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星野源『地獄でなぜ悪い』とVtuber名取さなが歌ってそこに付加したもの

このnoteというアプリを入れて数年間何も書かずにいたが
今私の中で生まれた大きな感情を書き留めておきたいと思いペンを取る。

推しであるVtuber月ノ美兎がその活動の中で、このnoteに自身の体験を綴ったことを読むため──それが私がこの場所に来た経緯である。
いわゆるROM専というやつだ。
私の主な活動場所はTwitter(現x.com)である。
SNSに身を寄せてから、このような長文を書くのは実に十数年ぶりとなる。
稚拙な文章となるだろうが、できるだけ伝わるように丁寧に書こうと思う。

そのTwitterにおいて最近
私は星野源の『地獄でなぜ悪い』という一つの楽曲を知る事となる。

私は星野源という人物についてほとんど知らなかった。
『恋』でなんとなく『面白い歌を歌う人だな』という感想を抱き
アニメ『SPY×FAMILY』のED曲、『喜劇』を聴き非常に含みのある
鮮やかな表現で登場人物が紡ぐ物語に静かな色を加えたことに感銘を受けた。

しかし残念ながら私のアプローチは
多少の曲を聴きかじる程度で終わっていた。

さて──先日あるVtuberがTwitterでYouTubeプレミア公開の予告をした。
それが星野源の『地獄でなぜ悪い』の歌ってみた動画であり
歌うは私のもう一人の推しである
Vtuber名取さなだった

私はこの曲を聴いたことがなく、どのような曲か
またその名取さながどのように歌い上げるのか少し胸がざわついたのだが
はやる気持ちのまま名取さなの歌ってみた動画のリンクを貼る前に
まだしばらく星野源の話を続ける。

私が初めて『地獄でなぜ悪い』を聴きながら公式動画のコメントで得たのは
自身も出演する同名映画の主題歌である一方で
闘病時代と苦しく過ごした過去が色濃く反映された曲であるということだ。
だが何度聴いても彼はアップテンポで踊るように歌い上げる。

歌詞は彼が経験した辛い過去・悲しい記憶を辿る。
そして逃げた夢の中や窓の外に憧れた想像にぼやけた世界に手を伸ばす。

だが彼は知ったのだろうか。
その嘘も作り物も、世界も変わらず"地獄"だということに。
世界は人間が作り上げたたくさんの嘘と作り物でできている。

ただ彼がその地獄を行く歩調はとても軽やかだ。
何故だろう。
彼の言葉の中に彼の背中を押す温かい人の影を見た気がする。
彼を支えるもの、そこから掴んだ確信や強さを言葉の中に隠して
彼は地獄を踊るように進みつつも
どこかで動けずにいる人にも力強い背中を見せて歌を届ける。

──嘘でも作り物でもいい。
──動けない逃げられぬ場所でもいい。
──いつか明日を掴んで立つと。
──生きて『同じ地獄で待つ』と。


すごい歌だと思った。
そしてこの曲を大事だと、すごく好きだと語る名取さなに想いを馳せた。


少し長くなってしまったが、私が推している名取さなというVtuberについて
ここまで読んでくれた貴方にも知ってもらいたい。

まずは彼女が公開した動画を見てから、また私の文章にお付き合い願う。

Vtuberとは仮の姿(Vertual)で主にYoutubeで活動するスタイルの配信者だ。
そのバーチャルな仮の姿にはキャラクター性があり
作られた設定により演じられる部分と
元より配信者自身が持つ性質が混じり合い
リアルな姿のYoutuberにも非実在のキャラクターにも無い
非常に稀なバランスの魅力を確立した新しい表現方法である。

名取さなも例外では無いが、
彼女は企業や団体に属さないいわゆる"個人勢"というもので
企業勢に用意されたガワ(仮の姿)の設定に左右されることとは対照的に
自身の設定によって自身の表現したいものに限りなく近い姿で誕生している。

そうして生まれた『名取さな』は
( 本人いわく本名──「顔出ししてYoutubeしてます!ジタバタ」 )
バーチャル世界に存在するサナトリウムで働くナースだ。

しかしそこには少し隠された設定があり、それはナース『名取さな』を
『なりたかったわたし』だとする病室に伏すもうひとりの少女の姿にある。
病室から動けない『わたし』と、明るく視聴者を楽しませる『わたし』と。
彼女は弱さと強さという二面性をわけてかつ同居させた
個人勢でも少し珍しく非常にエモーショナルな存在である。

