那須川天心選手はなぜKOできないのか
ダウンの構造はこちらで詳しく述べていますが、ここでは那須川天心選手についての考察を簡単に行いたいと思います。
元プロボクシング世界チャンピオンの具志堅用高さんは、「なぜ教えてあげたフックを試合で打たないのか」と発言しました。
前述のnoteで述べたように、ヒトをダウンさせるには小脳を如何に効率よく揺らすかです。そのために、直接的に小脳の場所を叩くより、テコが最大限作用する場所を叩く必要があると言う話でした。
試合の結果を見れば、アゴ、頭頂部、頬骨への加撃でのダウンが多い事が分かります。医学的、物理的にどのように作用しているのかは分かりませんが、結果から見れば小脳から遠い位置であることから、物理法則の結果であることが推認されます。
手品であるスプーン曲げの種明かしを見ると、やはり物理法則を極限まで精度を上げた結果と言う事です。やみくもに力を込めてポイントを殴るのではなく、アゴならアゴ全体ではなく、アゴの先端のピンポイントに加撃するようにすれば効果は最大限になるのです。これを精度と言っています。
ロッタンのようなベテランになると太い首と慣れが力を逃し、小脳をサポートする打たれ強さがありますから普通に殴ったのでは倒れません。ウェイトトレーニングのようなパワーを付けても倒れません。物理法則を最大限に活かすしかありません。
僕はパンチでヒトを倒したのは一度しかありません。フルコン空手の顔面なしですから当然ですが、一度、左ストレートかフック気味か忘れましたが、アゴの先端をかすめてしまい、相手はストンとダウンしました。こちらは全く力んでいない状態でした。かすめると言う事はテコの力点のベストポイントに加撃した事になるのでダウンしたと理解しています。
ボクシングやキックボクシングではパワーを付ける為に筋肉を付ければ、結局体重増となり、個人としては強くなっても競技としては階級上で戦う事となり、決して有利にはなりません。だからポイントを的確に素速く捉える為にスピードが重要になるのです。手及び全身の質量が同じなら移動速度が早くなれば作用する力を大きくする事ができます。
ここに遠心力を利用する事でさらに速度が上がり、倒す力が生まれるのです。具志堅用高さんが言うように天心がフックを使えるようになれば、必ずKO率が上がるはずです。
でも判定であっても勝ち続ける事が大事です。
そして井上尚弥に届けば最高だと思います。