかったため、少しでも界隈を盛り上げたいなあと思い、自分が剛欲異聞RTAのDiscordサーバーを開設したり、Discordのフォーラムにおける意見交換にも積極的に参加していきました。

発売後しばらくしてから、SRCでゲームの項目を作ってくださった方が多忙となって管理が難しくなるという不測の事態が発生しました。
自分はそのタイミングで剛欲異聞のモデレーターに加えていただき、その後は実質的なリーダーボード等の管理を引き継いで現在に至っています。

自分がほかにモデレーターを担当しているゲームは

・ジーコサッカー
・TM Network: Live in Power Bowl
・ドアラでWii
・スーパーアーケードサッカー
・ドリームミックスTV ワールドファイターズ

こんなんばっかなので全然申請が来ないため、普通に申請が来て普通に承認できる剛欲異聞のモデレーション業務は、個人的に新鮮な体験でした。


それはさておき、モデレーション業務においては当然ながら村紗のランの承認も行っていたのですが、その中に明らかに別次元の動きをしている人が混ざっていました。

誰あろう、今回の走者・黒井炭酸さんです。

操作が非常に難しい村紗というキャラクターを完璧に使いこなしているのはもちろん、とあるバグに対して「フレーム単位で確認しても成功パターンと失敗パターンの区別がつかないが、タイミングをリズムで把握すれば成功率が上がるかもしれない」と語る旺盛な探求心や、発売から時間が経っても一人でパターンの研究を続けてきた当作品に対する情熱もあり、個人的に大きな畏敬の念を抱いていました。


そして、去年の冬には海外の友人2人と「RiJで剛欲異聞の別キャラクター4人並走ができたら面白そうだよね」という話になった際に、ぜひ黒井さんの村紗を多くの人に見てもらいたいなと思ってお声がけしました。

黒井さんにご快諾をいただき4人並走で応募したのですが、残念ながらその時は落選。
今回のRiJは応募に際して「1人につき2作品まで」というルールが厳格化されたので、前述した通りに冬の段階ですでに応募することを決めていたプロゴルファー猿の並走と、時期的に今回応募するのがベストだろうと考えていたAIポートピアを優先する判断をして、4人並走はまた冬に申し込もうかな、と考えていました。

その一方で、昨年10月のSwitch版発売に伴い、「剛欲な挑戦」というボスラッシュモードが追加されました。
このモードは非常に難易度が高いのですが、黒井さんは研究の末に安定化に成功。
今回は単独という形で応募し、見事に当選されました。

自分としても剛欲異聞が採用されて非常に喜びましたが、何よりもこれで黒井さんの村紗を多くの方に見てもらえる、という点が一番嬉しかったです。

ただし、このゲームはもともと非常に難易度が高いことに加え、村紗の操作は全キャラクターの中でも屈指に難しい。
通常のストーリーモードであれば解説しながらのプレーは可能ですが(体験談)、高難易度の剛欲な挑戦ではさすがに厳しいと感じていました。

実際、自分が神奈子で剛欲な挑戦のノーアイテムRTAをイベントで行った際には、最終戦でパターンが崩れてゲームオーバーになってしまいました。
すなわち、「剛欲な挑戦を解説しながらプレーすると、解説・操作いずれかのクオリティが大なり小なり損なわれる」という実体験が存在したわけです。

自分の場合は単純に解説しながら走るのが好きなのでプレー面でのリスクはある程度許容しているのですが、この大舞台で黒井さんに悔いが残る走りはしてほしくなかったんです。

ただ、黒井さんはもともとRTA界隈にいた方ではないですし、そもそもこのゲームの村紗RTAについて解説できるレベルの知識があるのは、日本人では恐らく自分と黒井さんしかいません。
考えれば考えるほど、「自分がやるしかない」という思いは強くなっていきました。

当然ながら走者と解説の掛け持ちにはリスクも伴いますが、黒井さんの本来のプレーを視聴者の皆様に見てほしいという思いが圧倒的に上回っていたので、迷いはありませんでした。

黒井さんに解説者を探す負担をお掛けしないためにも、採用が発表された日のうちに「解説が必要なようであれば自分がやります!」と連絡を送り、ありがたいことに快諾していただけました。

・本番まで(剛欲異聞)

かつてフルゲーム(全キャラクター通し)のカテゴリーを走った際に、黒井さんから村紗の操作についてのアドバイスをいただいていたこともあり、自分も村紗というキャラクターを最低限動かせる状態ではありました。

ただ、大型アップデートに伴うナーフで「巻き上げ」という優秀な攻撃が使えなくなったこともあり、当時とは村紗の性能自体が変化していました。

そのため、まずは黒井さんの記録動画を見ながら理想的に進んだ場合のパターンを確認したうえで、実際のプレーをDiscordの画面共有で視聴しつつ、それに自分の解説を合わせていく形でリハーサルを重ねていきました。


