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『風よ あらしよ 劇場版』大杉栄・伊藤野枝の墓を訪れる

映画『風よ あらしよ 劇場版』が静岡シネ・ギャラリーにて公開中です。(2024/3/7までの予定)

ストーリー
「女は、家にあっては父に従い、嫁しては夫に従い、夫が死んだあとは子に従う」事が正しく美しいとされた大正時代―。<br /> 男尊女卑の風潮が色濃い世の中に反旗を翻し、喝采した女性たちは社会に異を唱え始めた。<br /> 福岡の片田舎で育った伊藤野枝(吉高由里子)は、貧しい家を支えるための結婚を蹴り上京。平塚らいてう(松下奈緒)の言葉に感銘を受け手紙を送ったところ、青鞜社に入ることに。青鞜社は当初、詩歌が中心の女流文学集団であったが、やがて伊藤野枝が中心になり婦人解放を唱える闘う集団となっていく。野枝の文才を見出した第一の夫、辻潤(稲垣吾郎)との別れ、生涯のパートナーとなる無政府主義の大杉栄(永山瑛太)との出会い、波乱万丈の人生をさらに開花させようとした矢先に関東大震災が起こり、理不尽な暴力が彼女を襲うこととなる――。

映画『風よ あらしよ 劇場版』

2月24日に演出の柳川強さん、大杉栄の甥にあたる大杉豊さんをお招きし、『風よ あらしよ 劇場版』の舞台挨拶が行われましたが、その日の朝に静岡市内の沓谷霊園にある大杉栄のお墓を訪ねてきました。


映画の主役である伊藤野枝は福岡の出身、大杉栄は丸亀の出身であり、どうして静岡市にお墓があるのかというと、一旦福岡で埋葬されたものの、伊藤野枝が地元で忌避されていたことによる棄損が相次ぎ、大杉栄の妹が静岡市に住んでおり、死亡の翌年の1924年になって沓谷霊園に移葬された、とのこと。
伊藤野枝の墓は福岡にもあり、上記のような理由で記銘もない墓碑代わりの大岩を山中に移したそうです。
福岡のお墓には遺骨などは入っておらず、遺骨は大杉栄と共に沓谷霊園のお墓に収められています。
大杉栄と伊藤野枝とたまたま一緒に居たために殺害された大杉栄の甥の橘宗一のお墓もまた、沓谷霊園のお墓の他に愛知県あま市にあり、こちらは名古屋にあったものが出身のあま市に2023年になって移設されたとのこと。

沓谷霊園は当館から東に最短距離で徒歩20分強のところにあります。


霊園の入り口からまっすぐ進んで30mほど行くと溝の左手側に柵で囲ったお墓があり、そこが大杉栄のお墓。

お墓の右手には1976年に建てられた石碑があり、大杉栄の略歴とともに
「関東大震災に遭遇して妻の伊藤野枝・甥橘宗一と共に軍憲の為に虐殺せられた。
 惜しむべし雄志逸材むなしく中道に潰ゆ。」
とあります。

碑の裏側には
「この遺骨を翌年5月25日この地に収む」
とあり、3人の遺骨がここに収められていることが分かります。

墓の左手には大杉栄の兄・伸の墓石もあります。

お墓には新しい花が添えられて、今でも墓参に訪れる人が居ることが窺われました。

大杉栄は無政府主義者であるのと同時に自由恋愛の信奉者で、その思想に心酔し、女性の権利向上を訴えた伊藤野枝もまた同じく現代の感覚からしてもその活動は大変ラディカルなものですが、それを危険思想とみなす公権力の側に立つ者がその殺害に及ぶという恐るべき出来事の犠牲者となった歴史的意義は大変重いといえます。

100年後の今日においても財務省の文書改竄問題などに見られるように、政権の意向に沿うべく公務員が違法行為を行うという事態は繰り返されており、そのもつ意味は未だに大きいといえるでしょう。

『風よ あらしよ 劇場版』は3月7日まで上映中です。
上映時間
2/23(金)~2/29(木)
①10:10~12:20
②14:05~16:15 

3/1(金)~3/7(木)
①10:00~12:10
②12:20~14:30