ガンを取ったと言い張るババサマ


軽い肺炎だったババサマは、

入院中に痰を機械で吸われたそうだ。

お見舞いに来た私に、ババサマはしきりに言った。

「看護師が来て、私の喉にあるガンを取って行った!」

と。

よほど、痰を取ることが苦しかったのだろう。

その苦しさは、思ってもいないポジティブな出来事に捉えられていた。

私が痰を取ったんだよ。と言っても、ガンと譲らなかった。

あくまでババサマの中では、ガンを取ったのだ。

悪魔の話は、しないかわりにガンを取ったと言い張るババサマ。

私は遠い目をしながら、そっと病室から外を眺めたのだった。

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