また、今回の解説に際しては「どのようなアプローチを取るのが適切か」という点に関しても色々と考えました。

一昨年のブラステの時では3人並走、かつ全員の使用キャラが異なるため、あらかじめ「このポイントに差し掛かったらこの解説をする」という引き出しを各キャラクターごとに準備しておき、走者の皆様に見どころに到達したことを自己申告してもらって、そのタイミングで適宜解説の引き出しを開けていく、というアプローチを取っていました。

一方、昨年のアトランチスは操作キャラに差異がないため、理想通りに進んだ場合は全く同じタイミングで同じ話ができます。
そこで、「この3人であれば、少なくとも1人は理想的な流れに近い動きをしてくれるだろう」という想定の上で、最初から最後まで理想的に進んだ場合の解説の流れを何度も練習して頭に叩き込み、不測の事態があった場合はアドリブでカバーするというアプローチを用いました。

黒井さんの圧倒的な技量を考えれば、本番でも概ね理想的な流れに沿った動きをしてもらえる可能性が高かった。
そのため、今回は後者のアトランチスと同じアプローチを取ることに決めました。


方針を決めたらあとは反復練習あるのみ。本番で用いられるパターンに近いものを用いている記録動画を複数用意し、「スムーズに進んだらここではこの話をできるだけの時間的余裕があるな」という点を逐一確認しながら、解説のチャートを練っていきました。

ただし、

・村紗の基本的な挙動(ダッシュとジャンプができない、ループコンボが強い)
・ゲームの基本システム(水ゲージとスペルカード、ランクとレベル、魔法陣の仕様など)

これらの基本的なゲームシステムの説明も、ゲーム開始後にどこかで挟む必要がありました。
しかし、剛欲な挑戦はボスラッシュモードということもあり、それぞれの対戦相手に関する解説や、具体的に黒井さんがどういう凄いプレーをしているのかについても伝えなければいけません。

これらを全て20分程度の尺に収める都合上、普通にやってたらとても尺が足りません。
そのため、例によって超速で解説をしていくことにしました。いつも通りですね。

もちろん、こういうスタイルじゃないと解説が追いつかなくなることがあらかじめ予想できたからこそ、間違いなく自分に向いていると思って解説に自ら立候補した部分はあります。


このゲームの場合、解説の台本を用意したとしても確認する時間が全くありません
そのため、話す内容は最初から最後まで頭の中で覚え込み、通し練習を行う中で自然と言葉が出てくるようになるまで練習を重ねました。
具体的には、8月に入ってからは余裕があるタイミングで1日1回通し練習を行い、RiJの期間中は行き帰りの電車の中でも記録動画を見ながらイメトレをしていきました。
ひたすら反復練習を重ねて再現度を上げられるように努める、という過程が、プレイヤーとしてRTAに臨む場合と非常に似通ったものとなった点はちょっと面白かったですね。


他に気を付けた点としては、とにかく超スピードになるからこそ、解説の内容が全体的に平板にならないように、局所で小ネタを挟んでいきました
自分のスタイル上、ちょっとしたエピソードを挟む余裕自体は計算すれば作りやすいですし、話にメリハリをつける意味でもその部分は意識しています。

あとは、とにかく見どころで想定通りのプレーが出来たら黒井さんを全力で褒める、という点も徹底しました。
あくまで主役は走者の方であり、自分の役割は走者の方の凄さを伝えることと、このゲームに対する視聴者の方の理解の一助となることなので、ここは凄い!という部分で盛り上げることは、どちらの目的を果たすうえでも効果的だからです。
あと、人を褒めて損することは基本的にはないですからね。ポジティブの精神は大事。

・会場入り後(剛欲異聞)

2日目の10時ごろに走者としての出番が終わって以降は、完全に意識を解説のほうにシフトしていきました。

毎日会場に向かう中でラウンジにもたびたび足を運びましたが、そこでは他の解説者の方も入念に準備を進めている様子が見受けられました。

例えば、自分と同じくプロゴルファー猿の後に解説としての仕事が控えていたバカンダさんは、卒論1本分くらいの文量があるテキストファイルをタブレットに用意したうえで、さらに紙のメモも机上に置き、mgiさんのベイグラントストーリーを見ながら最終確認を行っていました。

また、F-ZEROの解説を行う貧弱さんは以前リストリームが行われたイベントの動画を確認しながら入念にテキストの調整を行っており、見ているだけで高い熱量が伝わってきました。

自分もそれまでにしっかりと準備は重ねてきたつもりですが、そうした皆様の様子を見て、あらためて自分も頑張らないとな、と気持ちを新たにしました。

・本番(剛欲異聞)

万全の準備を行ってきたつもりなので、解説に対する自信はそれなり以上にありました。
ですが、今回は黒井さんの晴れ舞台であると同時に、剛欲異聞のスピードランコミュニティにとっても非常に大きな意義を持つイベントでした。

黒井さんにとって良い思い出にしていただきたいという思いと、1人でも多くの方に剛欲異聞に興味を持ってもらう絶好の機会であるという感情が重なり、本番前はかなり気負っていたというか、黒井さんにも「だいぶ緊張してませんか?」と指摘されるレベルで緊張していました。

