『若き仕立屋の恋 Long version』~濃密な60分間
みなさん、こんにちは。
6/23(金)より『若き仕立屋の恋 Long version』の上映が始まります。
心臓の鼓動が全身を駆け巡る60分間。
是非、心をドレスアップ(するイメージ)してご鑑賞ください。
アジア映画大好きのアジ担としては、本作を当館で上映できるなんて幸せです。
ウォン・カーウァイ監督作「WKW4K」「欲望の翼」に続き、本作も全力でおススメします。
昨日のブログで、同じくアジ担スタッフが素晴らしすぎる内容の作品紹介をしてくれましたので、私が言うことは何もありません。
でも、私もこの作品の素晴らしさをみなさんと共有したい!!
なので、私は作品を観て自分なりに思ったことを書きたいと思います。
個人的感想になりますが、この想いが「みなさんに届け」という気持ちでご紹介します。
あくまで個人の感想なので、ゆるく、温かい目で読んでくださいね。
本作はまずコン・リーの圧倒的【美】が目を引きますね。チャイナドレスを優美に着こなし、真っ赤な口紅、きれいに引かれたアイライン、ネイルと指輪が光るすらりとした指先の手、年下の男性を翻弄する言葉や仕草。
後半に見せる弱い部分でさえ、綺麗に見える。すべてが完璧の女性です。
こんな素敵な大人の女性にどうしたらなれるのか― 憧れます。
香水かボディクリームか、いい香りがしています。【妄想】
そんなコン・リー演じる高級娼婦のホアに恋心を抱く、年下イケメン仕立屋見習いの青年チャン役、チャン・チェン。
こんなイケメンにドレスを仕立ててもらえるなら、何着でもオーダーします!!
しかも、自分の手がメジャー代わりで寸法を測るなんて、最高のシチュエーション。
「一人前の仕立屋になるには、女性をたくさん知ること」を忠実に守って得た特技なのか。
髪につけたポマードと、一心不乱にホアのドレスのアイロンがけをして汗だくになった、その汗が混じりあった匂いがしています。【妄想】
本作を観ていて、なぜかすごく「におい/匂い」を感じたんです。
チャンがホアの部屋を訪ねてくる道の外の太陽のにおい、ホアの部屋の空気のにおい、チャンのポマードのにおい、アイロンの湯気のにおい・・・
そして何より、すべての空間に【エロス】を感じるんです。
言葉では説明が難しい。雰囲気でいうと、「においを触っている」みたいな感じです。
これはきっと共感してもらえないですね。。。
【エロス】というワードが出てきたところで、これは言っておかなければ・・・
『映画史に残る名シーンがまた一つ誕生しちゃいました!!』
その衝撃たるや、「さらば、わが愛 覇王別姫」の程蝶衣の『ありがとう、姉さん』シーンに迫る勢い。【私的に】
こんなシーンを撮るウォン・カーウァイ監督って、天才だけどちょっとヤバい人。
このシーンはLong versionで追加されたシーンです。
しかし、なぜこのシーンはカットされたのでしょうか?
復活して本当に良かった。
あれがエロアイテムになるなんて、想像もしなかったです。
今回のLong versionで初めて観ても、絶対にわかるシーンです。
体中の血液が、全身をものすごいスピードで流れて行きました。
心臓のドキドキが止まらない!!
ここはみなさんに共感してほしいところです。
本作の原題は「愛神 手 The Hand」。
これすごく重要。どんな場面においても、「手」に注目です。
その「手」には、それぞれの、その場面においての感情が表れているのかな。
今、この人はどんな気持ちでいるのか。
それを、手から読み取るなんて― 監督にやられっぱなしです。
私はチャンがホアのドレスを愛でる手が好きです。愛情(と欲もあるのかな)が見えます。
私はウォン・カーウァイ監督が描く「一方通行」の恋が好きです。
チャンがホアに寄せる一途な愛。
チャンは、別の男性に抱かれているホアを想い、ドア越しにどんな気持ちでいたのか。
自分が仕立てたドレスを脱がされていく、その行為そのものに興奮を覚える、そんな気持ちだったのか。
自分が仕立てたドレスを着ていることこそが、行きずりの男より自分の方がそばにいる感覚なのか。
そんなことを、私は妄想していました。
妄想こそが【エロス】なのではと―。
純愛とエロスがひとつになるって、想像を超えて神秘的に感じてしまう。
コロナ渦で他人と触れ合うことができなかった約3年間。
最近は「ソーシャルディスタンス」という言葉も耳にしなくなりました。
本作の短編が香港でSARS の流行時下において撮影されたことを考えると、
手を繋ぐこと、握手をすること、肌から感じる体温から遠ざかっていた期間を経て、監督が当時感じていた「触ることについての映画」を観れたことに感謝です。
私の個人的感想にお付き合いいただきありがとうございました。
みなさんの感想も聞きたいです。
静岡県では現在のところ、当館だけ上映が決定しています。
是非、シネギャラリーへお越しください。
みなさまのご来場をお待ちしております。
(みに)
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