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井上尚弥がネリをフィニッシュしたヒットポイントはアゴではありません

一部ネリ戦のフィニッシュはアゴを打ち抜いたとする解説があります。
細かい所を見るのが格闘技の楽しみです。

あの位置から、もしアゴにパンチがヒットしていたなら顔は横に倒れたようになるはずですが、この画像を見ると横に回転しています。

グローブのナックル部分はテンプルの高さにヒットしているようですが、テンプルにヒットしていたら顔は回転しないでしょう。そのまま横に移動したように吹っ飛ぶはずです。

このように顔が横に回転すると、頭蓋骨内に浮かぶ小脳には遠心力が作用し、頭蓋骨内で大きな衝撃を受けます。最も効率の良い力点となるのは引っ掛かりがある、最大外周を形成するチークボーン(ほお骨)となります。

小脳は延髄を挟んでほお骨と対極に位置します。ほお骨に打撃を加えると、延髄を中心軸として顔が横に回転します。恐らく頭蓋骨内に浮かぶ小脳は位置を変えず、取り残された状態で回転の最終地点で衝撃を受けます。顔が元に戻った際に再び衝撃を受けるでしょう。仕切られた箱に入った物が、箱を回転させる事によって仕切りにぶつかり、最後まで回転して戻る際に反対側の仕切りにぶつかる様子を想像してみてください。

ボクシング解説ではほお骨にヒットするパンチを大雑把にテンプルと解説する人が目立ちますが、どこを見ているのでしょうか。このネリへの井上尚弥のパンチもアゴだと思っている人が多いようですが、アゴなら顔は横には回転しません。

サウスポーに対してワンツーよりも「いきなりの右」を多く出す理由もきちんとした理屈の上で使用されています。

格闘技は「技」を見るもので、反射神経やパワーの怪物を見るものではありません。その怪物を「技」で倒すのを見るものです。

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