普段であればいったん本走が始まってしまえば最後まで集中できるのですが、今回は開始以降も多少なりどこかフワフワした部分があったので、いつも以上に気負いはあったのでしょうね…

それでも、何回も反復練習を重ねてきたことによって、無意識で喋れる「型」が出来上がっていたことも手伝ってか、大きな破綻もなく最後までほぼ事前に用意してきた通りの話ができ、アドリブが必要になった場面でも問題なく話をまとめることができました。

黒井さんなら本番でも大きなミスはしないだろうという信頼があったからこそ、このスタイルを取ったわけですが、つくづく大正解だったなと思います。


また、最後の「水墨画の世界から、ゲームブックの世界へ皆様をご案内します」という『Ruina』への繋ぎは、本番の直前に練習部屋でRuinaについての情報を調べている中で思いつきました。

練習部屋でご一緒したRuina走者のororoさんが気さくに話しかけてくださったことで緊張がほぐれた部分がありましたし、そのororoさんに良い形でバトンを渡せたことと、言い回しを色々な方に褒めていただけたことがとにかく嬉しかったです。


今回の解説は総じて上手くまとめられたかなと思いますが、中には「失敗したなあ」と思った部分もいくつかありました。
具体的には、黒井さんの声が配信に乗っていないことを知らなかったため、最後の隠岐奈戦でパターンが崩れていることが視聴者の皆様に伝わっていないことに、後で配信を見返すまで気づくことができませんでした。

また、この事態は想定していなかった(頭の中の台本にはなかった)ため、とっさに「ガチ打開」というとあるローグライク作品でしか使われない用語を口走ってしまいました。
そのせいで状況が視聴者の方に伝わりにくくなってしまったのは、アドリブとしてはかなりの失敗だったなあと思います。

剛欲な挑戦のHARDはポポロ異世界みたいなもんだけど、剛欲異聞はポポロ異世界じゃあないんだわ。


また、今回のRiJでトップバッターを務めた『Celeste』で解説を務められたtokikumoさんがたびたび発していた「落ち着きましょう」という言葉が個人的に強く印象に残ったので、アドリブが必要になる≒何らかのミスが発生した時には、間を取る意味と黒井さんへのサポートの二重の意味で使えるなと思い、本番でも何度か使用しました。

ただ、そもそも今回は黒井さんにプレーに集中してもらうために、解説の声はヘッドセットに入らないようにしてもらっていました。
なので、そもそも「落ち着きましょう」と声をかけても黒井さんに届くはずがなかったんですよね。

一番落ち着く必要があったのは解説のお前だよ。


とはいえ、総合的には解説としても非常に満足のいくものにできました。
それ以上に、何よりも黒井さんのお役に立てたこと、黒井さんのプレーのハイレベルさを多くの方に理解してもらえるお手伝いができたことが一番嬉しかったですね。本当によかった…!

・あとがき

あらためて振り返ってみても、走者としては一切のミスなくプレーすることができ、解説としても十二分に満足のいく喋りをすることができました。

1年ぶりの大舞台を良い結果で終えることができたこと、走者としても解説としても良い思い出を作ることができて安堵しています。


また、自分は学生時代に滑舌について同級生にさんざん弄られた経験がありました。
そのため、こうしてRTAのイベントに出場するようになるまでは、自分の滑舌にまったく自信がありませんでした。
そんな自分の解説について、多くの方が「聞き取りやすい」と言ってくださったことが個人的には意外でしたし、つくづく嬉しかったです。

さまざまなイベントに参加させていただきながら場数を踏んだことや、今回の解説に対して準備と練習を重ねてきてことが結果として現れたのかな、と思いますし、今まで自分なりに頑張ってきてよかったな、としみじみ感じています。
RTAを通じて自分の中でのコンプレックスをひとつ解消できたので、あらためてRTAという文化や、この界隈に携わっている皆様に対して感謝の気持ちでいっぱいです。


ユニークゲームのRTAを中心に活動するための最後の一押しをくださったバカンダさんと一緒に、RiJの舞台でプロゴルファー猿で並走できたこと。

剛欲異聞スピードランコミュニティの誇りである黒井さんのプレーを解説させていただき、たくさんの方の前で剛欲異聞に対する情熱の集大成をお見せできたこと。

どちらも決して大袈裟ではなく、自分にとっては一生の思い出の一つとなりました。

バカンダさん、核さん、黒井さん、そして自分のプレーと解説をご視聴いただいたすべての皆様。

本当に、ありがとうございました!


・振り返り動画(8/19 20時に追記)

今回のプロゴルファー猿と東方剛欲異聞について、それぞれの参加者が対談しながら振り返りを行いました。

今回の記事では紹介しきれなかった話もありますので、お時間のある時にでもご視聴いただけたら嬉しいです!

・プロゴルファー猿

・東方剛欲異聞


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