Twitterでの当時の衝撃──興味がある方は2018年10月13日の彼女の無題の動画を


ここで勘の良い方は少し引っかかった部分があったかもしれない。
彼女は作られた存在で、窓の外に憧れた存在であり
その時彼女が自身に込めた想いと
『地獄でなぜ悪い』で星野源が込めた思いと一つになって重なることに。

そうして見ると彼女の核たる部分には
『地獄でなぜ悪い』が生まれ持ってすでに息づいていたのがわかる。
それどころかナースとしての『名取さな』が生まれた
大きな大きな一因であると思うのはいささか考え過ぎだろうか。


病室から生まれた『作り物』は今や明日を掴んで立とうとしている。
個人勢というセルマネージメントに苦慮しながらも
名取さなはVtuber好きの間では今や言わずと知れた存在になりつつある。

多くのVtuberと交友関係にあり、同じ黎明期を支えた個人勢達や
冒頭で触れた月ノ美兎や彼女が所属するにじさんじを初め
多くの事務所の垣根を超えた交流は多岐に渡り
彼女の魅力を示す大きな要素となっている。

また企業とのコラボも盛んだ。
同じ名を持つ名取市と献血促進コラボをしてもうすでに4年となる。
那須どうぶつ王国とはCM制作に始まり
今年は彼女のラッピングシャトルバスも走っている。

文化放送ではメインパーソナリティのラジオ番組を持ち、
配信で見せる彼女らしさと彼女を支えるファンの愛しくも可笑しくもある関係は
一つの配信者の理想形を示している。

歌を歌い続けアイドルとしての一面も持ち、多くの楽曲を携えライブを行う。
もうすぐバンドを引っ提げ初の生演奏のライブに臨むところまで来た。



彼女は本当に階段を駆け上がるようだった。
その彼女のアイドル性が、"偶像でもいい"という想いを
嘘でも作り物でもいいと歌う『地獄でなぜ悪い』に付加するまでに至った。


私はVtuber好きと言っても当時も今もアーカイブを中心に
気ままに視聴者になるような人間で
今まで本当に推しと呼んでしまっていいのか分からないでいた。
それでも確かに推しと呼びたい衝動に駆られ、今はそう叫びたい。


自分語りになってしまうが、私は何度も私を投げ出してきた弱い人間だ。

いつからか──
自分の殻という名の部屋に閉じこもり痛みから逃げる毎日を送ってきた。
そしていつしかその床もガラガラと崩れ始め
私がうずくまるすぐそこまで崩落が近づくのをただ力無く見ていた。


そこへ彼女の歌が窓から舞い込んできた。
その歌に込められたメッセージと彼女が歌った意味に涙した。
涙を流すだけではダメだと思った。
立ち上がりたいと思った。


彼女は星野源と共に歌う。

──嘘でもいい。作り物でもいい。
──アイドルとして"虚像"でもいい。
──地獄を進む勇気は、きっと悲しみに塗れた記憶に勝つことができると。
──遠く無い場所でうずくまる君と同じ地獄で待つと。

これだけの歌を聴いてどうして泣いてばかりでいられようか。
どうしようもなかった私が立ち上がりたいと思うに至る
大きな存在となってしまった彼女が思い起こさせてくれた激情と共に
一歩を踏み出すまでの御守りとしてここに書き留めることとする。

もしここまで読んでくれた人がいて興味を持ってくれたら
どうか名取さなというVtuberのことをもっと知ってくれたらと思う。

このnoteにも同じようにその出会いに激情に包まれた方々が
素敵な文章と共に彼女に対する思いの丈を書き綴っているので
そちらも興味がありましたら。

それでは
彼女と彼女と共に歩む人たちと
これから立ちあがろうとする人たちの見据える道が
どうか繋がっていますように。
どうかいつも輝かしくありますように。


20240908
高野紗龍(紗龍、saryuちゃん)

参考:
wikipedia「星野源」「地獄でなぜ悪い」
natorisana.com
名取さな非公式wiki
ピクシブ百科事典「名取さな」
Twilog

歌詞の意味は独自の解釈も含みますことをお許しください

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