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超歌舞伎2022《永遠花誉功》現地鑑賞の感想①

超歌舞伎2022《永遠花誉功 [とわのはなほまれのいさおし] 》4/29(金)16時回を現地鑑賞しました。その感想です。
 
超歌舞伎は前に配信で拝見したことはあったのですよ(《千本桜》を)。
なのでどんなものかは知っていて、今回「観ませんか」と仰っていただいて有難くウッキウキで参りました……
なお、せっかくの現地体験で観たものを、配信視聴の映像で上塗りしてしまうのを恐れて今年の配信は観ておりません。 記憶違いは平にご容赦っ…

 
会場は幕張メッセのイベントホール。
席の並びは2席続いて1席空け、という感じで、チケットの席を探すとブロックは真ん中、左右位置もどセンター!(いいお席をありがとうございまぁぁす……!!!)
席に寄ってみると、隣席の方は、超歌舞伎の法被を羽織ってバッグに超歌舞伎のキーホルダーをじゃらんじゃらんに提げペンライトをスタンバイした【ガチ】筋であった。わ~~すみません隣がポッと出のやつですみません~~ お誘いくださった方であれば一緒にフィーバーできたでしょうに……そのぶん精いっぱい拍手するんで…!!
 
平らな床に椅子が並び、だいぶ高めの舞台を客が見上げるかたち。浮世絵で見る歌舞伎鑑賞もこういう感じだよねえ!!マス席でさあ!! と始まる前から興奮しました。
 
本編前に中村獅童丈のご登場。(以下、獅童さんとお呼びする)
映像で観ててもわっけーなと思ってたけど超歌舞伎の獅童さん、すごいよ……20代みたいな若さだよ……(※歌舞伎座で見ると30代には見える)
なんでしょうねこの若者感は? 座頭としてその身にかかる責任をそれ以上の意気込みで押し返すパゥワーがオーラになって身を包んでおいでなんでしょうかね?? “場をあっためる” ていう役割を、座頭みずから張って出るっていうサービス精神な……ほぼ出ずっぱりなのにね!?
 
で、会場の客は声を出さないわけですが、それでも獅童さんのコールに対して拍手やペンラでレスポンスはがっつり返しているし、配信の視聴者もガンガンにコメントを入れていく(※会場に居てなおログインしてコメント入れる強者もいらっしゃる模様)。こういう反応の返し方がさぁ……あるわけですよねぇ……(※例の大向こう騒ぎのやつを思いつつ)
 
思うに(そして《中村仲蔵》などを観るに)、元々の大衆文化の中での歌舞伎はこういう感じなんだろうなという気がする。ヤジも賞賛もばんばん飛んで、客ウケが良いか悪いかがその場でわかる。ひとりの客の発言が周りの客にも波及して、呼び名や掛け声が定着する。自分が行った日にどんな客が来ているか、それは実際の舞台でも鑑賞の満足に大いに響くところだけれど、超歌舞伎でも同じで、ただ「他の客の反応を楽しみにしている」という点では、実際の舞台よりも優れてると思う。実際のだと「何をしてくれるか」ではなくて「何をしないでいてくれるか」に徹する気がするから…(よく拍手をする方が近くに居ると気分が盛り上がる、というのはある。しかし云ってしまえば極論「無で居てください」だと思うんだよね、私個人の感覚というより見える限り一般的に…)
 
本編。スタートは、都を見下ろす高い視点からグワーーッと滑空して高速でびゅんびゅん飛んでいく。カメラの揺らぎも入っていて、こーれは大画面で見るほうが絶対楽しい。このサイズで見ると遊園地のアトラクションの気分。(たぶん今までの超歌舞伎を観てるとキャラの重なりなんかにオォッと思うとこがあるんでしょうなぁ…!という気がした)
 
この映像で、物語の舞台が示されて(歌舞伎だと浅葱幕の前の、台詞で為される説明を映像で見せる感じですな)、観客の意識がスムーズに本編に導かれる。
 
(【】内のあらすじは公式サイトより)超歌舞伎公式サイト ニコニコ超会議2022 (chokabuki.jp)
【時は天智天皇の御代。蘇我蝦夷子は、自ら帝の位にのぼろうと陰謀を企てていた。だが父親の陰謀を知った蘇我入鹿(澤村國矢丈)は、翻意するように促すが、これを聞き入れないために、入鹿は父を討ち、謀反人である蝦夷子の首を安倍行主(中村獅一丈)に差し出す。
その上では入鹿は、父の菩提を弔うために出家すると申し出るが、実はこれは入鹿の策略。父親が帝の位にふさわしくないと考えていた入鹿は、父親の陰謀を利用し、自らが帝になろうと画策して、善人を装っていたのであった。そして行主を不意打ちにすると、その大望を明かし、不敵な笑いをみせるのであった。】
 
開始からこの入鹿の正体あらわしまでが体感5分である。テンポが!!!早!!!
といって急いでるとか雑だとかでなく、企み事をしていた悪人がガバッと牙を剥く瞬間をクローズアップにして捉えた、というドラマ的なピンポイント性を感じる。古典歌舞伎でやると事に至るまでに3倍くらいの手順とセリフが入るのではないかと思う。やってることは歌舞伎の手法だけどテンポはテレビ・動画のスピードだ。調整がうまい。
 
入鹿から抜き打ちに腹を刺された安倍行主、もとい獅一丈がさぁ…言っていいすか……エロいんすよ……… つるりと白い、お雛様みたいな淡泊なお公家顔に弱々しく苦悶の色が走って、顰めた眉が痛ましく、呼吸の度に苦しげに肩が動いて虫の息……って思ってたら一矢報いようと入鹿に斬りかかるからびっくりしたけどね!!? やるじゃん!!細い身体に似合わぬガッツ!!
 
繰り返すけど本編開始体感5分で「いいもん観たなー」である。役者さんの肉体てすごいね。芝居の肝だね。
 
【一方、太宰少弐の下館では、太宰少弐の未亡人である定高(中村蝶紫丈)の前で、桃の節句を寿ぐ舞を、定高の娘の苧環姫(ミクさん)が披露している。】
 
舞台変わってお屋敷の座敷。ミクさんが居るのは後方上手の、部屋奥の暗がりのように見えるスクリーン内。蝶紫丈の奥方に、娘のはずのミクさんが敬語で話すので、歌舞伎だったら不思議でもないんだけど緑髪のツインテールのミクさんが言うので現代性が忍び込んで、韓国映画ぽいな……と思った。あのお国は歳が一つ上なだけで敬語を使うからね… 現代日本よりも歌舞伎の世界に近い文化なんだなぁ、と思い至るなどした。
 
ミクさんの、まぁまぁ一本調子なボカロ声も、改めて聴くとすごい女形の声と親和性高いねえ!!? 女形の、抑揚の薄い、一音一音同じ圧力で押し出し続けるような声の出し方に近いんだねぇ…というのは、今回初めて気付いたことです。そういえば女形に限らず、子役の喋り方も似てる。こっちは声が甲高いぶんいっそう電子音声に似る。
 
ここへ入鹿からの上使として、金輪五郎今国が現れる。
主役の獅童さんである。

(続く)

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