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素手なら勝てる? Ver. 1.20 (グローブは素手より危険)

僕が子供の頃から言われ続け、信じられている神話です
でも試合では勝ったところをあまり見た事がない

今の四十歳代までの人は信じないかもしれませんが、昭和中期の頃はまだ空手で人を殴ると説明できない神秘の力により、一撃で人のみならず牛も殺してしまうと信じる人がいた

一撃で殺すんです、冗談や笑い話ではありません
半信半疑、見たことはなくてもなぜか信じる人は多かった

今でも霊力や神秘の力を信じる人はいます

それを信じる人の割合が変わっただけです

何が正しい理解に貢献したかを考えると極真空手が一番だと思います

極真空手は漫画家梶原一騎とともに発展した経緯から、商売上の嘘も多く散りばめられています

何にでも光と影はあるもので、その大げさで盛られた表現や嘘を少年達は素直に信じ、限界に挑戦しました。限界を超え、またその限界を超える事にチャレンジしました。

その結果、現実に信じられないような事を成し遂げた選手を数多く輩出しましたのは光の部分です

嘘から出た真、瓢箪から駒が出た

もう一つの光は顔面無しの限定ではあっても直接打撃の空手を普及させた事にあります

それまでは一撃で殺してしまう危険で得体の知れないものだった空手なのに、お互いに腹を殴り合っても顔面を蹴っても死んだり、ましてや一撃でなど死ぬ事は一度たりとも無かったのです。今考えると当たり前でも当時は事実を確認する方法が無かったのです。それでもまだ極真は邪道で伝統派の名人なら一撃で殺せるに違い無いと疑う自分がいました。笑

今では誰も驚くことなどないフルコン空手ですが、これが現代空手の1ページとなったのは間違いのない事実です

ただこの極真フルコンルールは手による顔面攻撃が禁止されており、キックボクシングや町中の喧嘩で敗退する事実が数多く目撃され、「実戦に弱い」と揶揄されだし始めました

大山館長や梶原一騎にダンス空手と揶揄された寸止め伝統派空手はここで一気に勢いを取り戻し、UFCで伝統派出身の堀口恭司が活躍するに至り実戦には素手の顔面攻撃に強い伝統派を印象付ける事に成功しました

と同時に極真空手も素手で顔面を殴れば一撃必殺なのだと、事実を確認できない事から依然として妄想も膨らみ続けました

極真空手の前身は大山倍達の大山空手で、普及の為に他流試合を積極的に行いました。ムエタイにも果敢に挑戦し弟子の黒崎、中村、藤平が二勝一敗の成績を残し対外的なメンツは保ちました。ここでも素手の戦いを希望していたのですが認められませんでした。大将格の黒崎は完敗、中村は弱い相手、藤平だけが予想を覆す形となりましたが、実際に戦った三人は信じていた空手に疑いを持つ結果となったはずです。それが例え素手であったとしても。

その証として黒崎健時は空手を捨てムエタイへのリベンジを誓いキックで藤原敏男を育て、藤平もキックに参戦した。実際に戦った黒崎らは空手の限界を悟ったかのように見えた

しかしここに一つの疑問がある

今なお続く空手の素手一撃必殺神話、素手であれば勝てたのでは、だけど試合である以上グローブ着用を求められる、だから空手は力を発揮できない・・・

だが、本当にそうなのだろうか、これまでに猪木対ウイリー・ウイリアムスが素手だったらとか、OFG(小さな薄いオープンフィンガーグローブ)なら空手も勝てると言った話がある

本当にそうなのだろうか、実はそこに大きな誤りがあった事に気付く者は少ない


大きな勘違い

これまでに空手が素手でムエタイやラウェイに挑んだ例はある。では結果がどうだったか。勝つ事もあったが神秘の力で連勝に次ぐ連勝とは行かなかった。むしろほとんどが敗退している。このノートを書くきっかけになったのも物江勝広と言う和道流空手二段で後にキックボクシングでフェザー級新人王を取るような実力者が素手でルンピニー1位のノンカイに2Rで敗退していたから。素手で顔面有りでも空手は弱いじゃないか。伝統派でもやはり空手は弱いのか。

そこで気付いた。空手が負ける理由に。

素手対グローブ

素手でやっても勝てないとなるとやはり空手は弱いのか

いや違う

全くの勘違いだった

「グローブを付ければ有利になる」

経験者なら理解してもらえると思うが、素手でパンチを振り回す事は難しい、怪我のリスクが高いからだ。その為空手は拳骨を徹底的に鍛える事が昔の常識だった。ただどれだけ鍛えても無闇に振り回せば鍛えていない場所に当たり、力が大きければ大きいほど手の損傷から免れる事はできない。だから空手のパンチは鍛えた拳頭や掌底、手刀などを正確に当てる攻撃になる。

それと比較してボクシングやキックボクシングなどグローブを着用したスポーツではしっかりバンテージで拳を固め、その上にまたグローブで拳を保護する。こうする事によって多彩なパンチを自由自在に放つ事を可能とし、ヒジや頭でのブロックからも拳を守ってくれるのでフルパワーで振り回す事ができる。そんな打ち方は素手ではとてもやる気にならない。空手の猛者でも立木やブロック塀を素手でフルパワーの乱れ打ちができる人なんていない。考えただけでも恐ろしい。

結局空手家が素手なら勝てると思ったのは大きな勘違いで、グローブを付けて拳を保護し、その技術を磨いたボクサーにはパンチ技術で叶うはずが無かったのだ。グローブはパンチの威力を損なうものではなく、装着して手を守りながら武器化させるものだったのだ。空手家は思い込みからそのメリットまでは気付かなかった。多彩な打ち方でフルスイングできるメリットに気付くことなく、素手の方が強いと勘違いしていた。

他にもグローブは相手攻撃のブロックに使用したり、その質量と保護機能を利用して素手では硬くて殴れない頭蓋骨や頬骨、顎骨を叩いて脳を揺らす事に利用したり等、素手では不可能な事を可能にした。

本来の空手はバンテージもサポーターも無い条件ではボクサーやキックボクサーより強いかもしれない。強くなければいけない。スポーツ選手の技術は素手の戦いは想定していないから。だから空手は日頃からサポーターなどを一切付けてはならない。付けるならそれは空手ではない。スポーツ空手だ。

ベア・ナックルボクシングと言うのもあるが、あれは次の試合と言うものが可能なのであろうか?試合を見ると、彼らは素手で本当に打ち合っている。おそらく金欲しさに出場しているのだろう。たぶん次の試合の事は考えずに。拳が保つかは運任せ。昨今のOFGマッチにも同種の臭いを感じてならない。

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